うつ病と不安障害は、いずれも心の不調から生じる精神疾患です。
実際、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きの低下など、共通する背景を持っているため、症状や治療法が似ている部分もあります。
そのため、「これはうつ病なのか不安障害なのか」と見分けが難しく感じられることもあるでしょう。
しかし、うつ病と不安障害は別個の疾患であり、いくつかの重要な違いがあります。
今回は、両者の共通点を押さえたうえで、代表的な違いを3つに絞ってわかりやすく解説していきます。
1. 一部の症状が似ている
うつ病でも不安症状が出ることがありますし、不安障害でも意欲の低下や抑うつ気分が見られることがあります。
たとえば、社会不安障害の人が「人前に出るのがつらい」と感じる背景には、自信の低下や抑うつ的な気分が含まれていることもあります。
逆に、うつ病の方が「先のことを考えると不安になる」といった訴えをすることもあります。
2. メカニズムに共通点がある
どちらの疾患でも、セロトニンという脳内の神経伝達物質の働きの低下が関係していると考えられています。
このため、うつ病と不安障害は「脳の不調」が背景にあるという点で共通しています。
3. 治療に用いる薬が共通している
うつ病も不安障害も、抗うつ薬の一種であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を用いるのが一般的です。
症状の程度によっては、薬物療法に加えて精神療法やカウンセリングが組み合わされることもあります。
これらの共通点があるため、うつ病と不安障害が合併していたり、一方からもう一方へ移行したりするケースも少なくありません。

うつ病と不安障害では、日常生活で困ることの中心が異なります。
● うつ病の主な症状
うつ病は、以下のような「落ち込み」を中心とする症状が特徴です。
これにより、「何も楽しくない」「毎日がつらい」と感じるようになり、セルフケア(食事・入浴など)すら難しくなるケースもあります。
また、過去の失敗や後悔に囚われる傾向もあります。
● 不安障害の主な症状
一方、不安障害は「不安」や「緊張」を中心とした症状が見られます。
このような不安症状により、「発作で混乱してしまう」「外出を避けて生活が制限される」「将来に対して過剰に不安を抱く」といった問題が生じます。
うつ病では「過去への後悔」が目立つのに対し、不安障害では「未来への予期不安」が主となる点が異なります。
● うつ病は基本的に後天的
うつ病は、基本的にある時期を境に発症するとされます。例えば、ストレスや過労、喪失体験などが引き金となり、ある日を境に気分の落ち込みが始まることが多いです。生まれつきの性格が影響することもありますが、「うつ病は生まれつきのもの」というわけではありません。
● 不安障害は生来の人もいる
不安障害では、生まれつき不安が強い「生来性」の方も一定数存在します。これは「不安神経症」と呼ばれることもあり、特に誘因がなくても小さい頃から不安感が強いという特徴があります。
また、不安障害の発症パターンには次の3つがあります:
うつ病と不安障害では、行動面で取り入れられる治療アプローチも異なります。
● うつ病:行動活性化(行動療法)
うつ病では「行動活性化」という治療法がよく用いられます。これは意識的に活動(例:散歩、読書、人との会話など)を増やしていくことで、脳に刺激を与え、意欲や気分を改善するというものです。
小さな達成体験を積み重ねることで、徐々に気分の回復を図っていきます。
● 不安障害:脱感作法(曝露療法)
不安障害では「脱感作法」あるいは「曝露療法」と呼ばれるアプローチが中心です。これは、不安を感じる状況を避けずに、あえて少しずつ慣れていく方法です。たとえば、人前で話すのが不安な人に対し、まずは少人数の前で話す練習を行い、徐々に場数を増やしていくといった方法です。
この脱感作を成功させるためには、いきなり無理な課題に挑まず、徐々にレベルを上げることが大切です。失敗体験が逆効果になるため、慎重に進める必要があります。

うつ病と不安障害は、重なり合う部分も多く、実際に併発することも珍しくありません。
とはいえ、それぞれに特徴的な症状や治療方針があるため、正しい理解が非常に大切です。
今回紹介した違いは以下の3つです:
これらの違いを知っておくことで、自身や身近な人の状態をより的確に理解し、適切な対応につなげることができるでしょう。
うつ病か不安障害か分からないという方は、早めに専門機関を受診して、診断とサポートを受けることをおすすめします。