【チック症】症状の特徴と日常生活の対処法について

チック症とは

チック症は、自分の意志とは関係なく、突然まばたきや咳払いなどの動作が繰り返される症状です。

この症状は、特に子供から青年期にかけて
自然に消えることが多いですが、成人してからも
続いたり、再発する場合もあります。

このため、単なる癖と区別するのが難しく、
周囲に誤解されることもあります。

今回は、この症状についての解説や対応方法に加え、
症状の理解を深め、日常生活での対処法について
ご紹介します。

チック症の特徴と症状

チック症の特徴や症状は、まばたきや首振り、
咳払いといった動作が、繰り返し現れる神経系の
機能障害です。
一見すると単なる癖のように見えることが多いですが、これは脳と神経の発達に関連しています。

この症状は子供の約10人に1~2人に見られ、
その95%は成長とともに症状が軽減します。

日常生活に支障がなく、
周囲が理解を示している場合は、通常、薬物治療は
不要です。

ただし、大人になっても症状が持続する場合や、
治まっていた症状が再発することがあります。

2013年にアメリカ精神医学会が発行した
『DSM-5』では「チック症群」「チック障害群」として疾患分類されています。

かつては、家庭環境の不和などによる
精神疾患と考えられていましたが、最近では脳と神経の発達の不均衡に起因する発達障害の一種として
分類されることが増えています。

チック症にはさまざまな種類があります。

運動性チック

首、顔、口のチック

口の中を噛んだり、舌をこすりつける動作が
繰り返されることで、口腔内に問題が生じることが
あります。
また、口周りをなめたり大きく開けることで、
口の周りに傷やただれができることもあります。

頭を振る動作が続くと、
頭痛や肩こりが起きることもあり、
体調に影響を及ぼす場合があります。

さらに、顔をしかめたり、にらみつけるような動作が
誤解を招くこともあります。

上半身のチック

腕が突然動くことで、自分や他人を誤って
叩いてしまうことがあります。
また、手が不意に動いて、
筆記用具や食器を持ちにくくなったり、
落としてしまうこともあります。

下半身のチック

飛び上がる動作が繰り返されると、体が休まらず、
睡眠不足になりがちで、結果として遅刻することが
増えるかもしれません。

また、足をくねらせる動作のために
歩行が困難になったり
転倒しやすくなることもあります。

その他のチック

チックによって、自転車や自動車の運転が危険に
なることがあり、運動や仕事に支障をきたす場合も
あります。
また、チックの影響で骨折するリスクがあり、
慢性的な痛みやしびれが伴うこともあります。

音声チック

言葉や喉のチック

状況にそぐわないタイミングで、
人の名前を発してしまうことがあります。

また、面接や試験の際に、
チック性の咳払いが出るのではないかと
不安になることもあります。

乱暴な言葉が無意識に出てしまうことを恐れて、
外出をためらうこともあります。

「アッ、アッ」などの奇声が周囲にうるさいと
感じられることもあるでしょう。

単純な動作としては、
首を傾けたりまばたきをするものから、物に触れたり、他人の言葉を繰り返したりするような
複雑な動きまであります。

また、チックが現れる部位もさまざまで、
脚でジャンプしたり、口で不自然にあくびをするなど、多様なバリエーションが見られます。

共通する特徴として、日常の動作や声が、
本人の意思に反して出てしまう点が挙げられます。

『DSM-5』によると、
チック症は18歳未満で1年以上続き、
運動性チックが一種類または複数、
あるいは音声チックが現れるものと定義されています。

運動性チックと音声チックが同時に現れる場合は
トゥレット症候群とされ、この症候群も主に小児から
青年期に発症すると考えられています。

トゥレット症候群の発症率は10,000人に4〜5人で、
神経系の難病として認定されています。

『DSM-5』によると、チック症の診断基準は
18歳未満で発症したものとされ、大人になってから
初めてチックが現れるケースは極めて稀です。

成人でチック症が見られる場合、ほとんどは幼少期に
診断されなかった症状が持続、悪化、または
再発したケースであると考えられています。

もし大人になってから初めてチックの症状が出た場合、それはチック症ではなく、以下のような異なる病気や
その後遺症、薬の副作用の可能性が考えられます。

  • 後遺症による中枢神経障害、
    例えばハンチントン病やウイルス性脳炎
  • 薬物使用による副作用、例えばコカインなど
  • 他の脳神経疾患、例えばてんかんや
    ジストニアなど

