現代社会において、「自律神経失調症」「うつ病」「パニック障害」といった言葉を
耳にする機会が増えています。
いずれもストレスや精神的な負荷と関係する疾患・状態として知られていますが
その違いについて明確に理解している人は少ないかもしれません。
今回は、それぞれの違いについて詳しく解説しながら
「自律神経失調症」という診断がどのように位置づけられているのかを考えていきます。

自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ
体のさまざまな部位に不調が現れる状態を指します。
頭痛、動悸、めまい、胃の不快感、便秘や下痢など、多岐にわたる身体症状が特徴です。
しかしながら、「自律神経失調症」というのは正式な医学的診断名ではありません。
国際的な診断基準であるDSMやICDには記載がなく
日本独自の概念として広く知られているものです。
日本心身医学会では、自律神経失調症を次のように定義しています。
種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず
かつ顕著な精神障害のないもの
つまり、次の3点を満たす場合に「自律神経失調症」とされます。
ここで重要なのは、「病気」ではなく「状態」であるという点です。
そのため、後になってうつ病やパニック障害と診断が変更されることもあります。
うつ病は、精神的なエネルギーが著しく低下し、日常生活に支障をきたす精神疾患です。
自律神経失調症と症状が似ているため、混同されることもありますが
うつ病には明確な診断基準が存在します。
次のうち①または②のいずれかを含む5つ以上の症状が
2週間以上続くことが診断の条件となります。
うつ病の患者にも自律神経症状(便秘、頭痛、めまいなど)は頻繁にみられますが
これはうつ病に伴う身体症状として扱われます。
したがって、うつ病の診断がつく場合には、「自律神経失調症」という診断名は用いません。

パニック障害は、「突然の強い不安や恐怖(パニック発作)」が繰り返し起こる疾患です。
発作時には、自律神経症状も一気に現れます。
パニック発作で見られる主な症状
パニック障害は精神的な不安が根底にあり、その結果として自律神経症状が現れます。
したがって、発作の有無や不安の強さが「自律神経失調症」との違いといえるでしょう。
パニック障害と診断されている場合、これもやはり「自律神経失調症」とは診断されません。
自律神経失調症と診断されるのは、以下のようなケースが多くみられます。
特に3つ目のケースでは、会社に提出する診断書などに精神疾患名を記載することによって
職場での不利益や偏見を招くことを防ぐために、「自律神経失調症」という言葉が
使われることがあります。
これは、診断の印象をやわらげ、患者の社会的立場を守るための配慮です。
自律神経失調症は、正式な病名ではなく
自律神経のバランスが崩れた「状態」を指しています。
うつ病やパニック障害との違いは、それぞれに明確な診断基準が存在するかどうか
精神的症状の有無や重さにあります。
自律神経失調症と診断された場合は、その後の経過や症状の変化を丁寧に見ていくことが大切です。
最初は状態を表す仮の診断名であっても、適切な診断と治療がなされることで
根本的な問題の解決につながることも少なくありません。
もし、慢性的な身体の不調が続いているにもかかわらず原因がわからない場合は
精神的な側面も含めたアプローチを検討してみることをおすすめします。