発達障害は、生まれつきの脳機能の特性により、社会生活において困難を感じることのある状態です。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などが代表的で、幼少期に見つかることもあれば、大人になってから気づく場合もあります。発達障害は、うつ病などの精神疾患のように「治癒」や「寛解」が目指せるものではありませんが、特性の理解と受け入れ、そして改善に向けた努力によって、より生きやすくすることは可能です。
本記事では、発達障害の治療における重要な4つの目標について解説します。

発達障害のある方にとって、自分自身の特性を理解し、受け入れることは、治療の第一歩です。自分が周囲と違うことを認識し、その違いを否定ではなく「特性」として捉えることが、心の安定や改善へのモチベーションにつながります。
一方で、特性は練習や工夫によって少しずつ改善していく余地もあります。たとえばASDの方であれば、雰囲気の読み取りが苦手という課題に対して、状況を論理的に推測するトレーニングや、他者の言動をまねる「モデリング」の活用が有効です。ADHDの方であれば、メモを活用して忘れ物を防ぐ、衝動的な行動にブレーキをかける練習、アンガーマネジメントなどの方法があります。
このような改善は一朝一夕でできるものではなく、地道な反復練習が必要ですが、成功体験を積み重ねることで自己肯定感を高める効果もあります。
発達障害そのものよりも、環境とのミスマッチや社会的な困難から生じる「二次障害」が生活の質に大きく影響を与えることがあります。具体的には、うつ病や対人不安、攻撃的言動、衝動的な行動などが挙げられます。これらは発達障害の特性が原因ではなく、周囲からの理解不足や過剰なストレス、自己否定などが重なって発生することが多いのです。
二次障害は、発達障害と異なり、治療や予防の余地が大きくあります。たとえば、ストレスを上手に受け流したり発散するためのストレスマネジメント、環境調整(職場や学校の選択など)によって発生を防ぐことができます。また、すでに生じた二次障害には、抗うつ薬などの薬物療法と並行して、考え方や行動へのアプローチを組み合わせた治療が行われます。
発達障害のある方にとって、自分の存在や努力を認める「自己肯定」と、他者に対して役立つ行動を意識する「他者貢献」は、心の安定と社会適応のために欠かせません。
発達障害があると、過去の失敗や他者からの否定によって、自己否定の感情が習慣化してしまうことがあります。すると、自分自身でストレスを生み出してしまい、さらに二次障害を引き起こす原因となります。そのため、成功体験を積み重ね、自分の価値を感じられる機会を意識的に設けることが大切です。
また、集団の中で信頼関係を築いていくためには、「自分の利益」より「周囲への貢献」を意識することが重要です。発達障害の特性を生かして、誰かの役に立つことができれば、その特性が価値あるものへと変わり、社会の中での居場所を確立しやすくなります。

発達障害のある方の中には、個人の努力だけでは対応しきれない困難に直面することも少なくありません。そうしたときには、無理をせず福祉制度を活用することも大切な選択肢です。
たとえば、「精神障害者福祉手帳」は、発達障害を含む精神疾患のある方が制度的な支援を受けるために使われます。手帳を取得するには、半年以上の通院と医師の診断書が必要ですが、障害者雇用や福祉サービスの利用が可能になります。
また、「就労移行支援」は、就労に向けて準備を進めるための通所型支援施設で、最大2年間の中で生活リズムを整えたり、職業訓練を受けたりすることができます。就職後も「就労定着支援」という制度で、安定した職場生活の維持が支援されます。
さらに、「障害者雇用制度」では、発達障害のある方も法的に保護され、配慮を受けながら働くことができます。これらの制度を上手に活用することで、無理のない形で社会参加が実現できるのです。
発達障害は、残念ながら薬などで「治す」ことはできません。しかし、次の4つの目標を意識することで、生きやすさや充実感を得ることは可能です。
これらの柱を意識しながら、自分自身の特性と向き合い、できることを一歩ずつ積み重ねていくことが大切です。自分に合った環境を見つけ、支援を活用し、無理のない範囲で社会と関わっていくことが、発達障害と共に生きていくための鍵となるでしょう。