私たちの周囲には、コミュニケーションが苦手だったり、特定の興味に強くこだわりがあったり、関心の範囲が限られていたりする人がいます。こうした特徴は「自分の性格」や「単なる個性」として扱われることもありますが、実は発達の特性のひとつとして理解されることもあります。
その一つがASD(自閉スペクトラム症)と呼ばれる発達障害です。ASDは、かつては「アスペルガー症候群」や「自閉症」などと呼ばれていたものを含み、それらの特性をスペクトラム(連続体)として捉えた診断名です。
ASDのある人たちは、周囲の人々との関わり方や生活の中での困難によって、自分を責めてしまう悪循環に陥ることがあります。今回は、そうした悪循環から抜け出すための「自分を責めない対処法」について、3つのポイントを中心に解説します。また、他者に助けを求める大切さにも触れながら、「自分らしく生きやすくなるためのヒント」をお伝えします。

ASDにはさまざまな特徴がありますが、主に以下のような傾向が見られます。
こうした特性は「柔軟性がない」「わがまま」「空気が読めない」などと誤解されがちですが、それはあくまで他者の視点から見た感想にすぎません。本来、それぞれの特性には良い面も悪い面も含まれており、その人の強みとして活かすことも可能です。
例えば、ASDの人には嘘がつけない正直さや高い集中力、強い正義感を持っている人も多く、特定分野で突出した才能を発揮することもあります。数学や音楽、美術の分野で力を発揮する例も少なくありません。

ASDの特性は、生まれつきの脳の働き方の違いによるものであり、個人の努力不足や性格の問題ではありません。しかし、社会に出てからは、「人付き合い」や「臨機応変な対応」など、ASDの人にとって難しいことが求められる場面が増えるため、生きづらさを感じやすくなります。
多くの人が、こうした状況の中で「自分はダメだ」「うまくやれない自分が悪い」と自分を責めてしまい、ストレスや自己否定感、さらにはうつ症状など、二次的な問題を引き起こしてしまうことがあります。
しかし、発達障害の支援の目的は、その特性を「治す」ことではありません。自分の特性を理解し、それに合った対処法を見つけることこそが、より良い生活を送るための第一歩です。

ここでは、自分を責める悪循環から抜け出すための3つのポイントをご紹介します。
まず大切なのは、自分の特性を正確に知ることです。例えば、「曖昧な指示が苦手」「人と長時間話すと疲れる」「騒がしい環境では集中できない」といったことが、自分の特性として理解できれば、その場面で無理をする必要がなくなります。
「なぜ自分はうまくできないのか?」ではなく、「どうすれば自分にとって無理のない形で取り組めるか?」という視点で考えることが大切です。
ASDの人は、物事を白黒で判断しやすく、「一度失敗すると自分を全否定してしまう」という傾向があります。ですが、失敗やトラブルは学びの機会でもあります。
「自分はこういう場面が苦手なんだ」「こういうときは助けを求めたほうがいい」といったように、ネガティブな出来事をポジティブな学びに変える思考を身につけることが、自己肯定感を保つ上でとても重要です。
最後に、自分の特性に合った対処法を試しながら見つけていくことも重要です。例えば、
など、小さな工夫を重ねていくことで、生活がぐっと楽になります。最初から完璧な方法を見つけようとせず、試行錯誤を続ける姿勢が大切です。

困ったときに人に頼ることは、決して弱さではありません。むしろ、自分の特性や限界を理解しているからこそ、助けを求めることができるのです。
自分の苦手なことは、得意な人にお願いし、自分の得意なことで誰かをサポートする。そうした「ギブアンドテイク」の関係性が築ければ、無理のない自然な協力関係が生まれます。
SOSを発信することは勇気のいることですが、それによって新しい視点や支援に出会える可能性が広がります。感謝の気持ちを忘れず、相手との信頼関係を大切にしながら、人と助け合って生きる姿勢を育んでいきましょう。
ASDの特性は、社会の中で生きづらさを感じる要因になりやすいものですが、その一方で、強みや個性として活かせる可能性も十分にあります。
自分を責めるのではなく、「自分はどういう特性を持っているのか」「どんなときに困りやすいのか」「どんな環境なら力を発揮しやすいのか」を丁寧に見つめ、自分なりのやり方で乗り越えていくことが、豊かな人生への一歩です。
「困ったときは誰かに頼ってもいい」「自分のやり方で進んでいい」──そんなふうに、安心して生きられる社会のために、まずは自分を受け入れることから始めてみませんか?