さらに、チック症は他の発達障害や強迫性障害などの
精神疾患と併発することがあるとされ、
この点についても研究が進められています。

チック症は症状が多岐に渡るため、外見上は
単なる癖との区別が難しく、本人や周囲が深刻に
受け止めないことも多くあります。

また、チック症の自覚がある場合でも、日常生活に
支障がなければ診断や治療が必要ないとされることも
あります。

チック症は脳の発達におけるバランスの崩れによって
引き起こされる障害です。

なぜ突発的な動きや日常生活に合わない声が
出てしまうのか、そのメカニズムは完全には
解明されていませんが、最近の研究では、チックには
以下の2つの原因と3つの誘因が関わっていると
考えられています。

■チック症の原因とは?■

■チック症の原因とは?■
原因1:神経伝達物質の代謝や分泌が影響している

チック症の症状が抑制されることがあることから、
ドーパミンという神経伝達物質の働きが関係している
可能性が指摘されています。

このため、チック症はドーパミンを含む神経伝達物質の代謝や、それに伴う神経回路の過剰活動が一因であると考えられています。

この分野ではさらに研究が進められています。

原因2:神経の過剰活動しやすい体質

チック症を発症しやすい体質には
遺伝要因も関与しているとされますが、
子供の10人に1〜2人がチック症を経験することから、
この体質は特に珍しいものではないとされています。

誘因1:成長や一時的な体調の変化がチックの増減に関係する

チックが出現する子供の95%は、成長とともに症状が
軽減する傾向にあるとされています。

つまり、成長期後期には症状が落ち着くことが多いと
考えられます。

その一方で、月経前緊張症がチックの再発や悪化に
関連するケースや、慢性的な頭痛、腹痛、睡眠不足が
チックの増減に影響する可能性も報告されています。

誘因2:環境の変化が症状の出現を促す

チックは
精神的ストレスによって症状が変化することから、
環境要因が重要であるとされています。

具体的には、親しい人との別離や転職、昇進などの
プレッシャーがチックの引き金になることがあります。

環境に慣れると症状が軽減することもあります。

誘因3:繊細で誠実な性格の人に出やすい

環境要因と関連して、性格とストレスへの感受性が
密接に関係しているため、繊細な人ほどプレッシャーを感じやすく、それがチックの発症に繋がる可能性が
臨床心理学的に推測されています。

チック症による困難

・チック症がもたらす困難には、
大人も子供も共通する部分があります。

  1. 自分の意思で制御できない症状があること
  2. 周囲から理解されにくいこと
  3. 誤解や悪意を受けることがあること
  4. 援助の求め方が分からないこと

これまでの話から、
チック症は学校や仕事に大きな影響を与えるほど深刻な障害にはなりにくく、また癖と区別するのが
難しいため、障害として認識されにくい傾向が
あります。

