自閉症スペクトラム(ASD)の発症メカニズムと困りごとが発生する理由

ASDの原因は遺伝か?または遺伝子の変化か?

ASDの原因は遺伝か?または遺伝子の変化か?

自閉症スペクトラム(ASD)の基本的な理解

ASDの発症に関連する遺伝子は
非常に多く存在しますが、特定の変異や多型が単独でASDの発症を引き起こすことは非常に稀です。

■チェックポイント■
▶ ほとんどの遺伝子変異や多型には、それぞれ異なる発症リスクが存在します。

▶ 個人の遺伝子上の
すべての発症リスクを合算したものが、その人の
発症リスクを構成します。

自閉症スペクトラムの発症には
多数の遺伝子が関与していますが、これらの変異や
多型が単独で発症の原因となることは非常に稀です。

それぞれの遺伝子変異や多型には
異なる発症リスクがあり、個々の遺伝子に存在する
リスク要因を全て合計したものが、
その個人の発症リスクとなります。

多くの遺伝子が関与する遺伝形式

▶ 特定の疾患や形質が、複数の遺伝子の組み合わせによって決まる、または強く影響を受ける場合、
多因子遺伝と呼ばれます。

▶ 1種類の遺伝子によって決まる場合は、
ABO式血液型のように
明確に分けられる形質となりますが、
多因子遺伝では、身長や体重のように
境界が不明瞭な連続形式になることが多いです。

このように、複数の遺伝子が関わる遺伝形式は、
多因子遺伝と呼ばれます。

多因子遺伝は、疾患の発症だけでなく、
身長や体重、血圧などの多くにも影響を及ぼします。

ASDが、ASDでない状態と
明確に区別できない連続体(スペクトラム)の性質を
持つことは遺伝や遺伝子的な観点からも
示されています。

多因子遺伝は、疾患の発症だけでなく、
身長や体重、血圧など多くの面に影響を与えており、ASDが明確に境界を持たない連続体としての性質を
持つことが、遺伝子や遺伝の面からも
証明されています。

遺伝によらない新たな遺伝子変異、
いわゆるde novo変異は発生頻度が低いものの、
単独でも発症リスクが高く、知的障害や運動発達遅滞、てんかんなどの合併症に深く関わっていることが
示されています。

※遺伝によらない遺伝子の変化によって生じる
de novo変異は、発生頻度こそ低いものの、単独でも
発症リスクが高いことが知られています。
また、知的障害や運動発達遅滞、てんかんの合併などの機能低下にも深く関わっていることが示されています。

自閉症スペクトラムの原因について
共通の要因が存在する」と考えている方が
多いかもしれませんが、実際には、複数の遺伝子の
塩基配列の変化と環境要因の組み合わせが、神経細胞のネットワーク形成に影響を及ぼすと考えられています。

