双極性障害と躁うつ病の違いとは?専門的視点からわかりやすく解説

精神疾患の中でも、気分の波が大きく変動することで知られている「双極性障害」

かつては「躁うつ病」と呼ばれていたことから

今なおこの2つの言葉が混同されることが少なくありません。

しかし、現代の医学では、両者には明確な違いがあるとされています。

本記事では

「双極性障害」と「躁うつ病」の違いについて、初めての方にもわかりやすく解説してまいります。


1. 双極性障害とは何か?

気分が「上がりすぎる」と「落ち込みすぎる」病気

双極性障害(Bipolar Disorder)とは、気分が異常に高まる「躁状態(または軽躁状態)」

反対に気分が極端に沈む「うつ状態」が繰り返される精神疾患です。

単なる気分の浮き沈みとは異なり、日常生活や仕事、人間関係に重大な支障をきたすのが特徴です。

1. 双極性障害とは何か?

主な症状

  • 躁状態(または軽躁状態):異常なほどの高揚感、多弁、自信過剰、活動量の増加、睡眠欲求の減少、浪費・性的逸脱などの衝動的行動。
  • うつ状態:憂うつな気分、興味や喜びの喪失、疲労感、自己評価の低下、集中力の低下、食欲や睡眠の変化、自殺念慮など。

これらのエピソードは、時に数日から数週間、長いと数か月にわたって続くこともあります。

発症の背景と原因

双極性障害の発症には複数の要因が関与しているとされます。代表的なものは以下の通りです。

  • 遺伝的要因:家族に同じ疾患を持つ人がいる場合、発症リスクが高まる傾向があります。
  • 神経伝達物質の異常:脳内のセロトニンやドーパミンなどのバランスの乱れが影響します。
  • 環境要因やストレス:仕事や家庭での強いストレス、生活の変化などがきっかけとなる場合もあります。

病型による分類

双極性障害は症状の現れ方によって以下のように分類されます。

  • 双極I型障害:はっきりとした躁病エピソードを少なくとも1回経験している。多くの場合、うつ病エピソードも伴います。
  • 双極II型障害:躁病ほどではないが、活動的な軽躁状態と、重度のうつ状態が交互に現れます。
  • 気分循環性障害(サイクロチミア):軽度の躁状態とうつ状態が、2年以上(小児・青年では1年以上)続く状態。
  • 特定不能の双極性障害:上記のどれにも分類しきれないが、双極性障害の可能性がある状態。

治療法

双極性障害の治療は、薬物療法と心理社会的アプローチを組み合わせて行います。

  • 気分安定薬(リチウム、バルプロ酸など)
  • 抗精神病薬(クエチアピン、オランザピンなど)
  • 抗うつ薬(必要に応じて)
  • 認知行動療法(CBT)
  • 家族療法・心理教育
  • 電気けいれん療法(重症または治療抵抗性の場合)

治療は長期にわたることが多く、再発予防の観点からも継続的なケアが重要です。


2. 躁うつ病とは?

双極I型障害とほぼ同義の旧称

「躁うつ病」という言葉は、かつて双極性障害を指す一般的な呼び方でした。

現在では、医学的な診断名としては使用されなくなり

主に双極I型障害を表す俗称的な表現として使われています。

症状の傾向

躁うつ病では、以下のような典型的な症状が見られます。

  • 躁状態:エネルギーの異常な高まり、極端な自信、注意散漫、社交的すぎる振る舞い、怒りっぽさ、判断力の低下による問題行動など。
  • うつ状態:自己評価の低下、無気力、罪悪感、自責、興味喪失、希死念慮など。

また、躁状態とうつ状態の両方の症状が同時に現れる「混合エピソード」も存在し

診断や治療が難しくなるケースもあります。

治療の方針

基本的な治療方針は双極性障害と共通しています。

  • 気分安定薬の服用
  • 必要に応じて抗精神病薬や抗うつ薬の使用
  • 認知行動療法(CBT)やカウンセリング
  • 家族との連携を含めた心理社会的支援

3. 双極性障害と躁うつ病の違い

では、改めて「双極性障害」と「躁うつ病」の違いを以下のように整理してみましょう。

項目双極性障害躁うつ病
用語の位置づけ精神科の正式な診断名(DSM-5などに基づく)古い名称・俗称。現在はあまり用いられない
病型の範囲I型・II型・気分循環性障害なども含む主に双極I型障害を指すことが多い
症状の幅軽躁や軽度のうつも含めて幅広い典型的な躁病と重度のうつ病が中心
治療の対象病型に応じた個別対応双極I型に準じた治療が基本

まとめ:用語は変わっても、支援の本質は変わらない

3. 双極性障害と躁うつ病の違い

「双極性障害」と「躁うつ病」は、現在ではほぼ同じ病気を指していますが

使用される文脈や意味合いにわずかな違いがあります。

特に医療の現場では、「双極性障害」という診断名に基づき

患者一人ひとりに合った治療が行われています。

この疾患は、再発や症状の波があるため、長期的なサポートが欠かせません。

もし自分や身近な人に、気分の大きな変動や生活に支障をきたすような症状が見られる場合は

早めに専門医に相談することが大切です。

病気に対する正しい理解と、周囲の温かな支援が、安定した日常生活の第一歩となるでしょう。