現代社会において、心の不調は誰にでも起こりうる身近な問題となっています。その中でも特に多くの人が耳にしたことのある精神疾患が「うつ病」と「不安障害」です。これらは一見すると、まったく異なる症状や特徴を持つ別々の病気のように思われがちです。しかし、実際には共通点も少なくなく、治療法や症状、さらには発症のメカニズムにおいても重なり合う部分があるのです。
本記事では、「うつ病」と「不安障害」に焦点を当て、それぞれの基本的な特徴を整理しながら、意外と知られていない「共通点3つ」について丁寧にご紹介していきます。
まずは、それぞれの病について簡単におさらいしておきましょう。
うつ病とは、気分が沈み込む「抑うつ症状」が中心となる精神疾患です。落ち込みや無気力、興味や喜びの喪失などの感情面の不調が続き、日常生活に支障をきたす状態を指します。
医学的には、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」などのバランスが崩れることが一因とされています。そのため、治療は主に以下の3つの柱で進められます。
一方で、不安障害とは「強い不安や緊張」が長期間にわたり続き、生活に支障をきたす状態を指します。漠然とした不安や、特定の場面への過度な恐怖などが特徴で、その症状によってさらに細かく分類されます。
代表的な不安障害には以下のようなものがあります。
治療としては、抗うつ薬の一種である「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」を用いることが多く、加えて不安に慣れていくための段階的なトレーニング(脱感作)などの精神療法も行われます。

さて、ここからは「うつ病」と「不安障害」に共通する意外なポイントを3つご紹介します。
うつ病は主に「落ち込み」が、不安障害は「不安」がそれぞれ目立つ症状ですが、実は一部の症状が共通する場合があります。
例えば、うつ病の方でも「不安感」が強く出ることがあり、逆に不安障害の方が「意欲低下」や「無気力感」を抱くことも珍しくありません。また、両者に共通して現れることの多い症状として「自律神経症状」があります。これには、動悸、発汗、吐き気、胃の不調など、身体的に現れるストレス反応が含まれます。
たとえうつ病や不安障害の診断を受けていなくても、これらの共通症状が見られる場合は、心のサインかもしれません。早めの相談やケアが大切です。
両者の発症メカニズムをたどっていくと、どちらも「セロトニン」という脳内物質の不足が背景にあるとされています。
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、感情の安定や睡眠、意欲、緊張の緩和などに深く関わっています。この物質の分泌がうまくいかないと、うつ病だけでなく不安障害の発症にもつながることがわかってきました。
このように、脳内の化学的なバランスの乱れという共通した背景があるため、うつ病と不安障害を同時に発症する「合併」、または一方から他方への「移行」がしばしば見られます。
◆ 合併の例
◆ 移行の例
このようなケースでは、治療法や薬の選択にも柔軟な対応が求められます。

最後の共通点は、治療に使用される「薬」です。
うつ病・不安障害ともに、セロトニン不足に対処するため、共通してSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬が用いられることが多くあります。
SSRIは、脳内のセロトニン濃度を高め、気分の安定や不安の軽減に効果を発揮します。特に、不安障害ではうつ病以上にSSRIの「不安軽減効果」が期待されており、実際の臨床の現場でも高く評価されています。
代表的なSSRIには以下のようなものがあります:
これらの薬は、どちらの病気であっても症状に応じて使い分けられるため、診断が変わったとしても継続的に治療が進められるのが特徴です。
今回は、「うつ病と不安障害」に共通する3つのポイントに注目して解説してきました。改めてまとめますと、その共通点とは以下の通りです:
これらの共通点を知ることで、「自分はうつ病だけだと思っていたけど、もしかしたら不安障害の症状もあるかも?」と気づけたり、逆に「不安障害の治療をしているけれど、最近気分の落ち込みが強いな」といった変化に早めに対応できるかもしれません。
大切なのは、「ひとつの診断名」にこだわりすぎず、変化する心の状態に合わせて柔軟に向き合うことです。症状に心当たりがある方や不安を抱えている方は、ぜひ専門の医師やカウンセラーに相談してみてください。自分に合ったペースで、ゆっくりと向き合っていきましょう。