ASDの昼休みの過ごし方3つ

 職場での昼休みはリフレッシュし、午後の業務に備える大切な時間ですが、ASD(自閉スペクトラム症)の方にとっては、むしろストレスや疲労を増す時間になってしまうことがあります。

 特に、「対人関係が苦手」「雑談が苦手」「オンとオフの切り替えがうまくいかない」といったASDの特性が、自由度の高い昼休みにおいて顕著に表れやすく、「昼休みがうまく過ごせない」という悩みに繋がります。

 この記事では、ASDの特性を踏まえた上で、無理なく実践できる昼休みの過ごし方を3つ紹介し、ストレス軽減や快適な職場生活へのヒントをご提供します。


ASDの方が昼休みを苦手とする理由とは?

ASDの方が昼休みを苦手とする理由とは?

まずは、なぜASDの方が昼休みに苦手意識を持ちやすいのか、その背景を確認してみましょう。

1.雑談という「目的が不明確な会話」

 ASDの方の多くは、目的が明確なコミュニケーション(例えば仕事の報告・相談など)には問題がない一方で、目的が曖昧な「雑談」を苦手とします。
 昼休みはまさにこの「雑談」が主なコミュニケーションとなる時間です。話の切り出し方、相手の反応の読み取り、話題の切り替えなど、曖昧さの多い雑談は精神的な負担になりやすく、時には「話に入れない」「浮いてしまう」といった疎外感にも繋がってしまいます。

2.枠組みが不明確

 仕事中は、タスクや役割が明確に与えられ、行動のルールもある程度決まっています。しかし昼休みになると、一気に自由度が高まり、「何をすればいいのかわからない」と困惑する方も少なくありません。
 このような曖昧な時間は、ASDの特性上、不安や緊張を呼びやすく、休憩であるはずの時間がむしろストレスの要因になってしまいます。

3.オン・オフの切り替えが苦手

 ASDの方には、集中力が高く一つのことに没頭しやすい反面、気持ちや行動を「切り替える」ことが苦手という特性があります。
 昼休みに仕事モードを切り替えてリラックスすることが難しい、あるいは休憩モードから再び仕事モードに戻ることが苦痛に感じられる、という問題に直面しやすいのです。


ASDの方におすすめの昼休みの過ごし方3つ

こうした課題を踏まえた上で、ASDの方にとって有効な昼休みの過ごし方を3つ紹介します。

1.あえて「一人で過ごす」ことを選択肢に入れる

 雑談に無理に参加することは、疲労の原因になり、かえって午後の仕事に悪影響を及ぼすことがあります。
 そのため、あえて一人で過ごす時間を選ぶのも、非常に有効な対処法です。スマホで動画を観たり、音楽を聴いたり、読書をしたり、軽く散歩に出るのもよいでしょう。

 「職場で孤立してしまうのでは?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、職場はあくまで仕事の場です。昼休みに雑談に参加しないからといって、仕事に支障が出るわけではありませんし、むしろ仕事での貢献が信頼に繋がります。

職場への伝え方の例:
 「集中して働くために、昼休みは一人でリラックスしたいと思っています」と、素直に伝えてみるのもひとつの方法です。特に障害をオープンにしている場合には、採用面接時や面談時に伝えておくと良いでしょう。


2.「切り替えて休む」意識を持つ

 ASDの方にとって、切り替えの苦手さは大きなハードルですが、意識的な切り替えを習慣にすることで、徐々に改善が見られる場合もあります。
 例えば、「昼休みに入ったらまず深呼吸を3回して、気持ちを休憩モードにする」「昼食後は必ず好きな音楽を聴く」といった、ルーティンを設定するとスムーズにオフモードへ移行しやすくなります。
 また、「午後の仕事に備えるために、今は意識的に休む」と自分に言い聞かせることで、罪悪感を減らしつつ休養を正当化することができます。


3.「やることを決めておく」

3.「やることを決めておく」

 昼休みに「何をしていいかわからない」と感じる場合は、あらかじめ昼休みの過ごし方を決めておくのがおすすめです。

たとえば:
 • 月曜は読書
 • 火曜は散歩
 • 水曜はスマホで趣味の動画
 • 木曜は軽いストレッチ
 • 金曜は昼寝(タイマー設定)

 このようにあらかじめルールを決めておけば、「今日は何をすればいいんだろう」と悩む時間が減り、より効率的に休憩を取ることができます。
 さらに、休み明けに仕事に戻るときも、ルーティンの終了に合わせて「切り替える」ことでスムーズに再スタートを切ることができます。


実際の工夫例:あるASD当事者の取り組み

 ある30代の男性会社員は、自分がASDであると診断された後、昼休みに強いストレスを感じていました。最初は雑談に参加しようと努力していましたが、終始気を遣い、午後にはぐったりしてしまう日々が続いたといいます。

そこで、彼は昼休みの過ごし方を根本から見直し、以下のような取り組みを始めました:
 • 昼食はコンビニで購入し、自席でイヤホンをつけて静かに食べる
 • その後10分間の音楽鑑賞と軽いストレッチを習慣化
 • 残りの時間で「その日のToDoリストの確認」を行う

 これにより、午後の仕事の集中力が飛躍的に高まり、疲れにくくなったと実感したそうです。周囲との雑談は、必要な業務連絡の中で関係を築くことで十分カバーできたと話しています。


まとめ:自分に合った「昼休みスタイル」を見つけよう

 ASDの方にとって、昼休みは単なる休憩時間ではなく、日々のストレスや疲労を大きく左右する重要な時間です。無理に周囲に合わせることなく、自分にとって最もリラックスできる方法を選択することが、職場での安定や満足感にも繋がります。

以下の3つのポイントを意識してみましょう。
 • 一人で過ごす:雑談よりもリラックスを優先
 • 切り替えて休む:意識的なオフモードの切り替えを習慣に
 • やることを決めておく:曖昧な時間にルールを設けることで安心感を得る

 そして何より、自分を追い込みすぎないこと。昼休みは「自分を守るための時間」と捉え、自分なりの休み方を見つけていきましょう。