市販薬によるオーバードーズとは――薬物過剰摂取の危険と社会が取り組むべき課題

近年、市販薬を使用した「オーバードーズ(Overdose)」が深刻な社会問題となっています。

本来、オーバードーズとは医療現場において、一度に過剰な薬剤を投与してしまう事故や

患者が誤って多くの薬を服用してしまうケースを指します。

しかし、現在問題視されているのは、個人が意図的に市販薬を大量に服用する危険行為です。

市販薬によるオーバードーズとは――薬物過剰摂取の危険と社会が取り組むべき課題

特に若年層に広がりを見せており、風邪薬を一度に何十錠も飲む例も報告されています。

今回は、オーバードーズの背景にある心の問題と

社会がどのように取り組むべきかについて考えてみたいと思います。

安全なはずの市販薬――なぜ危険行為に及んでしまうのか

医薬品には、医師の処方が必要な「医療用医薬品」

誰でも購入可能な「一般用医薬品(OTC医薬品)」があります。

一般用医薬品は、長年の使用実績から一定の安全性が認められており

正しい用法・用量を守れば安心して使用できます。

しかし、そこには専門家の管理が介在せず

利用者の自己責任に委ねられているというリスクも存在しています。

薬物乱用といえば覚醒剤や麻薬を想像する方が多いでしょうが

市販薬にも覚醒作用や陶酔感をもたらす成分が含まれている場合があり

用法・用量を逸脱すると命に関わることもあります。

本来安全なはずの薬が、覚醒剤や麻薬と同様に依存症を引き起こす危険性を持つことは

もっと知られるべき現実です。

依存症は「快感を求める」という単純な理由から生まれるものではありません。

多くは、現実世界での欲求不満、絶望感、孤独感といった心の問題から始まります。

そうした苦しみから逃れる手段として、薬に手を伸ばしてしまうのです。

しかし一時的な安堵感を得た後には、より深い絶望が待っており

さらに薬に依存するという負の連鎖が生じます。

「薬を使うのは自由」という誤解――オーバードーズは法律違反

「薬を使うのは個人の自由だ」と考える方もいるかもしれません。

しかし、日本では「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」

により、国民は医薬品を適正に使用する義務が課されています。

つまり、自己判断によるオーバードーズは、単なる自己責任問題ではなく

法に反する行為なのです。

さらに、オーバードーズによる急病で救急医療のリソースを浪費したり

社会復帰できない状況に陥ったりすれば、社会的コストも非常に高くなります。

本人だけの問題ではなく、周囲や社会全体に悪影響を与えることを認識する必要があります。

10代のオーバードーズ増加――ネット社会の影響と急務の対策

特に憂慮すべきは、オーバードーズが10代の若者に広がっている点です。

将来ある世代が、無知や孤独感から人生を狂わせてしまうのは、社会全体の大きな損失です。

原因の一つに、インターネット上でドラッグ情報が氾濫していることが挙げられます。

アダルトコンテンツには厳しい年齢制限が設けられているのに対し

薬物に関する危険な情報はほぼ無制限にアクセス可能です。

不適切な情報に若者が触れ、間違った知識で薬を乱用してしまうリスクが高まっています。

ネットプロバイダーや通販サイトには

ドラッグ情報の取り扱いに対する責任ある対応が求められます。

また、医薬品販売の自由化が進んだ今、販売者側にも乱用防止に向けた積極的な管理策が必要です。

例えば、依存リスクの高い薬の販売に厳しい制限を設けるなどの対策が急務です。

周囲の大人ができること――孤立を防ぎ、正しい知識を伝える

オーバードーズを防ぐために、周囲の大人たちにできることは多くあります。

最も大切なのは、子どもたちを孤立させないことです。

現代社会では、核家族化や忙しさのために親子の会話が減り

若者たちはリアルな人間関係ではなく、インターネットの仮想世界に居場所を求めがちです。

この孤独感こそが、薬物問題の温床となっています。

親や教育者は、子どもたちに日常的に関心を持ち、話を聞き

心のつながりを築く努力を怠ってはなりません。

子どもが安心して悩みを打ち明けられる環境こそが、薬物依存から守る最大の防波堤になります。

教育現場での課題――身近な薬物問題にも目を向ける必要性

日本では、「ダメ。ゼッタイ。」のスローガンのもと、薬物乱用防止教育が進められてきました。

その結果、覚醒剤など違法薬物の使用率は諸外国に比べ極めて低い水準にあります。

しかし、教育現場では、覚醒剤の危険性に偏った情報提供にとどまっている現状があります。

多くの若者は、覚醒剤を「自分とは無縁のもの」と考えがちですが

アルコールやタバコ、さらには市販薬といった身近な薬物こそが危険なのです。

これら身近な薬物への正しい知識と危機感を持たせる教育が、今後ますます求められます。

特に10代におけるオーバードーズ問題は

これまでの薬物教育が現実に即していなかったことを示唆しています。

現代の子どもたちに合わせた、より実践的な啓発活動が急がれます。

言葉の持つ力――「オーバードーズ」という言葉を見直す

最後に、情報発信に関わる方々へのお願いです。

「オーバードーズ(OD)」というカタカナ英語は、その深刻な意味が軽視される危険性があります。

実際、ネット上では「ODってかっこいい」と無邪気に書き込む若者もいるようです。

カタカナ英語の氾濫により、本来の意味があいまいになり

言葉の重みが失われることがあります。「オーバードーズ」という言葉も

単なる流行語ではありません。

市販薬によるオーバードーズとは――薬物過剰摂取の危険と社会が取り組むべき課題

薬物過剰摂取という極めて危険な行為であることを

正しく伝える表現――たとえば「薬物過剰摂取」や「危険な行為」といった

より明確な言葉を使うべきでしょう。

私たち一人ひとりが、言葉を大切にし、正しい知識を広める努力をすることが

薬物問題の深刻化を防ぐ第一歩になるはずです。