近年、精神疾患に対する理解が深まるなかで
「双極性障害(躁うつ病)」という言葉を耳にする機会も増えてきました。
実はこの病気、世界的には100人に1人がかかるともいわれており、決してまれな病ではありません。
しかし、「うつ病」との違いがわかりづらく、誤解されやすい側面もあります。
本記事では、双極性障害とはどのような病気なのか、うつ病との違いは何か
さらにその原因や治療法について、わかりやすくご紹介いたします。
双極性障害は、気分が極端に高揚する「躁状態(または軽躁状態)」と
気分が沈み込む「うつ状態」が交互に現れる精神疾患で、「気分障害」の一種です。
かつては「躁うつ病」とも呼ばれていました。
躁状態では自信過剰になったり、活動的になりすぎたりして
社会的・経済的な問題を引き起こすこともあります。
一方、うつ状態では意欲や興味が著しく低下し
自殺念慮が現れることもあるため、非常に注意が必要です。
発症年齢については、双極Ⅰ型障害が平均18歳、双極Ⅱ型障害では
20代半ばで発症することが多いとされています。
思春期から若年成人にかけての早い段階で発症する傾向にあるため
早期発見と継続的な支援が重要です。
双極性障害の明確な原因はまだ解明されていませんが
遺伝的要因の影響が強いことが知られています。
たとえば、家族に同じ病気を持つ人がいる場合、発症リスクが高まるという研究結果もあります。
ただし、遺伝だけでなく、性格傾向(感受性が高い、完璧主義など)
過労や不規則な生活、心理的なストレス、身体疾患
社会的要因なども発症のきっかけとなることがあります。
これらが複雑に絡み合うことで、発症や再発を引き起こすと考えられています。
躁状態の症状
うつ状態の症状
躁状態では一見元気そうに見えるため、周囲が病気だと気づきにくいことがあります。
また、うつ状態が長く続く場合は「単なるうつ病」と誤診されることもあるため、注意が必要です。

双極性障害と混同されやすい病気が「うつ病」です。
うつ病は「単極性うつ病」とも呼ばれ、気分の落ち込みや意欲の低下などの
“うつ状態”のみがみられる病気です。
一方、双極性障害では“うつ状態”と“躁(または軽躁)状態”の
両方が交互に現れるという点が大きく異なります。
この違いは治療方針にも大きく影響します。
うつ病では主に抗うつ薬が用いられますが
双極性障害においては、躁状態を悪化させるおそれがあるため
抗うつ薬の使用には慎重を要します。
そのため、双極性障害では「気分安定薬」が治療の中心となります。
実際には、双極性障害の多くの方が「うつ状態」で初めて医療機関を受診し
最初はうつ病と診断されるケースが少なくありません。
その後、経過の中で躁状態が明らかになり、初めて双極性障害であると判明するのです。

双極性障害は再発率が非常に高く、90%以上の方が再発を経験するとされています。
そのため、治療の大きな柱は「再発予防」です。
薬物療法
治療の中心となるのは気分安定薬(リチウム、バルプロ酸、ラモトリギンなど)で
躁とうつの両方のエピソードを抑える効果があります。
必要に応じて抗精神病薬や抗うつ薬が併用されることもありますが
症状の経過やバランスを見ながら慎重に判断されます。
継続的な通院と精神教育
治療のもう一つの柱は、病気への理解を深める「精神教育(サイコエデュケーション)」です。
自分自身が病気を理解し、再発の兆候に気づけるようになることは
長期的な予防につながります。
また、家族やパートナーなど周囲の人も病気について学ぶことで
サポート体制が整いやすくなります。
ストレスマネジメントと生活リズム
再発のきっかけとなるのが、ストレスや不規則な生活です。
なるべく生活のリズムを整え、過度なストレスを避けるよう心がけることが重要です。
以前のエピソードを振り返り、「何がストレスになったのか」「どんなときに再発したのか」を
理解することも、自己管理に役立ちます。
双極性障害とうつ病は、一見似たような症状を持つ精神疾患ですが
その病態も治療法も大きく異なります。
特に双極性障害では、適切な治療がなされないと症状が悪化したり
誤診によって治療が難航することもあります。
大切なのは、病気を正しく理解し、必要な治療を継続すること。
そして、家族や医療者と協力しながら、再発を防ぎ
安定した生活を送ることができるよう支援体制を整えることです。
心の病は目に見えにくいものですが、決してひとりで抱え込む必要はありません。
気になる症状があるときは
早めに専門医に相談することで、回復への第一歩を踏み出せるでしょう。