近年、精神科医療は社会に広く普及しつつあり、精神科クリニックに通院することも一般的な選択肢となっています。うつ病や不安障害といった比較的軽度の精神疾患であれば、通いやすくアクセスの良いクリニックでの外来治療が主流となってきました。
しかしその一方で、症状の重さや再発リスク、安全管理などの観点から、より専門的な体制が整った「精神科病院」での診察や治療が必要となるケースも少なくありません。
本記事では、「精神科病院で診ることが多い精神疾患」について詳しくご紹介しながら、精神科クリニックとの違いや、精神科病院での治療が必要とされる具体的な状況について丁寧に解説していきます。
まずは、精神科治療の大まかな枠組みについて理解を深めましょう。
精神科治療とは、うつ病や統合失調症、双極性障害などの精神疾患に対して、医師の診察や処方によって病気の改善を目指していく医療行為です。この治療は主に二つの形式に分けられます。
また、治療を行う「場所」としても主に以下の2つがあります。
精神科クリニックは基本的に外来治療専門であり、入院設備は持っていないことが一般的です。利点としては、駅に近くアクセスが良い、平日だけでなく土日にも開院しているケースがあるなど、患者にとって利用しやすい環境が整っている点が挙げられます。
一方で、症状が急激に悪化した場合などは、人的・設備的な理由から対応が難しい場面もあります。
精神科病院では、外来と入院の両方に対応できる体制が整っています。特に、重度の症状や、急変リスクの高い患者に対しては、入院を含めた継続的な管理が可能となるため、より安全で専門的な治療が行えます。
ただし、クリニックに比べると立地が駅から離れていることも多く、また土日や夜間は対応していない場合もあり、受診にはある程度の時間的な調整が必要となることがあります。

それでは、精神科病院での治療が望ましい、あるいは実際に多く診察されている精神疾患について、具体的に4つご紹介していきます。
統合失調症は、主に幻聴や妄想といった症状が現れる慢性的な精神疾患です。脳の機能に関わる病気であり、抗精神病薬による治療が基本となります。症状が安定した後も、再発を防ぐために継続的な服薬と通院が必要です。
病院での治療が望まれる理由
これらの理由から、精神科病院での慎重かつ継続的な観察と対応が必要とされます。
双極性障害(いわゆる躁うつ病)は、気分が極端に高まる「躁状態」と、落ち込みの激しい「うつ状態」を周期的に繰り返す疾患です。気分安定薬などを中心に治療が行われ、症状のコントロールが重要となります。
病院での治療が望まれる理由
特に躁状態のときには本人の自覚が乏しく、リスク行動をとる場合もあるため、入院による安全管理が求められることがあります。
認知症は、加齢に伴い脳の機能が徐々に低下する病気です。代表的な症状には物忘れや見当識障害などがありますが、進行に伴い幻覚・妄想・徘徊・暴言暴力といった周辺症状(BPSD)が現れることもあります。
病院での治療が望まれる理由
このようなケースでは、精神科病院での多職種による総合的な支援が有効となります。
パーソナリティ障害は、感情や考え方、人間関係の築き方などに持続的な偏りが見られる疾患です。中でも「境界性パーソナリティ障害」では、感情の不安定さや衝動的な行動が目立つことがあります。
病院での治療が望まれる理由
治療には時間がかかりますが、安定した環境の中で信頼関係を築き、心理社会的支援を受けることで改善を目指します。

精神科治療は、現代社会においてますます身近な医療分野となってきました。軽度の症状や日常的な悩みに対しては、精神科クリニックでの外来治療が大いに有効です。しかし、以下のような状況では精神科病院での治療が強く望まれます。
本記事で紹介した4つの精神疾患――統合失調症、双極性障害、認知症、パーソナリティ障害――は、いずれも入院対応を含めた病院での包括的な治療が必要になることが多い疾患です。
治療場所の選択は、症状の重さや本人の生活状況に応じて柔軟に考えていくことが大切です。適切な場所で、適切な支援を受けながら、よりよい回復と生活の安定を目指していきましょう。