今回は「不安障害と不安は違いますか?」というご質問をいただきました。
日々の暮らしの中で誰しもが経験する「不安」。一方で、「不安障害」という診断がつく場合には、どのような違いがあるのでしょうか。表面的にはよく似て見えるこれらの状態ですが、実はその性質や生活への影響に大きな違いがあります。
この記事では、「不安」と「不安障害」の違いについてわかりやすく丁寧に解説していきます。
まずは「不安」という感情について考えてみましょう。
不安とは、将来の出来事や未知の状況、自分の力ではどうにもならないことに対して抱く心配や恐れの感情を指します。これは非常に自然な感情であり、人間にとってごく当たり前の反応です。
例えば、試験の前に緊張して不安を感じたり、大切な会議の前に落ち着かない気持ちになったりするのは、多くの人が経験することです。また、人によって不安の感じ方や強さには個人差があります。生まれつき不安を感じやすい性格傾向の方もいれば、逆に比較的楽観的であまり不安を感じにくい人もいます。
このように、「不安」という感情は本来、人間の生存や社会生活に役立つ警告信号のようなものです。しかし、この不安があまりに強くなったり、長期間にわたって続いたりすると、生活に支障をきたすようになり、病的な状態とみなされることがあります。
では、「不安障害」とは具体的にどういった状態を指すのでしょうか。
不安障害とは、過剰で持続的な不安によって、日常生活に大きな影響を及ぼす精神疾患の総称です。単に「不安を感じる」だけではなく、その不安が強すぎるあまり、社会生活や人間関係、仕事や学業など、さまざまな場面に深刻な支障が出ることが特徴です。
不安障害にはいくつかのタイプがあります。代表的なものには以下のような疾患が含まれます:
これらはいずれも、「不安」が中心的な症状であるという点で共通していますが、その強度や影響の範囲において、通常の「不安」とは大きく異なります。

「不安」と「不安障害」は、いずれも「不安」という感情が中心にある点では共通しています。また、症状の一部は重なることもあり、「どちらの状態なのか判断が難しい」というケースもあります。
たとえば、全般性不安障害の人は、一般的な不安と似たような心配ごとを抱えますが、その強さや頻度が桁違いであったり、身体的症状を伴ったりする点が異なります。
また、「あがり症」と呼ばれるような人前での緊張や恥ずかしさが、社会不安障害とどう違うのか、線引きが難しい場面もあります。
では、どのような点で明確な違いが見られるのでしょうか。主に以下の3点が挙げられます。
不安障害では、その不安の強さが非常に激しく、しばしば自分自身でもコントロールが難しいほどになります。日常的な場面でも強烈な混乱や動揺を引き起こすことがあります。
また、不安の感情に加えて、動悸、めまい、吐き気、発汗などの身体的症状(いわゆる自律神経失調症的な症状)を伴うことも少なくありません。
不安障害では、不安の感情だけでなく、疾患特有の症状を併せ持つことがあります。
例えば、パニック障害では突然息苦しくなったり、死の恐怖を感じたりする「パニック発作」が現れます。強迫性障害では、「何度も手を洗わないと気がすまない」「鍵を閉めたか何度も確認する」などの「確認行為」が現れます。
これらの症状は非常に消耗を伴い、本人の生活に強く影響を及ぼします。
不安障害が進行すると、強い不安を避けるためにさまざまな場面を「回避」するようになります。例えば、人前に出るのが怖くて仕事や学校に行けなくなる、外出そのものを避けるようになる、といった状態です。
その結果、生活範囲が狭まり、人間関係が希薄になったり、社会とのつながりを失ってしまうケースも少なくありません。重症化すると、いわゆる「引きこもり」状態に至ることもあります。

不安障害の主な症状は、一般的な「不安」と共通しているため、本人も周囲も「ただの心配性」「気にしすぎ」と見過ごしてしまうことが少なくありません。
しかし、不安障害ではその不安の強さや、それによる生活上の支障が非常に大きくなります。もし、「最近、どうしても不安が収まらない」「生活に影響が出てきている」と感じたら、専門家の診断を受けることを検討してみてください。
不安障害は、決して珍しいものではありません。そして、適切な治療(抗うつ薬や抗不安薬、認知行動療法など)を受けることで、改善が期待できる病気です。
大切なのは、「ひとりで抱え込まないこと」。早期に気づき、早期に対処することで、回復への道が開かれます。
ご質問くださった「不安障害と不安は違いますか?」という疑問について、少しでも理解が深まれば幸いです。もしご自身や身近な方に当てはまるような様子がある場合には、心療内科や精神科への相談もひとつの選択肢として考えてみてください。
心の健康は、誰にとっても大切なテーマです。不安を知り、正しく理解することで、よりよい心のケアにつなげていきましょう。