統合失調症は、幻覚や妄想といった陽性症状ばかりが注目されがちですが、実際の日常生活では「陰性症状」や「認知機能障害」の影響がより深刻になることも少なくありません。これらの症状は外からは見えにくいため、周囲の理解を得にくく、本人が抱える困難が見過ごされてしまうこともあります。
この記事では、統合失調症の方が日常生活の中で特につまずきやすい動作を5つ取り上げ、具体的にどのような困難があるのか、なぜそうなるのか、そしてその対応についても考えていきます。

統合失調症の陰性症状には「感情表現の乏しさ」「話す量の減少」「社会的な意欲の低下」などがあり、これらはすべて対人交流に大きな影響を及ぼします。
例えば、会話中に表情が乏しくなり、相手に「冷たく感じる」「話しかけづらい」と思わせてしまうことがあります。また、話の内容が乏しかったり、相づちが少なかったりすることで、会話自体が続きにくくなることも。こうしたやりとりの難しさから、徐々に人との関わりを避けるようになってしまうケースも少なくありません。
さらに、認知機能障害により、相手の話の意図を読み取る力や、状況に応じた言葉選びが難しくなることもあります。これらは「空気が読めない」と誤解されることがあり、本人の孤立感を深める一因となります。
外出や通院も、統合失調症の陰性症状や認知機能障害の影響を受けやすい動作です。何かしようという意欲そのものが湧かない「意欲の低下」は、玄関を出ることすら難しくすることがあります。
また、認知機能のうち「計画性」や「注意力」が低下していると、外出の準備がうまくできない、時間の感覚が曖昧になって遅刻してしまう、という問題も起こります。公共交通機関の利用も、時刻表の確認や乗り換えの判断などがうまくできず、不安や混乱を引き起こす要因になります。
通院に関しても、継続的に病院へ足を運ぶのが困難になり、治療の中断や服薬の中断につながってしまうケースがあります。

身だしなみを整えるといった基本的なセルフケアも、陰性症状により極端に疎かになってしまうことがあります。「お風呂に入る気力が湧かない」「洗顔すら面倒に感じる」といった状態が続くと、清潔さが保てなくなり、周囲との関係にも影響を及ぼします。
これは、だらしなさや怠けではなく、病気による意欲や感情の働きの低下が原因です。また、認知機能の面では「段取りを考える力」が弱くなっていることが、入浴という一連の動作をこなすことを難しくしている要因でもあります。
入浴には、服を脱ぐ、湯を張る、体を洗う、湯船に浸かる、上がって体を拭く、といった多くの手順があります。これを一つひとつこなす集中力が続かず、途中でやめてしまうこともあるのです。
食事に関する動作も、統合失調症の陰性症状と認知機能障害の影響を大きく受ける分野です。まず、食欲そのものが低下することがあり、「食べたい」と思う気持ちが湧かず、食事の準備に手がつかなくなります。
さらに、自炊には「食材を買う」「メニューを考える」「調理する」「後片付けをする」といった複数のステップがあり、これらを順序立てて実行するには、一定の集中力や段取り力が求められます。認知機能障害によりこれが困難になると、結果として「菓子パンだけ」「カップ麺だけ」といった偏った食生活に陥り、健康状態の悪化を招くこともあります。
また、食事の時間や量の調整も難しくなるため、過食や拒食など、摂食に関するトラブルを引き起こすこともあります。
部屋の掃除や整理整頓は、最も後回しになりやすい日常生活動作のひとつです。意欲の低下により「片付けよう」という気力が起きず、さらに認知機能の低下により「どこから片付ければいいのか」「何をどこにしまえばいいのか」がわからず、混乱してしまいます。
その結果、ゴミが溜まったり、物が散乱したままになったりして、生活環境が悪化します。これが自己評価の低下や自責感を生み、さらに無気力を強めるという悪循環に陥ることも少なくありません。
部屋の乱れは、外から見てもわかるため、家族や支援者が異変に気づくきっかけになることもあります。逆にいえば、こうした環境の変化に早く気づいて支援を行うことが、症状の進行を防ぐうえで非常に大切です。
統合失調症における日常生活の困難さは、決して「本人の怠け」や「甘え」ではありません。陰性症状や認知機能障害といった病気の症状が深く関わっているのです。これらの症状は、薬による改善が難しいこともあり、周囲の理解や支援がとても重要になります。
支援する側としては、「できないこと」に注目するよりも、「どうすればできるようになるか」「どこをサポートすればよいか」という視点が求められます。たとえば、タスクを細かく分けて一緒に取り組む、決まった時間に声かけをする、成功体験を積み重ねるなど、小さな工夫の積み重ねが生活の質を高める大きな力になります。
統合失調症とともに生きる人が、少しでも自分らしく生活できるようにするために。私たちにできることを、改めて考えていきたいですね。