「統合失調症の再発を防ぐために、一番大切なことは何ですか?」——このようなご質問をいただくことがあります。多くの方が気になる点だと思いますが、答えは非常にシンプルです。それは、「薬をきちんと続けること」です。しかし、実際には「薬を飲み続ける」ことは想像以上に難しく、さまざまな要因が関わっています。本記事では、統合失調症という病気の基本的な特徴とともに、再発予防のためになぜ薬の継続が重要なのか、また継続を妨げる要因やその対策について、詳しく解説していきます。

統合失調症は、主に脳の機能に不調が生じることによって、幻聴や妄想などの症状が現れる病気です。発症時や悪化時には症状が強く出ることがありますが、薬物療法により多くの方が症状を安定させることができます。代表的な治療法は「抗精神病薬」による薬物療法です。症状が落ち着いた後も、再発のリスクは長期にわたって続くため、服薬を継続することが非常に重要になります。

統合失調症は、症状が安定した後でも再発するリスクが高く、特に「薬を自己判断で中断した場合」の再発率は、1年で約70%とも言われています。再発は症状が非常に強く出る場合が多く、入院治療が必要になることも珍しくありません。また、再発を繰り返すことで、脳の認知機能や思考力に影響を及ぼすことも指摘されています。さらには、社会生活への影響も深刻で、就労や人間関係の維持が困難になるケースもあります。こうした理由からも、再発予防のための服薬継続は非常に大切なのです。
「薬を飲み続けるだけなら簡単では?」と思われるかもしれません。しかし、実際には多くの方が以下のような理由で服薬を中断してしまうことがあります。
現代の抗精神病薬は、副作用が比較的軽減されたものも増えてきましたが、それでも以下のような症状が現れることがあります。
一方で、再発予防の効果は「目に見えない」ことが多いため、服薬による実感が得られにくく、つい中断したくなることもあるのです。
統合失調症では、自身が病気であるという認識(=病識)が乏しくなることが多くあります。これは、病気の特性として脳の認知機能に障害が生じることが原因で、自分の症状を正確に認識できない場合があるのです。また、「薬は毒」「症状が良くなったから治った」などの誤解や偏見も、服薬継続の障壁となります。
服薬を続けることは、自分が統合失調症であるという現実と向き合うことにもつながります。この現実に直面することで、「なぜ自分だけが」「これからどうなるのか」というような深い葛藤が湧き起こり、薬を手放したくなることもあります。特に、周囲からの偏見や将来に対する喪失感などが重なると、その苦しさはさらに増すことになります。

それでは、薬を続けていくためにはどのような工夫ができるのでしょうか。以下に、いくつかの対策をご紹介します。
副作用がつらい場合は、主治医に相談し、薬の種類や量を調整してもらうことが第一です。近年は副作用の少ない薬も増えているため、医師と一緒に自分に合った薬を探していくことが大切です。また、「薬の必要性」について深く理解することも重要です。服薬をやめた場合に再発し、どのような不利益があるかを具体的にイメージできるようにしておくと、継続への意識が高まります。
自分の状態を冷静に振り返る習慣をつけたり、身近な不調(不眠や不安など)と薬の効果を結びつけて考えることで、病識を補うことができる場合があります。また、日々の服薬を「習慣」として取り入れることも、有効な対策です。さらに、自分自身や他者の再発経験を振り返ることも、薬の必要性を再認識する助けになります。
服薬によって直面する現実に対しては、逆に「今だからできること」に目を向けることが、心の支えになります。たとえば、日々の生活でのちょっとした喜びや達成感を感じる瞬間を大切にすることで、服薬に対するネガティブな感情を和らげることができます。また、服薬をやめた場合に失う可能性のあること——人間関係、仕事、日常生活の安定——を改めて認識することも、服薬を続ける動機となるでしょう。
統合失調症の再発を防ぐうえで、最も重要なことは「薬を継続して服用すること」です。しかしながら、副作用、病識の欠如、そして病気や現実に向き合う苦しさといった多くの要因が、それを難しくしています。
だからこそ、自分の状態を理解し、医師と相談しながら、自分に合った薬を見つけ、心の中の葛藤に向き合うことが大切です。そして、日々の生活の中で小さな「良い瞬間」を見つけながら、少しずつ前を向いて歩んでいけたらと思います。