皆さんの中には、
「人に触れられるのが苦手」
「味や匂いに敏感で食べ物に偏りがある」「騒がしい場所で耳を塞ぐ」
「明るい光が当たると目を覆う」といった経験をしている方もいらっしゃるかもしれません。これらの状態は、
感覚が過敏であることが原因かもしれません。
発達障害である自閉症スペクトラム(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)を持つ方には、感覚過敏や感覚鈍麻が見られるケースが多いことが、数々の研究で明らかになっています。
ただ、感覚過敏という言葉に馴染みのない方も少なくないと思います。感覚過敏とは、五感が外部からの刺激に対して過剰に敏感に反応する状態を指します。
その症状や程度には個人差があり、聴覚のみが過敏な方もいれば、視覚や嗅覚も敏感な方もいます。今回は、この
感覚過敏の特性や原因、そして日常生活での工夫や対策について取り上げたいと思います。
感覚過敏は病名ではなく、特定の感覚が過敏になる特徴を指す言葉です。通常の人が気にならないような状況でも、過敏な方はその刺激を無視できず、強く反応してしまうことがあります。感覚過敏があると、日常生活や学校、職場での困難が生じることも少なくありません。

感覚過敏には、触覚、聴覚、味覚、嗅覚、視覚、さらには前庭感覚(動きやバランス)に関する過敏など、さまざまな種類があります。また、複数の感覚が同時に過敏になる場合もあります。
一方で、感覚に対する反応が鈍くなる「感覚鈍麻」という状態も存在します。感覚過敏と感覚鈍麻の両方が見られることもあり、例えば大きな音に対して敏感に反応する一方で、人に呼ばれても反応が鈍いといったケースです。また、痛みの感じ方や温度に対する敏感さ・鈍感さ、空腹感に対する感覚も人によって異なります。
人に触れられることや特定の感触が苦手で、食感や温度などに関連して食べ物に対する問題が生じる場合があります。例えば、汚れることを嫌がったり、人や物に触れられるのを避けたり、特定の素材の衣類が不快で、服装の選択肢が限られることがあります。また、粘土や砂遊びなど、触覚を使う遊びを嫌がることもあります。これを触覚過敏と言います。
騒音や突然の音に敏感で、日常生活に支障をきたすこともあります。例えば、特定の音に敏感に反応して耳を塞ぐ、掃除機の音やお店の騒音、赤ちゃんの泣き声が苦手なことがあります。
これを聴覚過敏と言います。
また、味や匂いに過敏で、特に食べ物に対して好き嫌いが極端に多い場合、
味覚過敏や嗅覚過敏が原因である可能性もあります。例えば、他の人が気にしない味を嫌がったり、食事中に嘔吐反射が起こることがあるかもしれません。
無理に食べさせるのではなく、食べられるものや好きなものを与えることで、
食事の楽しさを感じられるようにすることが重要です。年齢とともに偏食が改善されることもあります。
視覚に関しては、視覚過敏と言い、
光や色、動きに敏感で、蛍光灯のちらつきや強い光に対して不快感を示すことがあります。多くのものが視界に入ると混乱したり、人混みを避けることもあります。聴覚過敏は大きな音に即座に反応する一方、視覚過敏は不快な状況が続く中で反応が現れるため、気づきにくい場合があります。
これらの感覚以外にも、動きやバランスに関する前庭感覚の過敏も存在します。例えば、乗り物酔いを起こしやすかったり、激しい動きやブランコのような遊びを嫌がることがあります。
感覚過敏の原因については、明確に解明されているわけではなく、複数の要因が考えられます。発達障害のある人は感覚に関して困難を抱えていることが多く、自閉症スペクトラム(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)が関与することが多いです。ただし、感覚過敏が発達障害を必ずしも意味するわけではありません。
