パニック障害の原因とは?

はじめに:パニック障害とは何か?

パニック障害とは、突然、激しい不安や恐怖を感じる

「パニック発作」が繰り返される精神疾患です。

発作時には、動悸、息苦しさ、めまい、発汗、胸の痛み、死の恐怖などの症状が現れ

日常生活に大きな支障をきたします。

発作そのものに加えて、「また発作が起こるのではないか」という予期不安や

それを避けるために行動を制限する「回避行動」が見られるのも特徴です。

日本では100人に1人ほどが罹患するとされており、珍しい病気ではありません。

しかしその原因については、まだ完全には解明されていません。

本記事では、パニック障害の発症に関わるとされる遺伝的要因環境的要因の両面から

そのメカニズムに迫ります。


遺伝的要因とは?

パニック障害には、ある程度の遺伝的素因があると考えられています。

これは、家族内に同様の精神疾患を持つ人がいる場合

発症リスクが高まることから明らかになってきました。

家族性の研究

実際、パニック障害の患者の親や兄弟姉妹に

同じくパニック障害や不安障害を持つ人がいる確率は

一般の人に比べて約4〜7倍高いという報告があります。

また、双子を対象にした研究でも、一卵性双生児(遺伝情報が完全に一致)において

片方が発症するともう片方も発症する確率が高いことが示されています。

関連遺伝子の研究

さらに近年では、特定の遺伝子がパニック障害の発症に関与している可能性が研究されています。

特に注目されているのは、セロトニンノルアドレナリンといった神経伝達物質の調整に関与する

遺伝子です。

これらの神経伝達物質は、脳の「不安」や「恐怖」の処理に深く関わっており

その働きに異常があると、過剰にストレスに反応しやすくなると考えられています。

ただし、これらの遺伝子の影響はあくまで「発症しやすくなる素因」であり

遺伝だけで必ずしも発症するわけではありません。


環境的要因とは?

環境的要因とは?

一方、環境的要因もパニック障害の発症に大きな影響を及ぼします。

特に、ストレスフルな出来事や生活習慣性格傾向が発症の引き金になることがあります。

ストレスやトラウマ

パニック障害の発症のきっかけとして多く挙げられるのが

「強いストレス」や「心的外傷(トラウマ)」です。

たとえば、次のような出来事が発症の契機となることがあります。

  • 身近な人の死
  • 離婚や失恋
  • 仕事上の大きな失敗やプレッシャー
  • 災害や事故の被災体験

このような経験は、脳の恐怖反応を司る「扁桃体(へんとうたい)」の過敏化を引き起こし

不安や恐怖を過剰に感じやすくなると考えられています。

性格傾向と育ちの環境

性格傾向と育ちの環境

パニック障害の発症には、個人の性格傾向も関与するとされています。

たとえば、以下のような性格の人は発症リスクがやや高い傾向にあるといわれます。

  • 完璧主義
  • 責任感が強い
  • 周囲の目を気にしやすい
  • 不安を感じやすい

また、幼少期に過度に保護的・支配的な育てられ方をされた場合

自分で不安に対処する力が育ちにくく

将来的にストレス耐性が弱くなる可能性も示唆されています。


遺伝と環境の相互作用

ここまで「遺伝」と「環境」を別々に見てきましたが

実際にはこの2つは相互に影響し合っています。

遺伝的に不安を感じやすい体質を持っていたとしても

安定した環境でストレスの少ない生活をしていれば発症しないこともあります。

逆に、遺伝的素因がなくても

極度のストレスにさらされ続ければパニック障害を発症することはありえます。

つまり、パニック障害は「生まれつき」と「育ちや環境」の両方が絡み合って発症する

多因子性の疾患だといえるでしょう。


おわりに:原因を知ることの意味

パニック障害は、決して「弱い人がなる病気」ではありません。

遺伝や環境、脳の仕組みなど、さまざまな要因が複雑に関係していることが分かってきています。

原因を知ることで、自分を責めずに受け入れ、適切な治療を受ける一歩を踏み出すことができます。

現在は、薬物療法や認知行動療法など、効果的な治療法も確立されています。

パニック障害に悩む方が

自分の心の仕組みに理解を深め、前向きに回復を目指していけるよう願っています。