近年、発達障害に対する社会の認知が進む中で、「大人のASD(自閉スペクトラム症)」と診断される方が増えています。しかし、ASDの特性の強さが必ずしも「生きづらさ」や「社会不適応」と直結するわけではありません。では、実際に不適応につながる要因はどこにあるのでしょうか。
本記事では、「大人のASDで不適応につながる特徴5つ」について、背景や対策も交えながら、丁寧に解説していきます。

まず、「ASD(自閉スペクトラム症)」とは何かを振り返りましょう。ASDは発達障害の一種で、大きく「社会性の障害」と「強いこだわり」という二つの特徴を持っています。本来、幼少期に診断されることが多いですが、中には大人になってから初めて診断されるケースもあります。
大人になって診断される場合、多くは「社会不適応」がきっかけになります。不適応とは、周囲の人間関係や組織とうまくなじめない状態を指します。この不適応が続くと、内面には「うつ病」や「不安障害」などの精神的不調が生じ、外側には「怒り」や「対人トラブル」といった形で現れることもあります。
さらに、不適応が慢性化すると「二次障害」を引き起こすリスクもあります。失敗の繰り返しにより自己肯定感が低下し、さらにうつや対人恐怖、時には衝動的な行動に至るケースも報告されています。
このように、ASDの特性そのものが直ちに問題なのではなく、それが周囲とうまく噛み合わず、不適応や二次障害につながることが問題なのです。
ここからは、実際に大人のASDにおいて不適応を引き起こしやすい特徴を5つに絞り、それぞれ背景と対策について見ていきましょう。

ASDの方は、良かれと思って自身のこだわりや価値観を他者に強く押し付けてしまうことがあります。しかし、相手にとってはこれが「圧力」や「強制」のように受け取られ、結果として人間関係のトラブルにつながることがあります。
背景には、「自分と他者は異なる価値観を持っている」という感覚が薄れがちであることや、対人交流における柔軟な調整が苦手であることが挙げられます。
【対策】

意図せず相手を傷つける発言をしてしまうのも、ASDによる社会性の困難の一つです。悪気はなくとも、無礼に受け取られ、相手に恨みを買うことがあります。こうしたことが積み重なると、孤立感や不適応につながっていきます。
背景には、相手の感情やその場の雰囲気を直感的に読み取ることが難しい点が挙げられます。また、大人の場合、周囲があえて指摘しないことも多く、自覚しにくいのも課題です。
【対策】

ASDでは感覚過敏がみられることがあり、職場など日常生活の中で強いストレスを感じやすくなります。例えば、騒音、強い光、匂い、肌触りといった刺激に対し、過剰に反応してしまう場合です。
このストレスが持続すると、精神的な消耗が進み、不適応や体調不良を引き起こすリスクが高まります。
【対策】

ASDの特性として、同時に複数のことをこなす「マルチタスク」が非常に苦手な傾向があります。しかし、現代の職場ではマルチタスクが求められる場面も多く、それが原因でミスを重ね、評価が下がり、さらなるストレスを招く悪循環に陥ることがあります。
背景には、「一つの物事に強く集中する」特性があり、興味や注意の切り替えが難しい点があります。
【対策】

ASDの方は、予定されていない変更や、急なトラブル対応が苦手な傾向があります。このため、予測できない事態が続くと、大きなストレスを感じやすくなります。
背景には、柔軟な思考の切り替えが難しいという特性があります。また、事前に見通しを立てることで安心感を得るため、予定外のことには過剰に反応してしまうのです。
【対策】
ASDの特性自体は、その人の個性の一部であり、必ずしも問題ではありません。しかし、特性が周囲の環境と噛み合わなかったとき、不適応や二次障害のリスクが生まれることは事実です。
大切なのは、自分自身の特性を正しく理解し、それに合わせた工夫や環境調整を行うことです。そして、無理をせず、自分に合ったペースで生きることが、より豊かで安定した人生につながっていきます。
この記事が、大人のASDで悩んでいる方や、その周囲の方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。