家族がうつ病になったとき、どう接するべきか? 〜寄り添いながら適切な距離を保つために〜

うつ病は、決して特別な病気ではなく、誰にでも発症する可能性がある身近な疾患です。

家族の誰かがうつ病を患った場合、周囲の家族はどのように接すればよいのでしょうか。

どんな言葉をかけ、どのように支えるべきか、時には「そっとしておくべきか?」と

迷うこともあるでしょう。

本記事では、うつ病患者と家族の関わり方を探り

適切な距離感を保ちながら寄り添う方法について具体的に考えます。

第1章:「外」と「内」で異なる二面性に戸惑う家族たち

うつ病患者を抱える家族からよく聞かれる声の一つに

「職場では頼りにされているのに、家に帰ると急に感情的になったり、無口になったりする」

というものがあります。

この現象には、うつ病の患者に見られる「外」と「内」の異なる顔が関係しています。

うつ病患者は、職場など外部の場面では社会的な期待に応えようとするあまり

無理を重ねて過ごすことが多いです。

そのため、家に帰ったときには、そのストレスや抑え込んでいた感情が爆発し

無口になったり怒りっぽくなったりすることがしばしばあります。

家庭内での感情のはけ口が家族に向かうことで、家族は精神的に疲弊し

場合によっては無力感やストレスを感じることになります。

こうした患者の二面性に戸惑うのは、家族として当然の反応です。

理解してあげたいと思う一方で、何をしてあげるべきか

どこまで介入すべきかがわからないことも多いです。

第1章:「外」と「内」で異なる二面性に戸惑う家族たち

第2章:感情のすれ違いと悪循環を防ぐために

家族がうつ病患者に接する際、「本人のために何とかしたい」という思いから

つい励ましやアドバイスをしてしまうことがあります。

しかし、患者自身は「そっとしておいてほしい」「一人で休みたい」と思っている場合も多く

家族の善意が逆効果になってしまうこともあります。

このような感情のすれ違いは、家族関係に悪影響を及ぼし

さらに患者の症状を悪化させる可能性があるのです。

精神科医療の現場では、家族が感情的に過剰に反応することを

「高EE(High Expressed Emotion)」と呼び

これが患者の回復を妨げる要因となることが知られています。

高EEが続くと、家族と患者の両方が精神的に追い詰められ、共倒れになる恐れもあります。

このような場合、患者と家族が一度冷静に距離を取ることが必要です。

たとえば、病院での診察やカウンセリングを通じて

患者本人だけでなく家族の心理的な負担も軽減できることがあります。

また、場合によっては、患者が入院治療を受けることで物理的な距離をおくことができ

家族が冷静に向き合う時間を持つことが可能です。

第3章:家族も「孤立しない」ための取り組み

うつ病を患う家族が一人で抱え込むことは非常に辛いことです。

家族も孤立しないためには、正しい知識と支え合える仲間を持つことが大切です。

例えば、福岡県大牟田市の不知火病院では

うつ病治療専門の「海の病棟」内で、治療が進んだ患者とその家族を対象にした

家族面談を行っています。

ここでは、患者の病状や治療方針についての説明がなされるだけでなく

家族がどのように接すればよいかに関する具体的なアドバイスも行われます。

さらに、不知火病院では月に一度、入院患者の家族を対象とした「家族の会」も

開催されています。

この会には、家族同士の意見交換や医療スタッフとの質疑応答が行われ

家族は他の同じ悩みを持つ人々と出会い、共感し合うことができます。

このような支援活動によって、家族自身が孤立せず

精神的なサポートを得られることが大きな助けとなります。

第4章:うつ病をきっかけに「家族関係」を見直す

うつ病は、患者本人だけでなく家族全体に影響を与える病気です。

しかし、同時に、家族関係を見直す良い機会にもなり得ます。

実際に、「息子がうつ病で入院したことで、彼がどれほどのストレスを

抱えていたのかに初めて気づいた」「これまで話すことのなかったことを改めて話す機会になった」

という家族も少なくありません。

一方で、うつ病が家族間の問題を表面化させ、関係が悪化してしまうこともあります。

このような場合、患者本人の治療だけでなく、家族全体で関係性を見直す努力が求められます。

家族間の問題を一方的に責めることはできませんが、みんなで協力し

より良い関係を築こうとする姿勢が患者の回復を助けることになります。

最後に:寄り添い、そして適度な距離を保つ

「がんばれ」という言葉を使うべきかどうか、家族からよく寄せられる質問です。

確かに、病状が重い時期には、「がんばれ」という言葉がプレッシャーとなり

患者を追い詰めてしまうことがあります。

しかし、回復期においては、「がんばって」という励ましが大きな支えとなることもあります。

このように、言葉かけの「タイミング」と「患者の状態」を見極めることが重要です。

家族だからこそ気づく小さな変化があり、家族だからこそできる支えがあります。

また、家族の「健やかさ」もまた、患者に伝染するものです。

家族自身が健康で、心に余裕を持っていることが、患者の回復にとっても大きな力となるのです。

基本的には、患者に寄り添いながらも適度な距離を保って見守ることが大切です。

そして、うつ病という出来事を、家族の関係を見つめ直すきっかけとして

捉えてみることをお勧めします。

最後に:寄り添い、そして適度な距離を保つ