発症メカニズムは「個々に異なる」

発症メカニズムは「個々に異なる」

・ひとつの原因に起因するものではなく、
ASDの共通した特徴を持ちながらも
原因は個々に異なる」と考えられています。

・原因は、複数の遺伝子の塩基配列の変化と環境要因の組み合わせによる
→神経細胞ネットワークの形成に影響を及ぼす

■DNA上には4種類の塩基が直鎖状に並んでおり、
その並びを塩基配列と呼びます。

■塩基配列が遺伝情報として機能しています。

■細胞分裂の際にDNAが複製される過程で、
この塩基配列に誤りが生じると、
遺伝子変異や遺伝子多型が発生します。

ある遺伝子の特定の塩基配列の変化が1%未満の場合「遺伝子異変」と呼ばれ、
1%以上の場合「遺伝子多型」と呼ばれます。

・遺伝子変化の頻度が低い場合
→その変化は世代を超えて維持されにくい

・遺伝子変化の頻度が高い場合
→その変化は維持されやすい

その結果、ASDとして共通する行動特徴が
現れることがあると考えられます。

※発症に関与する遺伝子は非常に多く、
500から1000以上、またはそれ以上の遺伝子が
関わっているとされています。

塩基配列とは、
DNA上に4種類の塩基が直線上に並んでいることを
指します。
この塩基配列が遺伝情報として機能しています。

細胞分裂の際にDNAが複製されますが、
この過程で塩基配列に誤りが生じると、遺伝子変異や
遺伝子多型が発生します。

ある遺伝子の特定の塩基配列の変化が
1%未満の場合には、その変化を「遺伝子変異」と
呼び、1%以上の場合は「遺伝子多型」と呼びます。

遺伝子変化の頻度が低い場合、
その変化は世代を超えて維持されにくく、
頻度が高い場合はその変化が維持されやすくなります。

繰り返しますが、
複数の遺伝子の塩基配列の変化と環境要因が
組み合わさり、神経細胞ネットワークの形成に影響を
与えることで、結果的に自閉症スペクトラムとして
共通する行動の特徴が現れると考えられています。

発症に関与する遺伝子の数は非常に多く、
500から1000以上、またはそれ以上の遺伝子が
関わっているとされています。

多様な遺伝子変化の組み合わせと環境要因が、
脳の発達に一定の影響を与えることで、
自閉症スペクトラムとして共通性のある特性が生じると考えられています。

「環境要因」は発症に影響を与えるのか?

「環境要因」は発症に影響を与えるのか?


自閉症スペクトラムの発症に関連する
環境要因については、これまで多くの研究が
行われてきましたが、発症に関連する可能性のある
要因がいくつか見つかっているものの、
環境要因によって発症メカニズムの大部分を説明できる決定的な要因は未だに見つかっていません。
近年、この課題に対して
注目すべき研究成果が報告されました。
それは、1998年から2007年の間に
スウェーデンで生まれたすべての子供と、
その家族・親戚(いとこまで)を追跡調査し、
遺伝的要因と環境要因の影響を再検討したものです。
この研究によると、自閉症スペクトラムの発症は主に
遺伝的および非遺伝的な遺伝子変異によって説明できるとされ、子宮内環境が僅かに影響を与える可能性は
あるものの、その他の環境要因の影響は
ほとんど見られませんでした。
これらの結果から、
自閉症スペクトラムの発症メカニズムは主に
遺伝的および非遺伝的な遺伝子変化によって説明でき、環境要因が発症に関与しているとしても、
その影響は非常に限定的である可能性があります。
現時点では、環境が原因であると結論を下すことは
困難であり、今後の研究が必要です。

将来的に、明確な結論が得られることを期待します。

自閉症スペクトラムとはどのような障害か?

自閉症スペクトラムとはどのような障害か?


対人関係(社会性)の特性
コミュニケーションの特性
想像力の特性

興味や関心が限定される/特定の行動を繰り返す

自閉症スペクトラムは、発達障害の一つであり、
主な特性には
「対人関係・社会性の特性」
「コミュニケーションの特性」
興味や関心が限定され、特定の行動を繰り返すといった「想像力の特性」の3つがあります。

自閉症やアスペルガー症候群など、
以前は広汎性発達障害と呼ばれていたグループが、
現在では自閉症スペクトラムに含まれています。
2013年にアメリカ精神医学会の診断基準(DSM)が
第IV-TR版から第5版に改訂された際、
アスペルガー症候群という分類が廃止され、
従来の自閉症も含めて自閉症スペクトラムとして
統一されました。
ただし、この定義はアメリカ精神医学会の診断基準に
基づくものであり、他国の対応はさまざまです。
イギリスでは、現在でも多くの機関で
アスペルガー症候群という診断名が使用されています。
日本では、厚生労働省が採用しているICD-10というWHOの診断基準に基づき、ICD-10では
アスペルガー症候群という用語が使われています。

特性の強さや困りごとは人によって異なる

特性の強さや困りごとは人によって異なる


自閉症スペクトラムは、その特性の強さや現れ方、そしてそれに伴う困りごとが一人ひとり異なることが特徴です。そのため、どのような対処法がその人に適しているかも一人ひとり異なります。
自身で試せる工夫もあれば、医療機関や専門機関に相談して支援やサポートを受け、一緒に対処法を見つけていくことも可能です。

