パニック障害は、突然襲ってくる心身の強い不調「パニック発作」が繰り返し起こることを特徴とする不安障害の一つです。発作のインパクトは非常に強烈で、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。一方で、近年では治療法が確立されており、適切な治療を受ければ改善が見込まれる疾患でもあります。
しかし、パニック障害は対処を誤ると慢性化し、長期にわたり生活の質(QOL)に影響を及ぼすリスクもあります。そのため、早期発見・早期治療がとても重要です。
この記事では、パニック障害の主な症状を3つに分けて、詳しく解説していきます。

パニック障害の中心となる症状は、「パニック発作」と呼ばれる突然の心身の異常です。この発作は、自律神経のうち緊張をつかさどる交感神経が過剰に活性化することにより発生します。パニック発作は、身体的・精神的な多様な症状を引き起こします。
| • 激しい動悸や心拍の乱れ | • 手足のしびれや震え |
| • 息苦しさ、呼吸困難感 | • 発汗、寒気、熱感 |
| • 胸部の痛みや圧迫感 | • 吐き気や腹部不快感 |
| • めまい、ふらつき、耳鳴り | • 現実感喪失感(自分が自分でないような感覚) |
精神面では、「このまま死ぬのではないか」「発狂してしまうのではないか」という強烈な恐怖心が伴うことが一般的です。
パニック発作は、特に閉鎖空間や逃げ場のない状況で起きやすいと言われています。たとえば、満員電車、エレベーター、飛行機、歯科治療中、MRI検査などが典型的なシチュエーションです。しかし、必ずしも特定の状況に限らず、夜間自宅でリラックスしている最中に突然発症することも少なくありません。
ポイントは、発作が急に、繰り返し起こることです。たった一度の発作であれば、過度なストレス反応や一時的な適応障害の症状とも考えられますが、パニック障害では背景に脳内の神経系の不調があり、再発を繰り返す傾向が強くなります。

パニック発作は非常に強烈な体験であり、その恐怖は発作が終わった後も心に深く刻み込まれます。そして、「また同じような発作が起きたらどうしよう」という不安に常にとらわれるようになります。この状態を「予期不安」と呼びます。
| • 些細な体調変化に過剰反応してしまう | • 外出や公共交通機関の利用を避けがちになる |
| • 発作が起きるのではないかと常に緊張している | • 寝つきが悪くなり、睡眠障害が出ることもある |
この予期不安が強まると、実際に発作が起きていなくても常に身体が緊張状態になり、それ自体が新たなパニック発作を引き起こすトリガーとなります。結果として、「発作が怖い→常に不安→発作が起きる」という悪循環に陥り、症状が慢性化していきます。
予期不安は、パニック障害を難治化させる大きな要因の一つです。単なる発作の問題にとどまらず、患者さんの日常生活全般に深刻な影響を及ぼします。

パニック発作や予期不安による苦しさを避けるため、患者さんは無意識のうちに「発作が起きそうな場所や状況」を避けるようになります。これが「回避行動」です。
| • エレベーターを使わず、階段のみ利用する | • 一人で外出することを避ける |
| • 混雑するスーパーやイベントに行かない | • 長距離移動や旅行を断念する |
| • 電車やバスを使わず、徒歩やタクシーに固執する | |
回避行動には一時的に発作を防ぐ効果があるかもしれませんが、問題は根本的な解決にはならないことです。むしろ、避ければ避けるほど不安は強まり、次第に生活範囲が狭まっていくという悪循環に陥りやすくなります。
さらに、回避対象が拡大していくと、家に引きこもる、外出自体が困難になるなど、社会生活に著しい支障をきたすこともあります。このため、早い段階で回避行動を最小限にとどめ、治療と並行して克服していくことが大切です。
パニック障害は、かつては「心が弱いせいだ」と誤解されがちでした。しかし現在では、脳の神経伝達物質の働きに関連するれっきとした疾患とされています。適切な治療によって、多くの患者さんが症状を改善し、社会復帰を果たしています。
• 薬物療法:主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬、必要に応じて抗不安薬を使用します。
• 認知行動療法(CBT):パニック発作や予期不安に対する考え方・行動パターンを見直す心理療法です。
• 生活改善:規則正しい生活リズム、適度な運動、ストレス対策なども回復を助けます。
また、家族や周囲のサポートも極めて重要です。患者さん本人が孤立せず、安心して治療に臨める環境を整えることが、回復への近道となります。
• パニック障害は「パニック発作の反復」「予期不安」「回避行動」の3つが主な症状です。
• 放置すると慢性化し、生活範囲が狭まるリスクがありますが、早期治療で改善が十分可能です。
• 「自分だけだ」と思い込まず、早めに専門機関へ相談しましょう。
パニック障害は、誰にでも起こりうる身近な病気です。
正しい知識を持って、焦らずじっくりと回復を目指していきましょう。