不安障害で主に使う漢方薬3種

不安障害で主に使う漢方薬3種〜抗うつ薬が使いにくいときの選択肢〜

不安障害の治療では、近年、抗うつ薬の使用が一般的になっています。しかし、抗うつ薬に対して心理的な抵抗を感じる場合や、副作用が気になる場合、また症状が比較的軽い場合には、漢方薬を選択肢とすることもあります。今回は、不安障害に対して使われる代表的な漢方薬について詳しく解説していきます。

不安障害と漢方薬〜軽症例では漢方薬も選択肢に〜

不安障害と漢方薬〜軽症例では漢方薬も選択肢に〜

不安障害とは、強い不安や緊張が長く続き、日常生活に支障をきたす病気です。症状の出方や場面によって、いくつかのタイプに分かれています。たとえば、

  • 社会不安障害(対人場面での強い不安)
  • パニック障害(突然の激しい不安発作)
  • 全般性不安障害(慢性的な漠然とした不安)
  • 強迫性障害(強迫観念や行動が目立つ) などが代表的です。

標準的な治療では、抗うつ薬(特にSSRI)と脱感作療法(不安に徐々に慣らす訓練)を組み合わせることが基本です。まず、SSRIによって根本的な不安を十分に軽減し、そのうえで不安場面に徐々に慣れる脱感作を行い、さらなる改善を目指します。

抗うつ薬が使いにくい場面もある

とはいえ、すべての人が抗うつ薬をスムーズに使えるわけではありません。主に以下のようなケースでは、漢方薬を選択肢にすることがあります。

  • 副作用が強く、抗うつ薬の継続が難しいとき
  • 「抗うつ薬=強い薬」という心理的な抵抗があるとき
  • 症状が比較的軽く、抗うつ薬を使う必要性が議論されるとき

また、かつては不安に即効性のある**抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)**も広く使われていましたが、依存や耐性のリスクが問題視され、現在では「頓服」として使うに留めることが多くなっています。

漢方薬を検討する場面とは?

こうした背景の中で、次のような状況では漢方薬の使用が検討されます。

  • 抗うつ薬が続けにくい場合
  • 症状が比較的軽い場合
  • 安全性を最優先したい場合

漢方薬は一般に副作用が少なく、身体への負担も軽めであるため、特に安全性を重視する人に向いています。

不安障害で主に使う漢方薬3種

不安障害で主に使う漢方薬3種

それでは、不安障害に対して実際によく使われる漢方薬3種類を紹介していきましょう。これらはいずれも不安や緊張を和らげる効果が期待できる薬剤です。

① 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

半夏厚朴湯は、不安や緊張を和らげる代表的な漢方薬のひとつです。特に、

  • 喉のつかえ感(ヒステリー球)
  • のどの違和感に伴う不安 に効果を期待して使われます。

喉に違和感があって、それがかえって不安を強めてしまう――そんな症状に悩む人に向いています。また、漢方薬の中でも副作用が非常に少ないため、安心して使える点も大きな魅力です。

② 抑肝散(よくかんさん)

抑肝散は、主にイライラや興奮が目立つ不安状態に用いられます。不安や緊張だけでなく、緊張の延長線上にある怒りっぽさや情緒不安定にも対応できるのが特徴です。

実際に、抑肝散は高齢者の認知症によるイライラにも頻繁に使用されています。精神的な興奮を穏やかに鎮めたいときに、効果が期待できる漢方薬といえるでしょう。

③ 加味帰脾湯(かみきひとう)

加味帰脾湯は、不安や緊張に加えて、だるさや疲労感、不眠などが目立つ場合に用いられます。不安による寝つきの悪さ、または、体がだるくてやる気が出ないといった症状に対して、心身を同時にケアする効果を期待します。

精神的な不安だけでなく、身体的な疲れやエネルギー不足もカバーできるため、幅広い症状に対応できる漢方薬といえるでしょう。

まとめ〜漢方薬も治療の一手に〜

不安障害の治療において、基本は抗うつ薬SSRIと脱感作療法の組み合わせが推奨されています。しかし、

  • 副作用や心理的な抵抗
  • 症状の軽さ
  • 安全性重視のニーズ といった理由から、漢方薬を選択することも十分に考えられます。

代表的な漢方薬としては、

  • 半夏厚朴湯(のどのつかえ感と不安)
  • 抑肝散(イライラや興奮の鎮静)
  • 加味帰脾湯(不眠やだるさを伴う不安) の3種類があり、それぞれ特徴に応じた使い分けがされています。

漢方薬単独で完全に不安障害を治すのは難しいこともありますが、症状を和らげる「助け」としては十分に有効です。そして、可能な範囲で不安を回避せず、徐々に苦手場面に慣れていく「脱感作」を並行することで、さらに改善を目指していくことが大切です。