統合失調症は、現実と非現実の区別がつきにくくなる病気であり、主に幻聴や妄想といった症状が知られています。しかし、症状が激しい「急性期」だけが統合失調症ではありません。病気にはいくつかの「病期」があり、それぞれの段階で現れる症状や必要な支援が異なります。
今回は、統合失調症を理解するうえで欠かせない4つの病期について、詳しく解説していきます。

統合失調症は、脳のドーパミン系の異常により、思考や感情、現実認識に障害が起こる精神疾患です。人口のおよそ1%が生涯のうちに発症するといわれており、珍しい病気ではありません。
発症年齢は思春期から30歳前後が多く、一度発症すると、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す「慢性の経過」をたどることが一般的です。
主な症状は次の4つに分類されます。
• 陽性症状:幻聴、妄想など、本来ないものが現れる
• 陰性症状:意欲低下、感情の平板化など
• 認知機能障害:記憶力や注意力の低下、思考の困難
• 前駆症状:急性期の前段階で起こる目立たない異変
これらの症状は病期によって現れ方が異なります。では、実際に病期ごとの特徴を詳しく見ていきましょう。
統合失調症は、症状の現れ方と治療の必要性に応じて、以下の4つの病期に分類されます。
〜急性期の「前触れ」を捉える〜
前駆期は、急性期に至る前の「前兆」の時期です。この段階では、幻聴や妄想といった目立つ症状はまだ現れませんが、本人や周囲にとって違和感のある変化が見られます。
• 漠然とした不安感
• 疲れやすい、眠れない
• 感情表現が乏しくなる
• 人付き合いを避ける
• 「誰かに見られているかも」と感じる(被害念慮)
前駆期は非常に重要な時期です。本人自身も体調不良や精神的違和感を感じていることが多く、周囲が早く異変に気づき、医療機関につなげることが悪化防止につながります。
初めての発症(初発)であれば、十分な休息と早期受診を心がけます。再発の場合は、早めの薬の調整と休養が必要です。
〜幻聴や妄想が強まる時期〜
急性期には、脳のドーパミン活性が過剰になり、現実と空想の区別が困難になります。陽性症状(幻聴、妄想、混乱)が激しくなり、日常生活に大きな支障をきたします。
• 声が聞こえる(命令幻聴など)
• 被害妄想(「誰かに監視されている」など)
• 異常な興奮、暴力的な行動
• 自傷・他害のリスク
この時期は、薬物治療が中心になります。抗精神病薬を服用し、脳の過剰な興奮を抑えることが最優先です。
また、刺激を減らして安静を保つ環境(静かな部屋、規則正しい生活)を整えることも大切です。
危険性が高い場合や治療抵抗性が強い場合は、入院治療が必要になることもあります。入院により本人の安全を確保し、十分な休養と薬物調整を行います。
〜症状は落ち着いたが、意欲が出ない〜
急性期の激しい症状は治まるものの、今度は「陰性症状」が目立つようになります。感情の平板化、無気力、引きこもり傾向などが続きます。
• 何をするにもやる気が出ない
• 感情表現が乏しい
• 対人関係を避ける
• 基本的な生活リズムが崩れる(昼夜逆転など)
薬の服用は継続しつつ、少しずつ生活のリズムを整えていきます。焦らず、本人のペースに合わせたリハビリテーション(デイケア、作業療法など)が有効です。
訪問看護などの地域支援を活用して、無理なく社会復帰への基礎作りを行います。
この時期に焦って無理をすると再発リスクが高まるため、支援者側も「ゆっくり回復」を意識することが大切です。
〜社会復帰を目指す時期~
活動性が戻り、少しずつ社会との関わりを再開できるようになります。ただし、認知機能の障害(注意力の低下、柔軟な思考の困難さ)が依然として残っていることが多いです。
• 注意が散漫になりやすい
• 計画的に行動するのが苦手
• ストレス耐性が低く、プレッシャーに弱い
• 頑張りすぎると急激に疲れてしまう
無理にフルタイムで働く、難易度の高い仕事に戻ると再発のリスクが高まるため、段階的な社会復帰を目指します。
障害者就労支援、SST(社会生活技能訓練)、地域のサポート機関などを利用し、本人に合ったペースで生活の幅を広げていきます。
また、再発防止のためには、前駆症状への注意が不可欠です。少しでも不調のサインが出た場合は、すぐに休養をとり、主治医に相談しましょう。

統合失調症は、「急性期」だけでなく、「前駆期」「休養期」「回復期」という異なる段階をたどる病気です。それぞれの時期で目立つ症状や適切な対応が異なるため、病気の流れを理解しておくことがとても大切です。
病期ごとのまとめ
• 前駆期:小さな違和感や不安が前兆として現れる
• 急性期:幻聴・妄想など陽性症状が激しくなる
• 休養期:意欲低下など陰性症状が前面に出る
• 回復期:活動性が戻るが認知機能の課題が残る
特に重要なのは、前駆症状の段階で対応することです。早期介入により、急性期への移行を防ぎ、再発リスクを減らすことができます。
焦らず、無理せず、周囲の理解と支援を得ながら、長い目で回復を目指しましょう。