「30代男性です。最近物忘れがひどいのですが、もしかして認知症でしょうか?」
このような不安を抱える方は少なくありません。テレビドラマなどで取り上げられることもある「若年性認知症」という言葉が、頭をよぎる人もいるかもしれません。しかし、結論から言えば、30代で認知症になることは非常に稀です。そして、物忘れの背景には、うつ病や発達障害といった別の要因が関係していることもあります。
この記事では、若い世代における物忘れの原因について、丁寧に解説していきます。

まず知っておきたいのは、「若年性認知症」は非常に稀だということです。確かに存在はしますし、相談を受けることもありますが、若年性認知症と診断される人の多くは50代以上です。30代での発症は、ほぼゼロに近いとされています。
そのため、「物忘れ=認知症」と早合点する必要はありません。では、30代の方が物忘れを感じるとき、どのようなことが原因として考えられるのでしょうか?
ここ数ヶ月で急に物忘れが気になるようになったという場合、まず考えたいのは「うつ病」の可能性です。
うつ病は、単に気分が落ち込む病気ではありません。脳の働きが全体的に低下し、集中力や記憶力にも影響を及ぼします。その結果、「覚えたことをすぐ忘れる」「話した内容を思い出せない」「新しいことが覚えにくくなった」といった症状が出てくることがあります。
さらに、うつ病では以下のような症状も伴うことが多くあります。
物忘れとともにこれらの症状が見られる場合は、うつ病の兆候である可能性が高まります。
また、うつ病と似た状態として、以下のような状況でも物忘れが生じることがあります。
これらも「脳のパフォーマンス低下」によって記憶が曖昧になる原因になります。
一方で、「昔から物忘れしやすい」「小さい頃から忘れ物が多かった」といった傾向がある場合には、「ADHD(注意欠如・多動症)」の可能性を考えてみてもよいかもしれません。
ADHDは、生まれつきの脳の特性により、不注意や多動・衝動性が目立つ発達障害の一つです。不注意の特性によって、「予定を忘れる」「モノを置き忘れる」「指示を忘れる」など、日常の中で多くの物忘れが起こります。
ADHDにおける物忘れが目立ちやすくなる場面には、以下のようなものがあります。
これまでは周囲のサポートや自分なりの工夫でカバーできていたとしても、社会人になって忙しさが増したことで、カバーしきれず物忘れが目立つようになるケースもあります。
ADHDの他のサインとしては、「じっとしていられない」「衝動的に行動してしまう」「ぼんやりしていることが多い」などが挙げられます。
また、物忘れを引き起こす可能性のある発達特性はADHDだけではありません。
これらの要素が複合的に関わって物忘れが目立っているケースもあります。

「30代で物忘れがひどい」と感じるとき、すぐに認知症を疑う必要はありません。
若年性認知症は確かに存在しますが、30代での発症は極めてまれです。実際には、うつ病やADHD、その他の精神的・発達的な要因によって、物忘れが生じていることが多いのです。
不安を感じたときには、自己判断で悩まず、医療機関や専門家に相談してみることが大切です。心と脳の状態を整えることが、物忘れの改善への第一歩になるかもしれません。