「動きたくても動けない」──これはうつ病を抱える多くの方が口にする切実な声です。気持ちはあっても、身体がついてこない。やろうと思っても、なぜか一歩が踏み出せない。そしてそんな自分を、責めてしまう。
本稿では、うつ病の症状としての「動けなさ」と、それにどう向き合えばよいのか、精神医学とリハビリテーションの視点からやさしく解説します。まずは、ご自身の状態を受け入れ、そして少しずつ希望を見出すきっかけとなれば幸いです。
うつ病は、脳内の神経伝達物質のひとつであるセロトニンの機能低下などを背景に、気分の落ち込みや意欲の低下が現れる疾患です。治療には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を中心とした薬物療法のほか、休養や心理的支援が重要とされています。

特に、うつ病の初期段階では「休むこと自体が治療」とされており、無理に動こうとするよりも、安心して心身を休めることが最優先されます。
一方、症状がある程度落ち着いてきた中期以降では、少しずつでも動き始めることがリハビリとして推奨されるようになります。この段階では以下のような治療的アプローチが導入されます:
このように、休養と活動のバランスをとりながら、無理のない範囲で回復を目指すことが基本です。
うつ病の治療過程では、日によって状態に波があるのが一般的です。昨日は動けたのに今日はベッドから起き上がれない──そんな日があって当然なのです。
こうした「変動」の背景には、以下の要因が考えられます:
どれも病気の一部であり、「怠けている」のでは決してありません。
答えはシンプルです。
動けない日は、しっかり休む。
「頑張れば動けるはず」と無理をすると、かえって回復を遅らせ、うつ症状が再び悪化するリスクがあります。自分を責めるのではなく、「今日は充電の日」と割り切ることも、立派な治療行動です。
また、休む決断は早めに行いましょう。動けないことに長く悩み続けると、それが新たなストレスとなってしまい、負のループに入ってしまいます。
うつ病の患者さんが陥りやすいのが、「自責の念」です。
こうした思考は、うつ症状を一層悪化させる要因になりえます。動けない自分を責めるのではなく、「動けないのは病気のせい」と切り離して考えることが大切です。
回復が見え始め、少しずつ動けるようになってきたら、次のような工夫を取り入れてみましょう:
そして、「今日動けた」ことを自分で認め、褒めてあげてください。それが意欲の回復を促し、次の「動ける日」につながっていきます。

うつ病は、山あり谷ありの回復過程をたどる疾患です。一足飛びに元気になることはありません。だからこそ、「動ける日」と「休む日」を自分なりに調整しながら、焦らず進んでいくことが大切です。
この姿勢こそが、うつ病からの回復において最も大切な「生きる力」そのものです。
少しずつ、確実に。今日休んだあなたにも、また動ける日がやってきます。
心から応援しています。