双極性障害はすぐに診断できるのか?――実際には難しいことも多い理由とは

「双極性障害(躁うつ病)はすぐに診断できますか?」というご質問に対し、結論から言えば「典型的なケースでは可能なこともあるが、実際には診断が難しく、時間がかかることも多い」と言えます。本記事では、双極性障害の診断の難しさやその背景、そして他の疾患との違いについて丁寧に解説していきます。
双極性障害と早期診断の重要性

双極性障害は「うつ状態」と「躁状態」という、対照的な気分の波を繰り返す精神疾患です。この疾患は本人だけでなく、周囲の人々にも大きな影響を及ぼすことが多いものです。たとえば、うつ状態では日常生活が困難になる一方で、躁状態では過活動や浪費、衝動的な行動によってトラブルが起きやすくなります。
しかし、適切に診断され、気分安定薬などの治療が行われれば、症状の改善が大いに期待できます。そのため、早期に診断し、早期に治療を始めることがとても重要になります。
診断が比較的つきやすいケース

双極性障害の診断では、特に「躁状態」が確認できるかどうかが鍵となります。以下のような場合は比較的早く診断が確定することがあります。
1. 明らかな躁状態がある場合
例えば、以下のような症状があると診断は早く進む傾向にあります。
2. 気分の波が周期的で明確な場合
「数ヶ月ごとに気分の波がある」「ある時期は非常に活動的、別の時期にはひどく落ち込む」など、周期的なパターンが明確な場合も診断がしやすくなります。
3. 周囲が気づくほどの変化がある場合
家族や同僚から見て「まるで別人のようだ」と感じるような時期が交互に現れる場合も、双極性障害が疑われやすくなります。
実際には診断が難しいことが多い理由

一方で、現実には診断に時間がかかることも少なくありません。特に、以下のような状況では診断が難航します。
1. うつ病との区別が難しい
双極性障害の多くは、まず「うつ状態」として医療機関にかかります。そのため、うつ病と誤診されるケースが非常に多いのです。特に以下のような場合、診断が難しくなります。
こうした場合は、まず「うつ病」として治療を開始し、治療経過を見ながら、途中で躁の兆しが現れた場合に双極性障害を再検討するというプロセスが一般的になります。
他の精神疾患との区別がつきにくいケース

双極性障害と似たような気分変動を示す他の精神疾患も存在します。以下の疾患との鑑別もまた、診断を難しくする要因です。
1. ADHD(注意欠如・多動症)
ADHDではストレスや環境変化に敏感に反応し、気分の波が生じることがあります。双極性障害との違いは、気分の波が「持続するかどうか」「周期性があるか」などですが、両者が併存することもあり、診断が難しいケースも少なくありません。
2. 境界性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害でも、対人関係の不安定さやストレスによって激しい気分の変動が見られます。双極性障害との鑑別には、気分の波の持続期間や、衝動的な行動の背景にある思考パターンなどを慎重に見ていく必要があります。
3. 統合失調症
双極性障害でも、躁やうつが強い場合には幻聴や妄想などの精神病症状が現れることがあります。このような症状が統合失調症に似ているため、特にⅠ型双極性障害では誤診されることもあります。ただし、軽い躁うつ状態の時に幻覚があるかどうかなどを見極めることで、区別が可能なこともあります。
診断が難しいときの実際の対処法

診断が確定しない場合でも、治療は止まりません。一般的には以下のようなステップで対応します。
このように、診断がつくまでには時間がかかる場合があり、治療と観察を並行して行う必要があるのです。
まとめ:早期診断が理想、でも時間をかけた見極めも大切
双極性障害は、症状の影響が非常に大きく、正しく診断されれば有効な治療手段もあります。そのため、早期診断が強く望まれます。
しかし、実際の診断は簡単ではなく、特にうつ病や他の精神疾患との鑑別が困難なケースが多く見られます。典型的な躁状態が確認できれば診断は容易ですが、軽躁が短かったり非典型的であったりすると、診断まで時間を要することがあるのです。
焦らず、医師と連携しながら、慎重に見極めていく姿勢が大切だと言えるでしょう。