「環境との相互作用」で困りごとが発生する


自閉症スペクトラムの原因については、
現在も研究が進められているものの、特定の原因は
明らかになっていません。
しかし、一部の研究では自閉症スペクトラムの原因が
先天的な脳機能障害にあるという説も
提唱されています。
多くの関連遺伝子が発見されており、それに起因する
脳機能の偏りが行動や考え方の特性を引き起こすと
考えられています。
このような特性と環境が相互に作用することで、
こだわりが強まったり、人とのコミュニケーションが
困難になるなどの問題が生じることがあります。

ASDの困りごとを軽減するための対処法


自閉症スペクトラムの根本的な治療法は
まだ開発されていませんが、特性から生じる症状や
困りごとを軽減するための対処法は存在します。

これまでの動画では、
TEACCHの構造化やPECSなどを紹介してきましたが、
それらに共通するポイントは、自閉症スペクトラムの
特性に基づいた“環境調整”です。

自閉症スペクトラムのある人にとって、
どの世代でも有効なのがこの環境調整です。

環境調整とは、
その人の特性に合わせて物理的な工夫や周囲の協力を
行い、家庭や職場、地域社会での困りごとを最小限に
抑えるために環境を整えることを指します。

自閉症スペクトラムのある人への
環境調整のポイントとして、
「視覚的にわかりやすくする」
「見通しを持ちやすくする」
「苦手な刺激を減らす」
などがあります。

これにより、
困りごとが発生しにくいように環境を整えます。

しかし、
自分一人で環境の調整が難しい場合もあります。

その際は、身近な人や職場の人たちに
協力をお願いしたり、医師や心理士などの専門家に
相談してアドバイスをもらうことも一つの方法です。

対人関係とコミュニケーションの困りごと


自閉症スペクトラムのある人の中には、
コミュニケーションや人間関係が苦手で、それが
私生活や仕事に影響を与える人もいます。

人間関係やコミュニケーションのルールは
一人ひとり異なるため、まずは自身の状況を整理し、
そのうえで自分の特性や状況に合わせた環境調整が
必要です。

さらに、
自分の人間関係やコミュニケーションに関する考え方や行動のパターンを整えるために
認知行動療法」や、
ロールプレイで望ましいふるまいを学ぶ
ソーシャルスキルトレーニング」などを通じて
改善方法を探ります。

主な対人関係やコミュニケーションでの困りごととしては、次のようなものがあります。

● 話が止まらず、長時間話し続けてしまう
● 頻繁に確認しすぎて、
「どうして何度も聞くのか」と言われる
● 話しているときに相手の目を見るのが苦手
● 口頭での指示を理解する際にズレが生じる

具体的な困りごとが発生した場合は、
どうすればうまくいくかを考え、無理のない範囲で
できる小さな工夫から始めます。

例えば、

● 相手の目ではなく、首元あたりを見るようにする
● メモを取ることで、何度も聞かずに済むようにする
● メールやチャットなど、文字でのやり取りを増やし、口頭でのやり取りを減らす

このように、自分に合った対処法をいくつか考え、練習を重ねることで、成功体験を積み重ねると不安も徐々に軽減されていきます。

周囲の人に特性や苦手を伝えて理解してもらう

周囲の人に特性や苦手を伝えて理解してもらう


自分の特性や苦手なことを周囲の人に伝え、
協力を依頼することも重要です。

特に、自閉症スペクトラムの特性は、他人に
「変わった人」や「コミュニケーションが取りづらい」といった印象を与えることがあるため、
正しく理解してもらうことが大切です。

例えば、

「具体的な指示をいただけると理解にズレがなく、
仕事が進めやすいです」

「あやふやだと不安なので、
こまめに確認させてください」

「話が長引いていることに気づきにくいので、
遠慮なく声をかけてください」

など、周囲の人に協力を依頼することが効果的です。

自閉症スペクトラムのある人は、
決まった手順を守ることが得意な一方で、
変化が苦手な場合があります。

もし、その特性が困りごとにつながっている場合は、環境を調整したり、考え方や行動のパターンを見直し、うまくいく方法を練習することが重要です。

変化によって強い不安やパニックが生じる場合は、医師に相談することも検討してください。