「強迫性障害(OCD)」という名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。この障害は、単なる「几帳面」や「潔癖症」といったイメージでは語りきれない、非常に深刻で生活に大きな支障をきたす精神疾患の一つです。中でも「強迫観念」と「確認行為」と呼ばれる症状が特徴的で、他の不安障害とは一線を画す点がいくつもあります。
今回は「強迫性障害とは何か?」をテーマに、その目立つ特徴を丁寧に解説していきます。

強迫性障害は、広くは「不安障害」に分類される精神疾患の一つです。不安障害にはさまざまな種類がありますが、強迫性障害には他の不安障害には見られない独自の特徴があります。
代表的な不安障害には、以下のようなものがあります。
そしてこれらに加えて、今回取り上げるのが「強迫性障害」です。

強迫性障害は単なる「不安」が中心ではありません。「頭に浮かんでしまう嫌な考え」や「それに対処しようとする行動」が症状の中心であり、思考と行動が深く結びついている点が他の不安障害とは異なります。
以下に、強迫性障害に特有の3つの視点をご紹介します。
強迫性障害では、まず「強迫観念」と呼ばれる思考が現れます。これは、自分の意思に反して何度も頭の中に浮かんでくる嫌なイメージや考えで、非常に強い不快感を伴います。
それに対処するために、「確認行為」と呼ばれる行動が行われます。例えば、「手が汚れているのでは」と思ったら何度も手を洗ったり、「鍵を閉め忘れたかもしれない」と思って玄関に戻って何度も確認したりするのです。
確認行為はもともと、不安を和らげるための「自己治療」的な行為として始まることが多いです。しかし、それが徐々にエスカレートしていき、「確認しないと落ち着かない」「確認しないと1日を始められない」といった状態にまで進行してしまうことがあります。
このように、本人の意思ではやめられなくなってしまう点で、強迫性障害は一種の依存的な側面を持つとも言われています。
強迫性障害の治療には、抗うつ薬などの薬物療法が用いられることがありますが、他の不安障害と比べて薬の効き目が出にくいという特徴があります。そのため、より高い用量が必要になったり、複数の薬を併用することもあります。
ここからは、強迫性障害の中でも特に目立つ5つの特徴について、具体的に解説していきます。

強迫観念とは、自分の意思に反して頭に繰り返し浮かんでくる不快な考えのことを指します。これらは、馬鹿げていると頭では分かっていても、どうしても無視することができず、強い不安や不快感を引き起こします。
代表的な強迫観念には、以下のようなものがあります。
これらの考えは「侵入思考」とも呼ばれ、自分の意志とは無関係に頭に入り込んでくる点が特徴的です。
強迫観念による不安や不快感を和らげるために、本人は確認行為を繰り返します。
代表的な確認行為には以下のようなものがあります。
これらの行為は初めのうちは不安を和らげる効果がありますが、やがて回数や時間が増え、日常生活に支障をきたすようになります。
強迫観念と確認行為がセットになって繰り返されると、生活の中で自由に行動することが難しくなります。
たとえば、外出前に鍵の確認を1時間以上かけて行ってしまう、トイレや手洗いで日常が終わってしまう、といった事態が起こるのです。
強迫性障害に見える症状が、実は他の精神疾患である場合もあります。たとえば、
正確な診断と治療のためには、医師による慎重な評価が欠かせません。
確認行為をすることで一時的に不安は和らぎますが、しばらくすると再び強迫観念が浮かび上がってきます。そして、その都度確認行為に走ってしまうという「悪循環」に陥るのです。
この悪循環を断ち切るためには、薬物療法だけでなく、「認知行動療法」などの心理療法も効果的とされています。
強迫性障害は、本人が「おかしい」と思っていてもやめられない思考や行動に日常生活を支配されてしまう、非常につらい精神疾患です。その根底には、強い不安と、それに対する「自己治療」のような行動の繰り返しがあります。
私たちが強迫性障害について正しく理解することは、周囲の人の苦しみを理解し、適切なサポートをする第一歩になります。誰かの確認行為が「ちょっと変だな」と思っても、それには深い理由があるかもしれません。否定や指摘ではなく、まずは「知ること」「受け入れること」から始めていきましょう。