また、脳が刺激に対して過剰に反応することや、てんかんや片頭痛といった病気も原因となることがあります。身体的な疾患やストレスも感覚過敏を引き起こす要因として考えられ、特に体調が悪いときやストレスを感じているときは、症状が現れやすいと言われています。
感覚過敏に関連してよく見られる具体的な状態について確認していきましょう。ただし、これらの特徴が当てはまるからといって必ずしも感覚過敏というわけではないことを念頭に置いてください。
触覚過敏の人の場合、特定の衣服しか着ない、もしくは特定の衣服を避けることがあります。また、後ろから近づかれることや、目に見えないところで触られることを嫌がることが多いです。扇風機の風やシャワーを痛いと感じたり、散髪、洗髪、爪切り、歯磨きなどの日常的なケアを嫌がることもあります。さらに、
くすぐられることに対して過剰に反応することも特徴的です。
聴覚過敏の人は、大きな音や突然の音を怖がることが多く、雷やサイレン、風船が割れる音などに過敏に反応します。また、特定の人の声や合唱での不協和音に耐えられない場合や、ドライヤーや冷蔵庫などの機械から出る音に対しても不安を感じることがあります。
味覚や嗅覚が過敏な人は、他人が気づかないような微細な匂いに気づいたり、それに不快感を覚えたりします。偏食が多く、味の違いに敏感で、食べ物の味が混ざることや特定の匂いを避ける傾向があります。フードコートなど、匂いが充満する場所を苦手とすることもよく見られます。
視覚過敏の人は、光を避けようとして目を覆ったり、片目を閉じたりすることがあります。明るいライトや太陽の光を避け、目を使うことで頭痛や吐き気、めまいを訴えることがあります。また、人と目を合わせるのを避けることも特徴の一つです。
前庭感覚が過敏な人は、エレベーターやエスカレーターに乗るのを嫌がり、乗り物酔いをしやすいです。階段の昇り降りを怖がることや、公園の滑り台やブランコなどの遊具で遊ぶのを避けることもあります。
感覚過敏がある場合の対策として、
触覚、聴覚、味覚、嗅覚、視覚、前庭感覚に対してどのように対応すればよいかは、以下の方法が考えられます。
まず、触覚過敏に関しては、衣類の選び方や着方に工夫をすることが有効です。例えば、タグが気になる場合は事前に切ってしまう、試着をしっかり行う、または好きなデザインの服を選ぶといった工夫ができます。また、シームレスソックスのように縫い目がないものを選ぶのも一つの方法です。
日常的な作業での違和感については、本人が自分で行うことで刺激を軽減できることがあります。歯磨きや爪切りなどが苦手な場合でも、本人に手順書を用意し、自主的に取り組んでもらうことで
不快感を減らすことができます。
次に、聴覚過敏への対策としては、音量を調整するための耳栓やノイズキャンセリングイヤフォンを利用する方法が考えられます。日常的な雑音を軽減するために、スピーカーに布をかけたり、椅子の音を抑えるシートを貼ることも効果的です。また、ドアの閉まる音を和らげるためにスポンジを取り付けることも有効です。
味覚や嗅覚過敏に対しては、無理に食べ物を強要するのではなく、本人が楽しめるように食事の環境を整えることが重要です。においが混ざるのが苦手な場合は、料理ごとに皿を分けるといった対策も役立ちます。また、マスクやタオルで不快なにおいを軽減したり、好きな香りを準備しておくことも有効です。
視覚過敏には、遮光カーテンや間接照明の使用、シンプルな色使いのインテリアで刺激を抑える方法があります。必要に応じてサングラスや帽子を使用して光を避けることも効果的です。

前庭感覚の過敏がある場合、乗り物酔いを軽減するために、握力を利用した刺激を取り入れる方法が推奨されます。例えば、車の取っ手を握ったりガムを噛むなどが有効です。
感覚過敏は自閉症スペクトラムや注意欠如多動症の方に多く見られますが、必ずしも全員に感覚過敏があるわけではありません。また、感覚過敏のある人が必ず発達障害を持っているわけでもありません。精神的な影響も大きいため、安心できる環境を整えることが重要です。生活に支障がある場合は、専門機関に相談することが推奨されます。