うつ病の方からよく寄せられるお悩みの一つに「考えすぎてしまって止まらない」というものがあります。この記事では「うつ病と考えすぎの関係」、そして「その対処法」について、わかりやすく丁寧に解説していきます。
結論からお伝えすると「考えすぎがもたらす悪影響をしっかり理解し、その上で別のことに意識を向けること」が、考えすぎから抜け出すための基本的な対策になります。では、具体的にどうすればよいのか一緒に見ていきましょう。
うつ病は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンなどが不足することにより、気分の落ち込みや意欲の低下などが生じる「脳の不調」です。治療では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)といった抗うつ薬が用いられることが多くあります。
このようなうつ病の状態においてよく見られるのが「考えすぎる」傾向です。過去の出来事を繰り返し思い返したり、将来のことを必要以上に不安に感じたりするような“ぐるぐる思考”が続くことがあります。こうした思考は、うつ病の症状として自然に生じることもありますし、もともとの性格傾向や長年の思考パターン(癖)が影響していることもあります。
この「考えすぎ」は、ただの習慣ではなく、うつ病の症状の一部として現れることも多いため、無理に「考えるのをやめよう」としてもうまくいかないことがよくあります。
まず、「考えすぎること」にメリットはあるのでしょうか?
残念ながらうつ病の時期における考えすぎには、あまり大きなメリットはありません。もちろん、建設的な思考であれば何かを解決に導くこともありますが、うつ病の状態では思考が偏りやすく、問題を何度も反芻してしまう「反芻思考(はんすうしこう)」になってしまいがちです。
この反芻思考には以下のようなデメリットがあります。
・不安や落ち込みが深まる
・気分がますます沈み、行動する気力が奪われる
・脳の疲労が増して休養の効果が薄れる
・悪循環が続き、症状が慢性化しやすくなる
このように、考えすぎることは基本的にうつ病の回復を妨げてしまうため、意識的に対策をとることがとても重要です。
考えすぎの背景には、大きく分けて次の2つの原因があります。

うつ病によって脳の機能がうまく働かなくなり、物事の捉え方(認知)に偏りが出ることがあります。たとえば、過去の出来事を必要以上に後悔したり、自分を責めてしまったり、「未来に悪いことが起きるかもしれない」と先回りして不安を感じてしまったりするのです。
このような思考は、病気の一部であると理解することが大切です。うつ病の治療が進むことで、自然と考えすぎる癖が和らいでくるケースも多くあります。
もう一つの原因として、もともとの「考えすぎる癖」があります。これは性格傾向や過去の経験、不安の蓄積などが影響していることがあり、うつ病がある程度改善しても、思考の癖として残ってしまう場合があります。
この場合は、うつ病そのものの治療に加えて、思考習慣へのアプローチが必要になります。つまり「別の癖をつける」ことで、考えすぎる傾向を少しずつ変えていく取り組みが大切になります。
では、具体的にどうすれば考えすぎを止めることができるのでしょうか? 最もシンプルかつ効果的な方法は「別のことをする」というアクションです。
これは単純なようでいて、実はとても重要なポイントです。考えすぎている時は、頭の中で同じ思考がぐるぐる回り続け、外部からの刺激がほとんど入ってこない状態になります。つまり、自分の内側だけで完結してしまい、視野がどんどん狭くなってしまうのです。
この悪循環を断ち切るためには「外の世界に意識を向けること」が必要です。何か見えるもの、聞こえること、触れるものに意識を移すことで、脳は別の情報を処理するようになり、考えすぎの回路から一時的に抜け出すことができます。
人間は基本的に一度に複数のことに集中することが苦手です。そのため、別のことに頭を使えば、自ずと考えすぎることに集中しづらくなるのです。
考えすぎから抜け出すために「別のことをする」と言っても、何でも良いわけではありません。次の3つのポイントを意識することが大切です。
調子が悪い時でも無理なくできる活動を選びましょう。気力を消耗するようなことは避けてください。
ぼんやりできることよりも、ある程度集中を必要とする活動のほうが効果的です。集中することで、
頭の中のぐるぐる思考から離れる助けになります。
その人にとって「楽しい」「やりやすい」「興味がある」と思える活動であることが重要です。無理に
「良さそう」と言われたことをやっても、なかなか続きません。
それでは実際にどのような活動が考えすぎを和らげる助けになるのか、いくつかご紹介します。

・軽めの運動(ストレッチ、散歩など)
体を動かすことで血流がよくなり、自然と気分も前向きになることがあります。
・読書やゲーム
物語の世界に没頭したり、ゲームに集中したりすることで、思考の流れを変えることができます。
・人との会話
信頼できる人と話すことで、新しい視点を得たり、自分の考えが整理されたりすることがあります。
これらはあくまで一例です。大切なのは「あなたに合っているかどうか」です。少しずつ試して、自分なりの「別のこと」を見つけてみてください。
「うつ病で考えすぎてしまうのをやめたい」という悩みは、とても自然なことです。うつ病の症状として考えすぎてしまうこともあれば、長年の癖として残っている場合もあります。
まずは「考えすぎることにはデメリットが多い」ことを理解し、次に「別のことをする」というシンプルな行動をとってみることが、回復の一歩となります。最初はうまくいかなくても大丈夫です。一度きりではなく、繰り返し実践していくことで「考えすぎない習慣」を少しずつ育てていくことができます。
ご自身に合った方法を見つけながら、焦らず、ゆっくりと取り組んでみてください。回復には時間がかかることもありますが、確実に一歩ずつ前に進むことができます。