不安障害の主な原因3つ

はじめに

「不安障害」とは、強い不安や緊張が長く続き、それが日常生活に大きな影響を及ぼす精神疾患の総称です。単なる心配性とは異なり、本人にとっては非常につらく、回避行動が重なることで、生活範囲が狭まり、悪循環に陥ることも少なくありません。

主な不安障害の種類

不安障害にはいくつかのタイプがあり、以下のように分類されます。

  • 社会不安障害(SAD):人前で話す、注目される場面などに強い不安を感じる。悪化すると外出自体が難しくなり、引きこもりがちになることも。
  • パニック障害:突然の動悸や息苦しさなど「パニック発作」が繰り返される。不安が先立ち、発作を避けるために行動制限が増していく。
  • 全般性不安障害(GAD):特定の対象に限らず、日常のあらゆることに対して過剰な不安を抱く。軽症であっても慢性化しやすい。
  • 強迫性障害(OCD):不快な考え(強迫観念)が頭から離れず、それを打ち消すための確認行為(手洗い・鍵の確認など)がやめられない。

不安障害の治療法

不安障害の標準的な治療は、「抗うつ薬(SSRI)」「脱感作(苦手な場面への段階的な慣れ)」の併用です。まずは薬で不安の強度を抑え、それと並行して、徐々に不安を引き起こす場面へ慣らしていくという方法がとられます。

不安障害の主な原因3つ

では、この不安障害はなぜ起こるのでしょうか? 実は診断基準上、「原因」は明確に定義されていません。しかし、臨床現場では大きく分けて3つのパターンが原因として想定されることが多く、原因によって治療や対応の重点が異なってくることがあります。

1.生まれつきの特性としての不安

まず一つ目の原因は、「生まれつき不安を感じやすい性質がある」ということです。

人の性格や気質には個人差があります。中には、幼少期から人見知りが強かったり、物事を深く考え込みやすかったりするタイプの方がいます。こうした気質を持つ人は、大人になっても不安を感じやすい傾向が続くことがあります。

不安神経症とHSP

かつては「不安神経症」と呼ばれていた状態が、こうした特性に近いとされています。また、近年話題の「HSP(Highly Sensitive Person/非常に敏感な人)」も、生まれつきの気質によって、不安を感じやすくなる代表的な例です。

対策:環境調整と脱感作

このタイプの不安障害には、無理のない環境を整える「環境調整」が基本となります。たとえば刺激の少ない職場や、落ち着いた生活リズムを保てるよう工夫します。また、薬の効果も期待できることがあり、脱感作によって少しずつ不安を減らしていくことが可能です。

2.嫌な出来事による心のダメージ

次に挙げられる原因は、「心理的なストレスが引き金となって不安障害が発症するケース」です。

これは、いわゆる「トラウマ」や「苦い経験」のようなものが背景にある状態です。

ストレスとなる出来事の例

  • 人前で失敗して強い恥をかいた
  • 職場や学校での人間関係がこじれた
  • 転勤・引越し・就職などの環境の大きな変化

こうした経験のあと、不安な気持ちが慢性化し、「またあの時のようなことが起きたらどうしよう」と思うようになります。そして不安な場面を避けるようになることで、かえって不安は強まっていくのです。

対策:脱感作による「上書き」

このタイプでは、「出来事そのものを忘れる」ことは困難です。しかし、「新しい良い経験」で記憶を“上書き”することは可能です。苦手な場面を避けず、少しずつ経験していくことで、「思ったほど怖くなかった」「大丈夫だった」という安心感を積み重ねていくのがポイントです。

3.脳の働きの乱れによるもの

三つ目の原因は、「脳内の神経伝達物質のバランスの乱れ」が関与するケースです。

特に、セロトニンという物質が不足している場合に、理由もなく強い不安が湧き上がってきたり、抑うつ症状を併発したりすることがあります。これは、うつ病と非常に似たメカニズムです。

特徴的な症状

  • 特にきっかけがないのに強い不安が続く
  • 不安に加えて気分の落ち込みや意欲の低下がある
  • 体調不良(食欲低下、眠れないなど)が続く

対策:薬物療法を中心に

このタイプの不安障害には、脳内のセロトニンを増やす抗うつ薬の効果が期待されます。薬が効いてくることで、気分や不安が改善されることが多く、その後に脱感作などの治療を取り入れていくことで、より安定した状態を保てるようになります。

あわせて、生活全体の土台を整える「ストレス管理」「十分な休養」も大切なポイントです。

まとめ:不安の背景を知り、適切な対処を

不安障害は、「ただの心配性」「気の持ちよう」などと軽く見られがちですが、実際には生活の質を大きく下げる深刻な疾患です。不安の背景には、以下の3つの原因が考えられます。

  1. 生まれながらの気質
  2. 嫌な出来事によるストレス
  3. 脳の不調による影響

治療としては、抗うつ薬(SSRI)と脱感作が基本となりますが、原因によって重視すべきポイントが異なります。ご自身の状態や背景を冷静に見つめることで、より適切な対処が見えてくるはずです。

「どうしてこんなに不安になるのだろう…」と感じたら、それは自分を責めるサインではなく、「心の助けが必要ですよ」というサインかもしれません。一人で抱え込まず、専門家に相談することも、回復への大切な一歩です。