「気分の浮き沈みが激しいのですが、これは双極性障害でしょうか?」
メンタルクリニックには、このようなご相談を多くいただきます。日常生活の中で感情の波があることは珍しくありませんが、それが頻繁に、あるいは急激に起こる場合、不安を感じる方も多いことでしょう。
今回は、この「気分の浮き沈みが激しい」という症状が、実際に双極性障害なのか、それとも他の原因によるものなのかについて、詳しく見ていきたいと思います。
結論から申し上げますと、「気分の浮き沈みが激しい=双極性障害」とは限りません。確かに、双極性障害(躁うつ病)では気分の波が特徴的ですが、同様の症状を示す他の疾患や心理的な反応も存在します。
実際、病院(精神科の入院施設をもつような場所)では、気分の波があると双極性障害が疑われることが多い傾向にあります。しかし、より身近なクリニック(診療所)レベルでは、違う背景や原因によって気分の波が生じているケースが多く見受けられます。
双極性障害に見られる気分の波は、以下のような特徴を持つことが一般的です。
このような特徴が揃っている場合は、双極性障害が強く疑われます。
一方で、以下のような場合は、双極性障害以外の原因である可能性が高いと考えられます。
ただし、これらに当てはまるからといって、必ずしも双極性障害でないとは言い切れません。精神疾患の診断はとても繊細で、複数の視点から判断する必要があります。
双極性障害と似たような気分変動を伴う疾患はいくつかあります。以下に代表的なものをご紹介します。
ADHDの方は衝動性が強く、ストレスに敏感な傾向があります。そのため、数時間単位で気分が動くことがあります。また、集中力の波もあるため、自分で感情をコントロールしにくいと感じることが少なくありません。
加えて、ADHDと双極性障害を合併している方も一定数存在するため、慎重な評価が必要です。

生理周期に関連して気分の落ち込みやイライラなどが強く現れる場合、PMSやPMDDが疑われます。特にPMDDは精神的症状が非常に強く、うつ病や双極性障害と見分けがつきにくいケースもあります。
基本的には落ち込みの方が目立ちますが、人によっては怒りっぽくなる、活動的になるなど、躁状態に似た症状を呈する場合もあります。
感情のコントロールが困難で、人間関係におけるストレスや不安から気分が大きく変わることが特徴です。数時間~数日で気分が大きく揺れるため、双極性障害と誤認されることもあります。
見分けが難しいこともありますが、感情の持続時間やストレスとの関連性を慎重に見ていくことが重要です。
非定型うつ病は、通常のうつ病とは異なり、気分の変動が大きいのが特徴です。人と話しているときは明るく振る舞えるものの、一人になると落ち込むなど、状況によって気分が変わることがあります。
イライラや過眠、過食などの症状を伴うこともあり、双極性障害と似た印象を持たれることもあります。
ここまで、典型的な双極性障害の症状をご紹介しましたが、実際には非典型的な症状を示す方もいらっしゃいます。
1年に4回以上、躁とうつのエピソードを繰り返すタイプで、気分の変動が比較的早いスピードで起こります。
躁状態と抑うつ状態が同時に現れるような状態です。例えば、「気分は沈んでいるのに、頭の中は落ち着かずに焦りや衝動が強い」といったケースがあります。
うつ状態が主で、軽躁状態が目立ちにくいのが特徴です。本人も躁の部分を「ちょっと調子がいい程度」としか認識しておらず、うつ病と誤診されやすいタイプです。

「気分の浮き沈みが激しい」という症状には、さまざまな背景や疾患が隠れている可能性があります。必ずしも双極性障害とは限らず、ストレスや環境要因、一時的な体調不良によるものである場合も少なくありません。
一方で、非典型的な双極性障害のケースも存在し、見逃されると長期間つらい状態が続くこともあります。
そのため、気になる症状がある場合は自己判断せず、ぜひ一度専門の医療機関にご相談ください。早めの対応が、よりよい生活への第一歩となるでしょう。