「どうせやっても無駄だ」「きっと失敗する」「最初からやらない方がまし」。
そんなふうに思ってしまうことはありませんか?
このような気持ちは「学習性無力感」と呼ばれる心理状態が背景にある可能性があります。学習性無力感とは、過去の経験によって「何をしても状況は変えられない」と学んでしまったことにより、やる気や意欲が著しく低下した状態です。本記事では、学習性無力感がどのように生じるのか、またそこから抜け出すための具体的な対策について、丁寧に解説していきます。
■ 学習性無力感とは?
「学習性無力感(Learned helplessness)」は、アメリカの心理学者セリグマンによって提唱された概念です。もともとは動物実験から発見されたもので、「自分の行動ではどうにもならない」という経験を繰り返すと、その後に状況が変わっても、挑戦したり逃げたりする行動をとらなくなる──という心理的な状態です。
人間においても同様で、失敗の繰り返しや周囲からの否定、あるいは努力しても報われなかった体験などが積み重なることで、「どうせ自分には無理だ」「頑張っても意味がない」という思い込みが形成されてしまいます。
このような状態では、本来はできるはずのことにすら挑戦しなくなり、やる前から諦めてしまうことが増え、やがて引きこもりや慢性的なうつ状態へとつながってしまう可能性もあるのです。

■ 学習性無力感に陥る背景
学習性無力感の背景には、以下のような要因が挙げられます。
・失敗体験の繰り返し
努力をしたにもかかわらずうまくいかなかった経験が積み重なると、「頑張っても報われない」という学習が形成されてしまいます。
・周囲からの否定的な言葉
「お前には無理だ」「なんでできないの?」といった否定的な言葉を繰り返し浴びることも、自信の喪失につながります。
・制御不能な環境
自分の力ではどうにもならない状況(たとえば厳しすぎる家庭環境や理不尽な学校生活)に長くさらされると、無力感を学習してしまうことがあります。
■ 具体的な引き金となりやすい場面
こうした体験が、心の中に「どうせ自分なんか」という思いを植えつけていくのです。

■ 学習性無力感の影響
学習性無力感は、以下のような心理的・行動的影響を引き起こします。
■ 特に注意が必要な背景・障害
学習性無力感は、以下のような特性を持つ人に強く表れることがあります。
また、学習性無力感が進行すると以下のような精神疾患に発展することもあります。
■ 対策の柱は「行動からのアプローチ」
学習性無力感に対しては、「行動」からのアプローチが有効とされています。
人の感情や思考は、意識して変えることが難しい場合が多いです。特に「どうせダメ」という思考は長く定着しており、ちょっとしたアドバイスでは変わりません。ですが、行動は比較的コントロールしやすい要素であり、行動を変えることで感情や思考にも変化をもたらすことができるのです。
■ どんな行動が効果的?
特別な行動である必要はありません。大切なのは「とにかく何かをすること」、そして「続けること」です。小さな一歩でも、毎日積み重ねることで「自分は無力ではない」という実感を少しずつ取り戻せます。
たとえば、こんな行動がおすすめです:

■ 行動が変える心の流れ
このような流れを通して、少しずつ心の回復が進んでいきます。
■ 「上書きする」ための意識を持とう
学習性無力感は、過去の失敗や否定的な体験の積み重ねによって形成されてきたものです。だからこそ、「今から何かをする」という行動で、それを少しずつ「上書き」していくことがとても大切なのです。
「できた」「続けられた」という実感は、過去の「どうせダメだった自分」とは違う、自分自身の新しいイメージをつくり出してくれます。
■ おわりに
「どうせダメだ」という思いは、決してあなた自身の本質ではありません。それは、過去の経験の積み重ねによって心に刻まれてしまった、一つの「思い込み」にすぎません。
その思い込みにとらわれず、今できることを一歩ずつ積み重ねていくことで、心は少しずつ変わっていきます。大きなことではなく、小さな行動の積み重ねこそが、「無力感」を塗り替えていく力になるのです。
焦らず、急がず、できるところから。
今日もあなたが、ほんの少しでも「動いてみようかな」と思えたなら、それはすでに一歩目です。