うつ病と双極性障害(躁うつ病)は、どちらも「うつ状態」が現れる精神疾患であり、一見するととてもよく似た症状を示すことがあります。そのため、本人はもちろん、家族や医療従事者にとっても見分けが難しいことがあります。
しかしながら、症状の表れ方、治療の方法、さらには根本的な原因において、実は大きな違いが存在しています。この記事では、うつ病と双極性障害の「3つの大きな違い」について丁寧に解説し、それぞれの病気への理解を深めていきます。
うつ病と双極性障害は「脳の不調」によって起こる精神疾患であり、ストレス反応や単なる気分の落ち込みとは異なります。どちらも、医学的に「治療が必要な状態」であるという点では共通しています。
両者の最大の違いの一つは、発症のメカニズム、つまり病気が起こる原因にあります。
うつ病は「セロトニン」と呼ばれる脳内の神経伝達物質が不足することが主な要因と考えられています。セロトニンは「幸福ホルモン」とも呼ばれ、心の安定に深く関わっています。この物質が不足すると、気分が沈み、不安や絶望感が強くなることがあります。
このため、うつ病では「抗うつ薬」と呼ばれる、セロトニンを補う薬が治療に用いられます。
一方、双極性障害は、セロトニンだけでなく、ドーパミンやノルアドレナリンなど複数の神経伝達物質や脳の機能全体に異常が生じていると考えられています。時には統合失調症と似た症状を示すこともあり、治療には「抗精神病薬」や「気分安定薬」といった別の薬が用いられます。
うつ病と双極性障害は、どちらも「うつ状態」を示しますが、双極性障害には「躁状態(そうじょうたい)」という特徴的な症状があります。
うつ病では、気分が沈み込む「うつ症状」だけが現れます。以下のような症状が典型です。
気分の波はあまり見られず、症状は比較的一定しています。
双極性障害は、「うつ状態」に加え、「躁状態」という、気分が異常に高まる時期を周期的に繰り返すのが特徴です。
躁状態では以下のような症状が見られます。
特に双極性Ⅱ型というタイプでは、「軽躁」と呼ばれる軽度の躁状態しか現れず、見逃されてしまうことがあります。そのため、長い間うつ病と誤診されていた、というケースも少なくありません。

治療薬の違いも、うつ病と双極性障害を見分ける上で非常に重要なポイントです。
うつ病の治療では、主に「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」などの抗うつ薬が使われます。これにより、セロトニンの量を増やし、気分を安定させていきます。
しかし、何種類もの抗うつ薬を使っても効果が見られない場合には、実は双極性障害だったというケースもあるため、注意が必要です。
双極性障害では、抗うつ薬は基本的に使われません。むしろ、誤って抗うつ薬を使用すると、躁状態が誘発されたり、気分の波が激しくなるリスクがあります。
主に使用されるのは以下の薬です。
なお、これらの薬は副作用があるため、定期的な血液検査などの慎重な管理が必要です。
もし、うつ病に対して気分安定薬を使った場合、効果が出にくく、うつ状態が長引くことがあります。
逆に、双極性障害に抗うつ薬を使うと、躁状態が出現したり、症状が悪化する危険性があります。これは「躁転(そうてん)」と呼ばれ、非常に注意が必要です。
そのため、「どちらの病気なのかを正しく見極めたうえで治療を行う」ことが何より大切です。場合によっては、診断が途中で変わることもあるため、主治医とよく相談しながら治療を継続することが重要です。

今回は、うつ病と双極性障害の違いについて、特に重要な3つのポイントに絞ってご紹介しました。
症状が似ていても、対処法がまったく異なるため、誤った診断や治療を避けることが大切です。もしご自身や大切な人が悩んでいる場合は、専門医に相談し、正しい診断を受けることをおすすめします。