日々の暮らしの中で、「あのとき、こうしていればよかったのに」と過去を振り返って悔やむことは、誰にでもある自然な感情です。しかし、それが長く続き、今に目が向けられず、心の負担となってしまうとしたら、それは少し注意が必要かもしれません。
今回は、「ずっと後悔し続けています」というご相談について、心の専門家の視点から、後悔と反省の違い、後悔への対処法、そして精神疾患との関係性までを丁寧に解説していきます。
「後悔」とは、過去の行動や出来事に対して「なぜあのとき…」と悔やむ感情のことを指します。その感情自体は自然なものですが、後悔がずっと続いてしまうと、心は過去にとらわれ続け、今を生きることが難しくなってしまいます。
「やってしまったこと」「やらなかったこと」どちらに対しても、人は後悔を感じるものです。しかし、その感情に繰り返し囚われ続けると、気分が落ち込みやすくなり、自分自身に強いストレスを与えてしまうことがあります。その結果として、うつ状態など心の不調に繋がることも少なくありません。

後悔と似ているようでいて、実は大きく異なるのが「反省」です。どちらも過去の行動を振り返るという点では共通していますが、その目的や結果に大きな違いがあります。
反省とは、過去の失敗や選択を振り返り、「自分の思考や行動にはどんな癖があるのか」「次はどうすればより良くできるか」と、未来の改善に繋げていく姿勢のことです。反省は、自己成長や問題解決に向かう建設的な思考であり、前向きなプロセスです。
一方、後悔は「反芻思考(はんすうしこう)」に陥りやすいという特徴があります。これは、嫌な記憶や感情が何度も頭の中で再生され、解決に至らずに堂々巡りする状態です。後悔が強くなると、「あのときこうしていれば」と過去の出来事ばかりが心を占め、現実に対処する力が奪われていきます。

反省は未来への改善をもたらし、後悔は心を過去に縛りつけます。ですから、同じ過去を振り返るとしても、「反省」に変えていくことが心の健康にとって重要です。
具体的には、「この出来事から何が学べるか?」「次に同じような場面で、どう行動したら良いか?」という問いかけを自分にしてみましょう。前向きに考え、行動の改善に繋げられるなら、それは反省のプロセスです。
逆に、ただ「あのとき○○すればよかった」「自分はなんてダメなんだ」と思い続けるだけで、何度考えても答えが出ず、気持ちが沈んでいくだけなら、それは後悔に囚われているサインかもしれません。
後悔が頭から離れないときには、まず自分が今どちらの状態にいるかを見極めることが大切です。
もし「後悔」に偏っていると気づいた場合は、「今できること」「これからどうしたいか」に意識を向け直すことが対処の第一歩となります。
たとえば、
といった問いを自分に投げかけ、現実の行動にフォーカスすることが大切です。

過去に目を向けるのではなく、「未来のために、今できること」を見つけていくことが、後悔を和らげる一番の近道です。これを積み重ねることで、後悔の記憶そのものが徐々に上書きされていき、心の中の比重が変わっていきます。
一度で忘れることは難しくても、今に集中する時間が少しずつ増えれば、後悔の渦から抜け出すことができるはずです。
注意したいのは、「後悔の気持ちが不自然に強く、長く続く」「日常生活に支障が出ている」という場合です。これは、うつ病などの精神疾患の症状の一部として現れている可能性もあります。
うつ病の症状の一つに、「過去の出来事に対して過度な罪悪感や後悔を感じる」というものがあります。このときは、後悔の感情だけでなく、意欲の低下、食欲不振、睡眠障害、希死念慮など他の症状も併せて見られることが多いです。
このような場合は、「考え方の問題」ではなく、「心の病気の症状」としての後悔です。無理に自分だけで立ち直ろうとせず、医療機関での治療を受けることが必要です。
治療は、抗うつ薬、休養、精神療法の3本柱を基本とし、少しずつ心の回復を図っていきます。
後悔が強く現れるのは、うつ病だけではありません。他の精神疾患でも、以下のような形で見られることがあります。
これらの場合も、根本的には元の精神疾患の治療を優先することが回復への近道です。
今回は、「ずっと後悔し続けてしまう」という悩みに対して、後悔と反省の違い、そして後悔への対処法、精神疾患との関連について解説しました。
「自分は後悔しているのか、それとも反省しているのか?」——まずはこの問いを、自分自身に優しく投げかけてみてください。そして、必要があれば専門家の力を借りながら、少しずつ前に進んでいけるよう、一歩ずつ歩んでいきましょう。