適応障害の主な治療法3つ

はじめに

近年、精神科・心療内科の外来において「適応障害」と診断されるケースが増えていると言われています。適応障害は、社会生活の中で受ける強いストレスに心がうまく対処できなくなり、気分の落ち込みや不安感、集中力の低下など、日常生活に支障をきたす状態になる疾患です。その症状はうつ病と似ていることから混同されることもありますが、適応障害は主に「ストレスへの反応」であり、脳機能の変調が見られるうつ病とは発症の仕組みが異なります。

はじめに

適応障害の特徴のひとつは、ストレスの原因となる状況が軽減または解消されれば、比較的短期間で症状が改善することが多い点です。しかし、同じようなストレス状況に再び直面すると、再発することも少なくありません。つまり、「一時的に回復しても、また似た状況に直面するとぶり返す可能性がある」という点で注意が必要です。

この記事では、適応障害における治療の基本的な方針について、「環境調整」「ストレスマネジメント」「薬物療法」の3つの柱に分けて、丁寧にご紹介していきます。

① 環境調整 〜まずはストレスの原因に目を向ける〜

適応障害の治療において最も基本的かつ効果的な方法は、「ストレスの原因から距離を取ること」です。たとえば、職場での人間関係や過重労働など、日常生活の中で強いストレスがかかっている場合、そのストレス源から一旦離れることが重要になります。

もし、気分の落ち込みが強く、仕事に行けない、集中力が続かないといった明らかな不調が出ている場合には、まずは医師に相談し、必要に応じて「休職」という形で職場から離れることが応急的な対応となります。こうした措置により、ストレスから解放されることで症状が比較的早く改善することが期待できます。

ただし、注意すべき点として、同じ職場・同じ環境にそのまま復職すると、再発のリスクが非常に高いということが挙げられます。再発を防ぐためには、復職のタイミングで職場内での異動や業務内容の調整を相談することが大切です。もしそれが難しい場合には、思い切って転職を視野に入れることも一つの選択肢です。

① 環境調整 〜まずはストレスの原因に目を向ける〜

外的な環境要因によるストレスが主な原因である場合、この「環境調整」が適応障害の回復と再発予防に大きな効果をもたらします。しかし中には、環境を変えても再発を繰り返すケースもあり、その場合は「自分のストレスの感じやすさ」や「思考のクセ」など、内的な要因にアプローチする必要が出てきます。それが次のストレスマネジメントの項目です。

② ストレスマネジメント 〜心の内側に働きかける〜

適応障害の治療における2つ目の柱は、「ストレスマネジメント」、つまりストレスとの向き合い方を見直し、より健やかに生きられる方法を身につけていくことです。

ストレスを「心のコップ」に例えると、そのコップに水(ストレス)が溜まりすぎてあふれてしまった状態が、適応障害の発症です。したがって、治療においては以下の3つのステップがポイントになります。

  1. ストレスを溜めない
  2. ストレスを発散する
  3. ストレスに対する耐性をつける

まず「ストレスを溜めない」ためには、日常の中で自分の思考や感情に気づき、早めに対処することが重要です。特に、真面目で責任感が強く、つい自分のことを後回しにしがちな人ほど、我慢を積み重ねてしまいます。そうした性格傾向に対しては、「アサーション」と呼ばれるコミュニケーションスキル(自分の気持ちを適切に伝える技術)を学ぶことが役立ちます。

次に「ストレスを発散する」方法については、無理なく継続できる趣味やリフレッシュ方法を日常生活の中に取り入れることがポイントです。音楽を聴く、散歩をする、誰かと話すなど、ささいなことでも構いません。どの方法が自分に合っているのかは人それぞれなので、いくつか試してみる中で、自分なりの「ストレス解消法」を見つけていくことが大切です。

② ストレスマネジメント 〜心の内側に働きかける〜

最後に「ストレス耐性をつける」ためには、体と心の土台を整えることが求められます。具体的には、生活リズムを整える、適度な運動を取り入れる、睡眠をしっかり取るなどの基本的な生活習慣が、心の安定にも大きく影響します。

なお、こうしたストレスマネジメントの取り組みを行ってもなお、再発を繰り返す場合には、発達障害やパーソナリティの特性が背景にあることもあるため、医師との相談のもと、さらに専門的なアプローチが必要になることもあります。

③ 薬物療法 〜必要に応じて補助的に〜

③ 薬物療法 〜必要に応じて補助的に〜

3つ目の治療法は「薬物療法」です。うつ病においては薬物療法が治療の中心になることが多いですが、適応障害ではあくまで補助的な役割とされます。とはいえ、つらい症状を少しでも和らげるために、一時的に薬を使うことは珍しくありません。

たとえば、強い不安があり、考えがぐるぐると止まらなくなってしまうような場合には、抗不安薬が処方されることがあります。また、夜に眠れない日が続くことで日中の生活にも影響が出てしまう場合には、睡眠導入剤睡眠改善薬を使用することもあります。

さらに、症状がうつ病に近い、あるいは実際にうつ状態を伴っている場合には、抗うつ薬が処方されることもあります。薬の使用については、医師とよく相談しながら、必要最低限の期間・量で行うことが一般的です。

薬物療法はあくまでも「生活を立て直すためのサポート」であり、根本的な解決には、前述のような環境調整やストレスマネジメントといった生活環境や考え方へのアプローチが欠かせません。

おわりに

今回は、「適応障害の主な治療法3つ」についてご紹介しました。

  • ① 環境調整:まずはストレスの根本原因を遠ざける
  • ② ストレスマネジメント:内面的なストレスの感じ方に向き合い、自分を守る技術を身につける
  • ③ 薬物療法:必要に応じて症状を和らげるために使用する

適応障害は「甘え」ではありません。適応障害によって、うつ病と同様に仕事に行けなくなったり、生活がままならなくなってしまう人も少なくないのです。早期の対処によって改善が見込まれるケースが多いため、自分自身や大切な人が「つらいな」「苦しいな」と感じている場合には、決して一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することをおすすめします。

おわりに

心の不調は誰にでも起こり得るものです。正しい知識と理解を持ち、無理をせず、少しずつ前を向けるサポートを、この記事が担えれば幸いです。