さらに、「発達障害」や「精神障害」に対する
社会的な誤解や偏見が存在するため、チック症の理解や受容が困難な状況も見られます。

そのため、チック症において最大の困難は、
見た目では分からない隠れた障害として
誤解されることや、社会から排除される恐れを
感じることであると言えます。

特に大人にとっては、社会的排除が生活の困窮に
直結する可能性が高いため、その恐怖はさらに
増大すると考えられます。

チック症に対する最も効果的な対処法は、
先に述べたようにストレスを避け、
環境を整えることです。

しかし、社会人は仕事上のストレスを日常的に
抱えていることが多いです。

そして、チック症の当事者も同様です。

つまり、大人におけるチック症の困難は、
社会が生み出していると言えるでしょう。

実際、チック症やその重症例である
トゥレット症候群に悩む人々は、
長い間情報不足や治療法の欠如、そして周囲からの
誤解や偏見に苦しんできたと報告されています。

しかし、ここ10年ほどで障害に対する研究や理解が
徐々に進み、当事者や支援者の声が少しずつ
受け入れられるようになっています。

NPO法人による支援団体の設立や、
地域に広がる自助グループの活動などがその一例です。

チック症の治療

・チック症の治療は、個々の症状の程度に応じて
異なるアプローチが取られます。

『軽度の場合』ストレス軽減と心理療法の提案

・まず、
ストレスを軽減するための環境調整を行います。

・医師や臨床心理士によるカウンセリング、箱庭療法、認知療法、行動療法などの心理療法も有効です。

・本人だけでなく、
家族やパートナーへの理解を深めるためのガイダンスも治療の一環として行われます。

『重度の場合』薬物療法と認知行動療法の実施

・環境調整だけでは対処が難しい場合、
薬物療法が有効とされています。

・症状が長期化したり、頻度が高くなったりした場合、ドーパミンに作用する抗精神病薬が
処方されることがあります。

・薬には副作用として
ふらつきが出ることがありますが、チックの発症頻度を減少させ、動きや声の抑制に効果があると
報告されています。

・薬物療法と併せて、
チックの管理をしやすくするための認知行動療法も
注目されています。

チック症は一時的に激しい症状が出ることがあっても、時間とともに改善する場合があります。

しかし、脳神経の働きに基づく症状であるため、
環境や体調の変動によって再発することがあります。

ケガや風邪のように簡単に治るわけではないため、
チック症は苦悩の原因となることが多いです。

それでも、チック症は自然に軽減する傾向があり、
環境調整が有効な治療法とされています。

そのため、リラックスできる生活習慣を
身につけることが重要です。

次に、生活で実践できる3つの工夫を提案します。

チック症がある大人の生活の工夫

チック症がある大人の生活の工夫

・チック症には
環境の調整が効果的な治療法であるため、
リラックスできる生活習慣を身につけることが
大切です。

  1. 理解者を増やす

周囲の理解を得ることで、不安や緊張が和らぎます。
医療機関や自助グループは、
症状を理解してもらうためのパンフレットの作成や
啓発活動を行っています。

  1. 辛いときに避難できる場所を確保する

チックの兆しを感じたときには、
ひとりで過ごせる場所を用意しておくことが
役立ちます。場所は状況によって異なりますが、
学校では保健室や空き教室、職場では会議室や
備品置き場などが一時避難の場所として使われることがあります。

  1. 自分に合ったリラックス法を見つける

ストレスを溜めない工夫として、
自分に合ったリラックス法を見つけることが、
チック症の軽減や再発予防に役立ちます。
リラックス法の一例として、十分な睡眠、深呼吸、
ストレッチ、好きな香りの小物や飲み物を
持ち歩くことなどが挙げられます。
ヨガなどの軽い運動は「心地よい体の状態」を
作り出し、心身のバランスを取るのに役立つと
されています。自分でリラックスできる状態を
コントロールできるようになると、緊張が和らぎ、
脳神経の反応も安定するかもしれません。

チック症の主な症状は、
本人が意図せずに繰り返してしまう動作や発声です。

この症状に苦しむのは当事者自身です。

周囲のサポートが必要な場合、
以下の点に注意してください。

■周囲の人にできること

  1. チック症を理解する

チック症は脳の機能障害によるものであり、当事者が
意図的に行動しているわけではありません。
症状を理解することが重要です。繰り返される行動に
イライラすることがあるかもしれませんが、
意図的なものではないことを理解してください。

  1. 「温かい無視」を実践する

「温かい無視」とは、
症状を理解したうえで見て見ぬふりをすることです。
当事者を傷つけないように配慮しましょう。
症状の変化に寛容であることも支援の重要な要素です。

  1. 必要に応じて支援を提供する

チック症についての理解が乏しい場合、
当事者が自分の症状に気づいていなかったり、
受け入れられなかったりすることがあります。
適切な距離を保ちながら、相談に乗るなどの支援を
提供することができます。

チック症を抱えながらも成長しようと努力する人々が、社会的な障壁に直面することなく生きられる社会を
目指すことが理想です。

チック症の有無に関わらず、すべての人が快適に
生活できる社会の実現を目指しましょう。

●チックは一見癖のように見えることが多く、
自分で止められると誤解されやすいものですが、
脳神経の発達のアンバランスによる障害です。

●誤解や悪意を受けることもあり、当事者は社会に
適応するのに苦労しています。

●チック症は子供だけでなく
大人にも見られる症状であり、症状が重くなくても
苦しさを感じる場合は、専門医に相談することが
大切です。

周囲の人々はチック症の特徴を理解し、当事者の
困りごとに寄り添い、サポートを心掛けることが
求められます。

チック症の根本的な治療法は
まだ確立されていませんが、研究は進んでおり、
適切な治療を受けることで症状は緩和されます。

当事者の症状や生活状況が少しずつ認知され、
支援の取り組みも広がっています。

以上が、チック症の症状理解と
日常生活における対処法の概要です。