うつ病です。働けているけどずっと調子が悪い

はじめに:うつ病です。働けているけれど、ずっと調子が悪い

「うつ病だけれど、何とか仕事には行けている」──そんな状況に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。一見、日常を送れているように見えても、心の内では常に疲れを感じ、気分が晴れず、なんとか踏ん張っている状態。周囲からは「頑張っていてすごいね」と言われながらも、本人としては「限界が近い」と感じている──そんな「働けてしまっているうつ病」の状態には、注意が必要です。

このような状態が続くと、うつ病の回復が遅れてしまうどころか、悪化するリスクさえあります。この記事では、「働きながらうつ病を治療すること」について、メリットとデメリット、またその経過や対策、そして休職という選択肢について丁寧に解説します。

働きながらうつ病を治療するという選択肢

うつ病の治療において、「働きながら治すか」「いったん休職して治療に専念するか」は、大きな分岐点になります。

働きながら治療すること自体は可能ですし、多くの人がその道を選択しています。しかし、ストレスが継続する中で治療効果が弱まったり、病状が長引いてしまったりするリスクもあるため、慎重な判断が必要です。

働きながら治療するメリット

収入の安定

働き続けることで収入が途切れず、経済的な不安が軽減されます。これは精神的にも大きな安心材料になります。

キャリアへの影響が少ない

休職すると職場での評価やキャリアへの影響を心配する人も多いですが、働き続けていればその点での不利益は回避しやすくなります。

ただし、無理をして業務に支障が出る場合は逆効果となることもあります。

同僚や上司に迷惑をかけないという感覚

自分が抜けたことで周囲に負担をかけたくない、という気持ちから働き続ける人もいます。

ただし、この思いが強すぎて無理をすると、かえって職場にも自分にも悪影響を及ぼす場合があるため、注意が必要です。

働きながら治療するデメリット

治療効果が出にくい

ストレスを抱えたままの生活では、治療薬やカウンセリングの効果が十分に発揮されにくく、改善が遅れることがあります。

症状の悪化リスク

無理をして働き続けることで、病状が悪化してしまうことがあります。結果として長期的に職場を離れる必要が生じるケースもあります。

回復までの時間が長引く

症状が悪化しないまでも、膠着状態(横這い)が続くことで回復が長期化してしまうことがあります。

働きながら治療する中で起こりうる経過

改善するケース

働きながらでも、業務の負荷が軽減されたり、治療がうまく機能したりすることで、症状が少しずつ改善することもあります。この場合、無理なく働き続けながら、治癒(完治)を目指すことが可能です。

ただし、再発予防のためには、過労や対人関係によるストレスへの注意は引き続き必要です。

悪化するケース

治療よりもストレスの負荷が勝ってしまう場合、症状が次第に悪化していきます。「朝起きられない」「職場に行けない」といった状態に至る前に、速やかに休職という選択肢を検討する必要があります。

このタイミングを逃すと、心身のダメージが深くなり、回復までの時間がさらに長引いてしまうこともあります。

横ばいのケース(膠着状態)

一番判断が難しいのが「良くも悪くもならない」横ばい状態です。薬や治療によってある程度の安定はあるものの、うつ状態が長期間にわたって改善しないまま続く場合があります。年単位で膠着状態が続くこともあり、生活の質や将来の見通しにも影響が出てきます。

横ばい状態に対する対策

横ばい状態に対する対策

横ばいが続く場合には、いくつかの対策を試みることが重要です。

薬の調整

  • 睡眠の質を改善する薬を見直すことで状態が良くなることがあります。
  • 抗うつ薬の変更や追加薬(補助薬)でバランスを整え、改善する可能性もあります。

ただし、すでに薬物治療を継続している中で横這い状態が続いている場合、薬の調整だけでの劇的な改善は難しいことも多く、過度な期待は避けましょう。

業務の調整

  • 残業の削減や勤務時間の短縮を通して、体への負担を軽減します。
  • 苦手な人間関係の見直し(チーム変更や配置換えなど)も効果がある場合があります。

ただし、これらの対応には組織としての柔軟性や上司の理解が必要なため、限界がある場合もあります。

積極治療としての休職を検討する

状態の改善が見られない、あるいは悪化の兆候がある場合には、積極的に休職を検討することも必要です。治療に専念することで、より早く・確実に回復する可能性があります。

休職の期間と3つの段階

前期(休養期)

1〜2ヶ月程度は心身の回復に専念します。何もしないことを目標にする時期です。

中期(リハビリ期)

軽い運動や外出などを通して、少しずつ活動量を増やしていく段階です。

後期(復職準備期)

職場復帰を視野に入れ、模擬業務や会社との面談などを行って、復帰への準備を整えていきます

休職中のサポート制度を活用する

傷病手当金

健康保険に加入している人であれば、うつ病などで働けなくなった場合、最大1年半にわたり給与の約6割が支給される制度です。医師の意見書や定期的な診察が必要です。

自立支援医療制度

うつ病などの精神疾患で継続的な通院が必要な場合、医療費が自己負担3割から1割に軽減される制度です。主治医と相談して申請することで利用できます。

リワーク支援

回復期において、復職をサポートするためのリハビリ施設(リワーク)を利用することも有効です。グループ活動やストレス対処法の習得、模擬業務の実施など、復職に向けた準備を段階的に行うことができます。

まとめ:無理せず、自分に合った選択を

うつ病の治療を「働きながら」行うことは決して間違いではありません。しかし、それが結果的に回復を妨げてしまう場合もあります。状態が悪化してきたと感じたら、早めに「休職する」という選択肢を視野に入れることが大切です。

ときに横ばいの状態が長く続き、「このままで良いのか」と不安に感じることもあるでしょう。そんなときは薬の調整や業務の見直しを行うと同時に、必要であれば休職による積極的治療を選ぶことも大切です。

そして、休職中には傷病手当や自立支援制度といった公的サポートを活用することで、経済的・精神的な負担を軽減しながら、しっかりと治療に向き合うことができます。

「働き続けること」も、「立ち止まること」も、どちらも大切な選択肢です。自分の心と体に耳を傾けながら、無理のない回復への道を選んでいきましょう。