「普通に話しているのにコミュ障と言われました」。こうした声は、現代社会で決して珍しくありません。自分としては自然なコミュニケーションを心がけているつもりでも、他人から「コミュ障」との評価を受けると、戸惑いや不快感を覚えるものです。今回のテーマは、まさにそのような経験をした方からの疑問に答える形で進めていきます。結論から述べると、対策の基本は「会話技術の見直し」に尽きます。

「コミュ障」は、「コミュニケーション障害」の略称で、俗語として広まりました。この言葉には明確な定義があるわけではありませんが、一般的には他者との会話や意思疎通がうまくいかない状態を指します。自分自身でそう感じる場合と、周囲からそう評価される場合の2つがあり、その背景によって必要な対策も異なってきます。
自分で「話せない」と感じる場合は、緊張や不安などが主な原因であることが多く、不安障害との関連が考えられます。一方、自分では「普通に話している」と思っているにもかかわらず、相手から「コミュ障」と言われる場合、そこにはまた別の問題が潜んでいる可能性があります。

コミュニケーションに困難を抱えるケースは、大きく分けて3つに分類されます。
今回のご質問は、2番目の「話しているのに嫌がられるケース」に該当します。この場合、自分の話し方に原因があると想定し、会話の技術そのものを見直す必要があります。

相手から「話が合わない」「なんとなく不快だ」と感じられているとすれば、その背景には発達特性が関与している可能性があります。特に以下のような障害が関連していることが考えられます。
ASDの特性として、対人関係における距離感や関心の持ち方にズレが生じやすいことが知られています。会話の中で、自分の興味のある話題に強くこだわり、相手の反応を無視するような形になってしまうことがあります。
ADHDの場合、衝動的に話し出したり、相手の話を遮ってしまったりする傾向があります。自分ではその自覚がないまま、相手を疲れさせてしまうことがあるのです。
この障害においては、人間関係の築き方に特異な傾向が見られる場合があり、過度に相手を巻き込んだり、情緒的に振り回すような形で、相手が不快感を覚えることがあります。

「普通に話しているのに…」という気持ちは非常に理解できますが、それでも周囲から「話しづらい」と感じられている以上、何らかのズレが存在している可能性は高いです。そこで必要になるのが、会話技術の見直しです。以下に、段階的な5つのアプローチを紹介します。
まずは無理に話さず、相手の話を聞くことに専念する姿勢が大切です。いきなり話し始めると、話の方向性がズレたり、相手にとって不快な内容になるリスクがあります。聞き手になることで、相手との関係に悪影響を与える可能性を下げることができます。
周囲で会話が上手な人をよく観察しましょう。その人がどのようなタイミングで話し、どのように相手の話に反応しているか、また表情や姿勢などにも注目すると学びが深まります。
観察した内容をもとに、その人の話し方や態度を実際にまねてみましょう。これは「モデリング」と呼ばれる学習法で、何度も繰り返すことで徐々にスキルとして身についていきます。
発言する前に、その言葉が相手や場の雰囲気にどのような影響を与えるかを一度考える癖をつけましょう。自分の言葉がポジティブな効果をもたらすと判断できたときにのみ発言するように意識することで、無用な摩擦を防ぐことができます。
努力によって改善できる部分は多くありますが、中には持って生まれた特性によって、どうしても難しい部分があるのも事実です。たとえば、発達障害の影響が強い場合、どれだけ努力しても自然な会話が難しいこともあります。その場合、無理に人間関係を広げようとせず、会話をあまり求められない環境を選ぶという選択肢もあります。

「普通に話しているのにコミュ障と言われる」という経験は、自分の意図と他者の受け取り方にズレがあることを示しています。そのズレを埋めるためには、会話の方法や態度を一度立ち止まって見直すことが重要です。会話が得意な人を観察し、まねてみること。発言前に周囲への影響を意識すること。そして、自分の特性を理解し、必要に応じて環境を整えること。これらの積み重ねが、より良いコミュニケーションへの第一歩となるはずです。