HSP(Highly Sensitive Person)は、「非常に敏感な人」という意味で、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した概念です。HSPは正式な医学的診断名ではなく、心理的な特性を示す言葉ですが、その特徴ゆえに精神的な不調を感じやすい傾向があり、精神科での相談が増えています。
本記事では、HSPの特徴と精神医学的な診断の関係、HSPが抱える困りごと、それらに対してどのような医療的対応がなされるかを詳しく解説します。
HSPの人には以下のような特徴があります。
• 感覚刺激に敏感(光や音、匂いなど)
• 人の感情に影響されやすい
• 深く物事を考える傾向がある
• 過度に刺激を受けると疲れやすい
アーロン博士はこのような気質が人口の15〜20%程度に見られるとし、病気というよりもむしろ「人間の個性」としています。しかし、この敏感さが強いストレスの要因となり、生活に支障が出ることもしばしばあります。
結論から言うと、「HSP」は精神医学上の正式な診断名ではありません。日本の診断基準(DSM-5やICD-10)にもHSPという記載はなく、精神科医がこの名称で診断書を書くことは基本的にありません。
しかし、HSPのような繊細さや敏感さを抱える方が精神科を訪れる際、多くの場合、以下のいずれかの診断名が下されます。

日常の些細なことにも過度な不安を抱きやすく、慢性的に緊張状態が続く障害です。HSPの「常に緊張している」「気が休まらない」という特徴と重なります。
人前で過度に緊張したり、人の評価が極端に気になる状態です。HSPの「人の目を気にしすぎる」「批判に弱い」といった傾向が当てはまります。
突然の不安発作により、動悸、息苦しさ、めまいなどの身体症状が出る障害です。HSPの方は過覚醒の傾向があるため、身体の変化に過敏に反応しやすく、発作が誘発されることもあります。

「不安神経症」は日本で以前から使われてきた診断名で、現在では「全般性不安障害」に該当します。生まれつき不安が強い人に多く見られ、HSPとの重なりが深い概念です。
不安神経症の特徴:
• 些細なことが気になって仕方がない
• 体の症状(胃痛、動悸、不眠など)を伴う
• 漠然とした不安が持続する
これらはHSPの人が感じやすい困りごとと非常に似ています。

HSPと混同されやすいのが発達障害、特に自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)です。
ASDには「感覚過敏」がしばしば見られます。音、光、触感に対する敏感さがHSPと似ています。特に「受動型ASD」の人は、自分の特性を抑えて適応しようとするため、HSPのように見えることがあります。
ADHDの衝動性や過敏さも、外部刺激への敏感さという点ではHSPと似ています。しかし、ADHDでは注意力の散漫さや多動性も目立ちます。両者の違いを見極めるには、詳細な問診や心理検査が必要です。
HSPは「特性」であり、「症状」ではないため、精神科の診断基準には含まれていません。そのため、本人がHSPだと思っていても、実際には不安障害や発達障害の診断がつくケースが多いのです。
また、HSPの特性が精神疾患の発症リスクを高めるともいわれており、精神的ケアや治療の対象となることもあります。

HSP的な傾向を持つ方に対して、精神科では以下のような治療法が検討されます。
• 不安障害やうつ症状が強い場合、抗うつ薬(SSRI)や抗不安薬が処方されます。
• パニック発作があれば、頓服の抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)も使用されることがあります。
• 認知行動療法(CBT)は、不安や過敏さに対する考え方を見直し、対処スキルを学ぶ治療法です。
• マインドフルネス療法もHSPのような刺激過多に悩む人に効果があるとされています。
• 感覚過敏に対応するために、静かな環境で働く、休息時間を多く取るなど、生活環境の調整が推奨されます。
• 家族や職場の理解も治療効果を高める重要な要素です。
医療的アプローチと併せて、自分自身の特性に合った生活を設計することが大切です。
• 刺激を減らす(イヤーマフ、サングラスの活用など)
• 自己肯定感を高める言葉を日々意識する
• 自分に合う休み方を知る(自然に触れる、静かな場所に行くなど)
• 信頼できる人との対話で安心感を得る
HSPであることを否定するのではなく、「自分らしさ」として受け入れることが、心の安定への第一歩です。
• HSPは精神医学の診断名ではありません。精神科では不安障害や発達障害と診断されることが多いです。
• HSP的な特徴が日常生活に支障をきたす場合、医療的支援が役立ちます。
• 精神療法や環境調整によって、より生きやすくなる方法があります。
• 自分の特性を理解し、過剰適応せずにバランスの取れた生活を目指すことが重要です。