現代社会において、気分障害は多くの人にとって身近な問題となっています。中でも「うつ病」と「持続性気分障害(持続性抑うつ障害とも呼ばれます)」はどちらも気分が落ち込むという共通点を持つ精神疾患ですが、その特徴や経過にはいくつかの明確な違いがあります。
本記事では、両者の違いを中心に、診断基準や治療のポイントについて詳しく解説していきます。

まず、症状の「深さ」に注目してみましょう。うつ病は強い悲しみや絶望感・無気力・興味や喜びの喪失など非常に強い症状を伴います。これにより、仕事や家事・人間関係といった日常生活に大きな支障をきたすことが珍しくありません。場合によっては自殺念慮や自傷行為に至ることもあり、緊急の支援が必要となることもあります。
一方、持続性気分障害では、うつ病ほど症状は強くありません。例えば「なんとなく元気がない」「常にやる気が出ない」といった軽度ながら慢性的な抑うつ気分が続きます。症状は比較的軽いものの、長期間にわたり生活の質をじわじわと低下させていく特徴があります。
次に、症状が続く期間に違いがあります。うつ病は、症状が2週間以上持続する場合に診断されます。比較的短期間の経過であっても、症状が深刻であればうつ病と判断されるのが一般的です。
これに対し、持続性気分障害は症状が少なくとも2年以上持続している場合に診断されます。成人では2年、子どもや青年では1年以上という基準が設けられています。
うつ病にははっきりとした発症時期と回復期があります。発症後数週間から数か月で回復するケースも多く、症状の「波」が比較的明確に見られるのが特徴です。
持続性気分障害では、症状が緩やかに続き、悪化と緩解を繰り返すもののうつ病のような急激な変動はあまり見られません。比較的平坦な経過をたどることが多いとされています。
両者は症状が似ているため、診断には細やかな注意が必要です。診断を確定するためには、次のような評価項目に基づいて慎重に進められます。
診断のための主な評価項目
さらに、国際的な診断基準である「DSM-5(精神疾患の診断と統計マニュアル第5版)」を用いて、診断を進めます。
DSM-5における診断基準
また、血液検査や脳の画像検査(MRIやCTスキャン)を実施する場合もあります。これは、うつ病や持続性気分障害に似た症状を引き起こす他の身体的な病気(例えば甲状腺機能異常や脳腫瘍など)を除外するために行われます。

興味深いのは、うつ病と持続性気分障害が重なるケースが存在することです。
持続性気分障害を抱えていた人が、さらにうつ病のエピソードを発症した状態を「二重うつ病」と呼びます。この場合、症状が重くなり治療が難航することが多いうえ、再発しやすいというリスクも抱えています。
うつ病・持続性気分障害のいずれも、不眠症や不安障害・アルコール依存症・薬物乱用などを合併することがあり、注意が必要です。これらを見逃さず、包括的な診療を行うことが求められます。
もし、自分や身近な人が「どちらの病気かわからない」「気分の落ち込みが長く続いている」と感じた場合は迷わず精神科や心療内科などの専門医療機関を受診しましょう。医師は、詳細な問診、必要に応じた検査、場合によっては心理検査などを通して正確な診断を下します。
特に、症状が長期間続いている場合や、自殺念慮が見られる場合には、早急な対応が重要です。
うつ病と持続性気分障害はどちらも治療が必要な病気です。しかし、それぞれの病気には特徴があり、治療法や経過も異なります。気分が落ち込むという一見似た症状でもその背景には異なるメカニズムが存在することを理解することが大切です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療的なアドバイスを提供するものではありません。病気の診断や治療については、必ず専門の医師にご相談ください。
自分自身の症状に心当たりがある方は決して一人で悩まず、まずは専門家に相談することをお勧めします。