アダルトチルドレン(AC)とは~その定義・問題点・治療法について~

近年、メディアや書籍などで取り上げられる機会が増えた

「アダルトチルドレン(AC:Adult Children)」という言葉。

クリニックでも、患者さんから「自分はアダルトチルドレンだと思う

と、相談されることが増えてきました。

しかし、その一方で、アダルトチルドレンという言葉の意味を正しく理解していないケース

少なくありません。

今回は、アダルトチルドレンとは何か、その特徴、抱えやすい問題

そして治療について、わかりやすく解説していきます。

1.アダルトチルドレンとは何か

アダルトチルドレンとは、「機能不全家庭」で育ったことにより

成人してからも心に深い傷を抱えている人を指します。

アダルトチルドレン(AC)とは~その定義・問題点・治療法について~

「機能不全家庭」とは、子供が安心して成長するために

必要な役割を十分に果たしていない家庭のことを言います。

本来、家庭は子供にとって絶対的な安心の場であり

無償の愛を通して、愛情や自立を学んでいく場所です。

親から大切にされることで、子供は自己肯定感を持ち

社会に出るための準備をしていきます

しかし、機能不全家庭ではこのプロセスが正常に行われません。

機能不全家庭の例としては、

  • 親が虐待を行う家庭
  • アルコール依存症の親がいる家庭
  • 夫婦間の争いが絶えない家庭
  • 過保護・過干渉が過度な家庭 などが挙げられます。

このような環境で育った子供は、十分な愛情を受けることができず

必要な教育も欠如したまま成長します。その結果

成人しても人間関係に苦しんだり

心に深い孤独感や自己否定感を抱え続けることになるのです。

これがアダルトチルドレンの状態です。

アダルトチルドレン(Adult Children)という言葉は

直訳すると「大人の子供」となり、「精神的に未熟な大人」という誤解を受けやすいですが

そうではありません。

子供時代に受けた心の傷が大人になっても癒されずに残っている人

表しており、決して本人の努力不足や未熟さの問題ではないのです。

なお、アダルトチルドレンは病名ではなく、正式な診断基準もありません。

そのため、医師による診断を受けるわけではなく、状態像を表す言葉として用いられます。

アダルトチルドレンのタイプ

アダルトチルドレンは

家庭内で生き延びるためにとった行動パターンにより、いくつかのタイプに分けられます。

  • 優秀なヒーロータイプ
    成績優秀で「良い子」として振る舞い、親の期待に応えようと必死に努力するタイプです。
  • 問題児のスケープゴートタイプ
    問題行動を起こすことで、家庭の中で自ら悪者になり、家族の問題を背負い込もうとするタイプです。
  • 目立たないロストワンタイプ
    存在を消すかのように目立たず、家庭内の波風を立てないようにするタイプです。
  • ピエロタイプ
    笑いや失敗を演じて家庭の緊張を和らげようとするタイプで、自分の本当の感情を見失う傾向があります。
  • 世話焼きのケアテイカータイプ
    家族の世話に徹し、自分の気持ちを抑えて家庭を支えようとするタイプです。

2.アダルトチルドレンが抱える問題

アダルトチルドレンの根本的な問題は

「無償の愛を受けられなかった」ことにあります。機能不全家庭では、子供は常に親の顔色を伺い、愛されるために「良い子」を演じたり、逆に「悪い子」になることで

関心を引こうとします。

つまり、愛情が無償ではなく、条件付きになってしまうのです。

このような家庭環境で育った結果、成人後も以下のような問題を抱えやすくなります。

  • 自分の感情が分からない
  • 自分の意見が持てない
  • 自尊心が低く、自分に価値を感じられない
  • 常に虚しさを感じる
  • 完璧主義になり、少しの失敗でも強く落ち込む
  • 他者との距離感が分からず、依存や孤立に悩む
  • 人間関係において損得で考えてしまう
  • 幸せを感じることに罪悪感を持つ
  • アルコール、ギャンブル、買い物などに依存しやすくなる

このような心理状態は、うつ病、パニック障害、パーソナリティ障害など

他の精神疾患を引き起こすリスクも高めてしまいます。

アダルトチルドレンの影響は、単に「生きづらさ」だけではなく

心身の健康にも深刻な影響を与えるのです。

3.アダルトチルドレンは治すことができるのか

アダルトチルドレンの苦しみの原因は、子供時代の家庭環境にあります。

過去をやり直すことはできませんが、今から「自分を取り戻す」ことは可能です。

ただし、アダルトチルドレンの回復には時間がかかります。

一朝一夕で治るものではなく、丁寧に、自分自身と向き合っていく必要があります。

回復へのステップ

  1. 自分は悪くないと理解する
    まず最初に理解しなければならないのは、「アダルトチルドレンになったのは自分のせいではない」ということです。
    非力な子供だった自分が、家族を守ろうと必死に頑張った結果なのです。自分を責める必要はありません。むしろ、当時の自分をねぎらい、褒めてあげることが重要です。
  2. 感情を取り戻す練習をする
    これまで抑え込んできた自分の感情に気づき、少しずつ表現していく練習をします。「自分は今、悲しい」「自分はこれが嫌だ」と正直な気持ちを認めることから始めます。
  3. 主体性を育てる
    アダルトチルドレンは、他者中心の生き方を身につけてきました。これを、自分中心、つまり「自分の意志で行動する」スタイルに少しずつ変えていきます。
    たとえば、「本当はこうしたい」「これは嫌だ」と思ったら、それを大切にする訓練をします。
  4. 適切な支援を受ける
    心理療法やカウンセリングを受けることも有効です。専門家と一緒に、自分の過去を整理し、回復への道を歩むサポートを受けることができます。

最後に

アダルトチルドレンは、過去の環境によって生まれた苦しみです。

しかし、時間と努力をかければ必ず乗り越えることができます。

アダルトチルドレン(AC)とは~その定義・問題点・治療法について~

「自分は悪くなかった」「これからの人生は自分で選び取れる」と信じて

少しずつ自分自身を取り戻していきましょう。

あなたが自分自身を理解し、大切にできるようになる日を、心から応援しています。