発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)を持つ人の中には、日常的に「疲れやすい」と感じている人が少なくない。
仕事や人間関係において消耗感が強く、体力や気力が持たないことで悩むケースも多く見られる。
では、なぜADHDを持つ人に「疲れやすさ」が目立つのか。その原因と向き合い方を探っていきたい。

ADHDとは、不注意・多動・衝動性という3つの特性を中核に持つ生まれつきの発達障害である。
子どものころに診断されることも多いが、近年では成人になってからその特性に気づく人も増えている。不注意によって集中力が持続しづらく、多動によって体も心も休まらず、衝動性によって人間関係に波風が立ちやすいといった特徴が見られる。
また、興味があることに極度に集中する「過集中」や、音や光、服の質感などに敏感な「感覚過敏」なども併せ持つ場合がある。
ADHDの特性によって、本人の内側では常に膨大なエネルギーが使われている。
そのため、外見的には普通に見えても、内面では消耗している状態が続くことがある。
加えて、社会に適応するために無理に行動を調整したり、周囲との摩擦を避ける努力を続けることで、さらにエネルギーを使い果たしてしまう場合がある。
この「見えにくい疲労」は、生活の質や健康にまで影響を及ぼすことがある。
疲れが慢性化すると、日常の活動そのものが困難になり、体調不良が起こりやすくなる。
風邪を引きやすくなったり、睡眠の質が低下することもある。
さらに、うつ状態などの二次的な精神的問題が発生するリスクも無視できない。
こうした疲弊を予防するためには、まず自分の疲れに気づくことが不可欠である。
次に、意識的に休養やリラックスを取り入れる。そして、自分の特性に合った環境を整えることが求められる。

ADHDの多動傾向により、身体も思考も常に動き続ける傾向がある。
これにより、無意識のうちにエネルギーを消耗し、休もうとしてもなかなか休まらない状態に陥ることがある。特に、静かに座っていたとしても内面的には常に動いているような感覚を持つことがあり、それが慢性的な疲労につながる。
この対策としては、まず「意識的に休む」ことが重要になる。
自然な形では休息に入れないこともあるため、あらかじめスケジュールに休憩を組み込んでおくといった工夫が求められる。
また、自分の疲れ具合を普段からチェックする習慣を持つことも有効である。
さらに、日々の活動を減らし、優先度の高いものだけに取り組むよう調整することが消耗の予防につながる。
ADHDの衝動性は、思いついたことをすぐに行動に移してしまう傾向を持つ。
これによって感情の起伏が激しくなり、精神的なエネルギーを多く消費してしまう。
また、衝動的な行動を抑えるために努力を重ねることも、また別の形での消耗を招く。
このようなケースでは、まず外部からの刺激を減らす工夫が有効である。
情報量を制限する、騒音や明るすぎる光を避けるといった環境調整が基本となる。
そして、「一歩引いてから反応する」ことを意識的に練習していくことで、反射的な行動の回数を減らし、エネルギーの消費を抑えられるようになる。
それでも疲れを完全に防ぐことは難しいため、しっかりと休む時間を確保する姿勢が求められる。
不注意の特性を持つADHDの人は、継続的な集中を求められる状況において大きなストレスを感じやすい。例えば、興味の持てない作業を長時間続けると、通常よりもはるかに大きな努力を必要とする。
そのような「無理な集中」を続けた結果、後になってどっと疲れが押し寄せることがある。
こうした疲労を軽減するには、まず行う作業に興味を持つ工夫をしてみることが役に立つ。
また、短時間の集中を繰り返す「ポモドーロ・テクニック」などを活用して、集中の負荷を分散させる方法も考えられる。
集中の後には必ず意識的に休養を取り、脳をリセットする時間を設けることが大切である。
ADHDの人がよく示す「過集中」は、興味のあることに没頭しすぎる現象である。
時間の感覚を忘れて作業に没頭することで、大きな成果を上げることもあるが、その反面、疲労感が極端に大きくなってしまうことがある。
過集中のあとは、しばらく使い物にならないほどの疲労を感じるケースも少なくない。
この対策としては、まず過集中のタイミングを見極め、その後に必ず休養を入れるようにすることが基本である。また、一つの作業を細かく分割することで、集中の深さをコントロールしやすくなる。
「過集中に頼り過ぎない」意識を持つことで、自分自身を長期的に守ることが可能となる。
ADHDの人の中には、音や光、触感、においなどに対する感覚が鋭すぎる「感覚過敏」を持つ人も多い。
日常生活の中で普通の人には気にならない刺激が大きなストレスになり、それが疲労の原因となる。
たとえば、聴覚過敏の人は騒がしい場所で過ごすだけで神経がすり減ってしまうことがある。
光に対する過敏がある人は、蛍光灯の下での作業が著しく集中力を損なう場合もある。
こうした場合には、イヤーマフの着用やサングラスの利用など、現実的なツールを用いることで負担を軽減できる。
また、服の素材などに過敏な人は、自分にとって快適な素材の服を選び直すことも重要である。場合によっては、生活環境や職場環境そのものを見直す必要が出てくる。
ADHDの人にとって「疲れやすさ」は特性の一部であり、避けることが難しいものでもある。
ただし、自分の状態を正確に把握し、休養を意識的に取ること、また環境を整えることによって、その疲労感を軽減することは可能である。
無理をせず、自分自身を理解しながら暮らしていくことが、より豊かな生活への第一歩となる。