買い物に行った際、騒音が気になって耳をふさいでしまうことや、子どもの頃に掃除機の音でパニックになったことがある。このような状況は感覚過敏の一種である「聴覚過敏」が関係しているかもしれません。しかし、聴覚過敏という言葉を初めて聞く人もいるでしょう。今回は、聴覚過敏の特徴や原因、対策についてお話しします。

「聴覚過敏」は、感覚過敏の一種です。感覚過敏とは、特定の音やにおい、光・味・触覚に対して非常に敏感に反応し、日常生活や保育園・学校・社会生活で困難を抱える状態を指します。多くの人は突然大きな音がしても、一時的に注意を払いますが、あまり気に留めません。しかし、感覚過敏のある人はこれができません。一般的に無視できるような状況や刺激でも、無視することが難しかったり、過敏に反応します。
「感覚過敏」とは特性を示す言葉であり、病名ではありません。例えば「味覚」について考えると、同じ料理でも人によって味の感じ方が異なります。辛いと感じる人もいれば、辛さを感じない人もいます。また、辛いと感じてもその味を好む人もいます。同様に、「聴覚」も人それぞれ感じ方が異なります。「聴覚過敏」とは、他の人が気にしないような特定の音や大きな音に対して過敏に反応し、不安を感じる状態を指します。また「感覚過敏」には、聴覚過敏以外にも次のようなものがあります。
聴覚過敏と同時に他の感覚過敏が起こる人もいます。また、感覚過敏の対極にある状態として感覚鈍麻も存在します。これは感覚への反応が鈍い状態を指しますが、特定の感覚が過敏だからといって、全ての感覚が過敏というわけではありません。同じ人が感覚過敏と感覚鈍麻の両方を示す場合もあります。

聴覚過敏といっても、人によって苦手な音はさまざまです。聴覚過敏の特性は、聴覚(音を感じる感覚)が非常に敏感になることです。通常、他の人が聞き取れないような音が聞こえたり、一般的に苦にならない音に苦痛を感じることがあります。さらに、音量を他の人より大きく感じたり、音によって痛みを感じることもあります。また、周囲の雑音が耳に入り、特定の音に注意を向けるのが難しいと感じる人もいます。その結果、ストレスを感じやすく、イライラしたり機嫌が悪くなることがあります。聴覚過敏は感覚過敏の中でも特に日常生活に大きな影響を与えると考えられます。日常生活では予測や回避が困難な様々な音に囲まれているためです。ただし、全ての音に対して苦痛を感じるわけではありません。許容できる音や、好きな音・嫌いな音があります。このように音の捉え方には個人差があり、聴覚過敏の特性も人によって異なります。
聴覚過敏で見られる状態は以下の通りです。
聴覚過敏の人が苦手な音は以下の通りです。
音の刺激に対する感じ方は個人にしかわからないため、周囲から見ると聴覚過敏は理解しにくい場合があります。そのため、保護者や支援者は子どもの耳をふさぐ行動や、騒々しい場所で不安そうにする様子に気を配ることが重要です。特に、騒がしい場所での反応や、特定の音に対する様子を観察し、イライラしていないか、集中力が低下していないかなどに注意を払うことが大切です。聴覚過敏の原因は大まかに次の3つに分けられます。
1.脳の機能
聴覚過敏の一因として、脳の特定の領域やネットワークの機能異常が考えられます。例えば、聴覚を処理する領域での過剰な反応や不適切なフィルタリングがあり、これが音に対する過敏な反応を引き起こす可能性があります。
2.耳の機能
耳の機能自体が問題を引き起こすこともあります。耳の異常や感覚器の過敏性が、聴覚過敏をもたらす原因となることがあります。
3.ストレス
長期間のストレスや緊張は、感覚過敏の原因になることがあります。心理的な要素や環境のストレスが、聴覚過敏を引き起こす可能性があります。ストレスが過敏な反応を招き、音に敏感に反応する傾向があると考えられます。これらの原因は個々の症例によって異なる場合がありますが、脳の機能、耳の機能、そしてストレスが聴覚過敏を引き起こす可能性がある要因として考えられています。これらをさらに具体的に見ていきましょう。
脳の機能が原因となる場合、発達障害やてんかん、片頭痛などが考えられます。
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)などの発達障害のある方は、聴覚過敏の困りごとを持ちやすいことが知られています。この場合の聴覚過敏の原因についてはまだ特定されていません。
てんかんや片頭痛の場合、脳の神経細胞が過敏になってしまい、必要な音の聞き分けが難しくなるなど、聴覚過敏の状態を引き起こすことがあります。
耳の機能が原因となる場合には、次の2つの可能性が考えられます。
①耳小骨筋の反射異常
大きな音が耳に入ると、耳の中にある筋肉が収縮して音の大きさを抑制します。このシステムがうまく働かない場合に聴覚過敏が起こります。この筋肉は、顔面神経に支配されており、顔面神経麻痺が起きた際に発症します。
②内耳の反応異常
低下した聴力をカバーするために、音を脳に伝える内耳の細胞の働きに異常が起きてしまい、聴覚過敏の状態が起こることがあります。
ストレスや不安は聴覚過敏に限らず、多くの感覚過敏の状態と関連すると言われています。体調が悪いときや不安でドキドキしているときなどは、特に注意する必要があります。
不快に感じる音をなくすことが最優先です。たまに不快な音に慣れさせる試みをすることもありますが、その過程で非常にストレスを感じ、逆に過敏になることがあります。したがって、このアプローチはお勧めできません。次に具体的な対処方法の一例を紹介します。
耳に入る音を減らす、苦手な音を防ぐ。聴覚過敏に対しては耳栓などのグッズを使用することも効果的です。聴覚過敏に対処するグッズの例として、耳栓、イヤーマフ、ノイズキャンセリングイヤフォン、音量を調整したい場合、耳栓やイヤーマフ、ノイズキャンセリングイヤフォンは効果的です。イヤーマフやノイズキャンセリングイヤフォンは、定常音を減らす際にも有効です。これらのアイテムを持ち歩くことで、苦手な音がある環境でも聞こえる音を減らすことができ、それが安心感につながります。ただし、常時使用すると過敏になる可能性があるため、苦手な音がある場面では使用し、それ以外の場面では外すなど、使うタイミングと使わないタイミングを区別することがよいでしょう。 聴覚過敏を周囲に伝える手段の一つとして、「聴覚過敏保護用シンボルマーク」が存在します。このマークは、特定のメッセージとともに表示され、聴覚過敏の保護や状態を分かりやすく伝えることを目的としたものです。
聴覚過敏は外見から非常に分かりづらい状態です。もし、子どもが騒がしい場所でイライラしたり、大きな音に怖がったり、特定の音に敏感に反応している様子を見せた場合、聴覚の過敏さが原因である可能性を考えてください。ただし、聴覚過敏の原因は多岐にわたります。医学的な疾患が関係している可能性もあるため、自己判断だけでなく、耳鼻科などの受診をお勧めします。聴覚過敏に対処する際、最も重要なのは、本人が快適に過ごせるよう配慮することです。不快に感じる音を減らす環境づくりや、イヤーマフやシンボルマークなどを活用し、安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
以上が、聴覚過敏の発達障害との関連、原因や症状、対策についての説明でした。