発達障害における「強み」と「弱み」への取り組み方とは
― どちらを重視すべきか、その目的と意味を考える ―
「発達障害です。強みを伸ばすべきですか?それとも弱点を克服すべきですか?」
こうした質問をよく耳にします。この問いへの答えは決して単純ではありませんが、ひとつ確かなのは「強みにも弱みにも、それぞれ取り組む価値がある」ということです。大切なのは、それぞれの目的と意味を正しく理解し、自分に合ったバランスで向き合っていくことです。
発達障害の特性:得意・不得意のバラつきが大きい
発達障害は、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)に代表される、脳の先天的な働きの偏りによって生じる特性です。そのため、個人によって「非常に得意なこと」と「極端に苦手なこと」の差が大きく出やすい傾向があります。
このような特性を持つ中で、「得意なこと(強み)」を中心に伸ばすか、「苦手なこと(弱点)」を克服していくかは、しばしば議論となります。昨今では「強みを生かす」ことが推奨される風潮もありますが、実際には一方に偏ることなく、両方に取り組む姿勢が求められます。
強みを生かす:社会適応と自己肯定感のために
◎ 社会での「居場所」を見つける力になる
社会の中では、個人の価値が「他者と比べて優れている部分」で評価される場面が多くあります。そのため、発達障害のある人が自分の強みを理解し、それを活かすことで、社会的な適応や居場所づくりに役立ちます。
自分の得意な分野で結果を出せれば、早期に周囲からの肯定的なフィードバックが得られます。これにより、他者から認められる経験を積みやすくなり、自己肯定感の向上につながっていくのです。
さらに、その強みが他者への貢献に結びつけば、社会的役割の実感やさらなる評価につながり、良い循環を生み出します。
◎ ただし「限界」もある
一方で、強みに依存しすぎることの限界も指摘されています。
弱点に取り組む:成長と適応の土台を築く
◎ 外からの評価は得にくくても、内面の成長には有効
弱点の克服は、往々にして外からの評価につながりにくいものです。どれほど努力しても、他者と比べて目立った結果になりづらく、「がんばっているのに報われない」と感じることもあるでしょう。
しかし、弱点に真正面から取り組むことは、他では得られない「自分の成長」や「自己理解」につながります。特に、困難に直面しながらも改善策を見つけ、取り組み続けることで、自分にとっての「内発的な自己肯定感」が育ちます。
これは、「他人からの評価」に左右されない、自分の価値を自分で認める力の源となるのです。
◎ 限界を見極めつつ「トレーニング」として捉える

もちろん、無理に苦手を克服しようとすることで過度なストレスがかかってしまっては逆効果です。そのため、弱点への取り組みは、「結果を出すため」ではなく「トレーニング」として割り切ることが重要です。
例えば…
このように、弱点への取り組みは社会で生きる上での“土台作り”にほかなりません。
強みと弱み、それぞれの「意味」と「目的」
このように、「強みを生かすこと」と「弱点をカバーすること」は、いずれも大切でありながら、目指す目的が異なります。
| 取り組み | 目的 | 得られるもの |
| 強みを生かす | 社会適応・他者評価 | 承認、自己肯定、居場所 |
| 弱点を補う | 自己成長・適応の土台 | 自信、視野の拡大、内発的自己肯定感 |
どちらか一方に偏るのではなく、自分の状態や目標に応じて、バランスよく取り組む姿勢が求められます。社会の中で評価されながらも、自分らしさを失わないためには「外からの評価」と「内なる成長」の両輪が必要です。
まとめ:発達障害における“個性”を生かすということ

発達障害のある方にとって、「強み」と「弱み」は表裏一体とも言えます。強みを生かすことで早く成果につながり、社会的な評価を得ることができる一方で、弱みに向き合うことで得られる内面的な自信や安定感もまた、長く生きていくうえでの大きな財産となります。
「得意を活かして成果を出し、苦手には向き合って土台を築く」
そんなスタンスが、発達障害という個性を生かしながら、自分らしく社会と関わっていく道を照らしてくれるはずです。