発達障害は、一般的には幼少期に発見されることが多い障害です。しかし近年、社会人として日々を過ごすなかで、職場や家庭での不適応から初めて自分の特性に気づく「大人の発達障害」も注目されています。
幼少期に見逃され、成長してからようやく自分の生きづらさの原因を知るというケースは少なくありません。今回は、発達障害の基本から「大人の発達障害」として気づきやすい場面5つとその対処法をわかりやすく解説します。
発達障害と「大人の発達障害」とは
発達障害とは、生まれつき脳の特性に偏りがあることによって、生活や対人関係で困難が生じる障害の総称です。知的な遅れはない場合も多く、「得意なこと」と「苦手なこと」の差が非常に大きいことが特徴です。
代表的な発達障害には、以下の2つがあります。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
- 主に「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特性を持つ。
- 忘れ物が多い、物をなくす、思いつきで発言・行動する、といった傾向がある。
ASD(自閉スペクトラム症)
- 社会的なコミュニケーションの困難、特定のことへの強いこだわりが見られる。
- 空気を読まずに発言する、相手の気持ちが汲めないなどの特徴が目立つ。
これらの特性は、幼少期に学校や家庭での不適応を通じて発見されることが多く、診察や心理検査を経て診断が確定されます。その後、必要に応じて療育的な支援が行われます。
しかし、軽度の特性であったり、周囲の理解や環境の支えがあった場合には、幼少期に診断されないこともあり、成人後に社会生活の中で困難を抱えることで初めて発覚するケースがあります。これが「大人の発達障害」と呼ばれるものです。
大人の発達障害の特徴
- 社会人になってから、仕事や家庭での不適応が顕著になり、気づく。
- 子どもの頃に比べて、特性が軽度であっても、複雑な社会の中では顕在化しやすい。
- 二次障害(うつ病、適応障害、不眠症など)を伴うことが多く、早期の対応が求められる。
「大人の発達障害」に気づく主な5つの場面
それでは、実際にどのような場面で、自分の発達特性に気づくことが多いのでしょうか。代表的な5つの場面をご紹介します。
1. 家での生活がうまくいかない
一人暮らしを始めた途端、生活の管理がうまくいかず、家事が滞ったり、大事な書類をなくしてしまうなどのトラブルが頻発することがあります。
背景となる特性
- マルチタスクが苦手(ADHD)
- 注意力や集中力の低下(ADHD)
- 整理整頓ができない(ADHD)
よくある例
- ゴミ出しや洗濯を忘れる
- 書類を紛失し手続きができない
- 食事や睡眠のリズムが乱れる
対処法
- ひとつひとつのタスクをリスト化し、目に見える形にする
- スマホのリマインダーや家事アプリを活用する
- 集中しやすい時間帯に重要な作業をまとめる
2. 仕事がうまくいかない
学生時代には目立たなかった困難が、社会人になってから顕在化することがあります。遅刻や忘れ物、指示の理解不足、対人トラブルなどが続くと、自己評価の低下にもつながりがちです。
背景となる特性
- 時間管理が苦手(ADHD)
- 曖昧な指示への対応が困難(ASD)
- 衝動的な発言や行動(ADHD)
よくある例
- 遅刻を繰り返す、会議を忘れる
- 指示を間違って受け取り、別の作業をする
- 同僚との会話で無意識に失礼な言動をする
対処法
- 出社時間の30分前には準備を終えるようにする
- メモやマニュアルを作成し、理解のズレを減らす
- 自分の特性を職場に共有し可能な範囲で配慮を得る
3. 結婚生活がうまくいかない
配偶者との関係において、自分の特性が強く現れることがあります。無意識に相手を疲弊させてしまい、「カサンドラ症候群」と呼ばれるような心理的負担を相手が抱えるケースも見られます。
背景となる特性
- 強いこだわりによる押し付け(ASD)
- 衝動的な言動(ADHD)
- 過剰適応によるストレス(ADHD、ASD)
よくある例
- 気まぐれな言動で相手を困らせる
- 家事の方法などに対する極端なこだわり
- 相手に支配されやすく、自分が疲弊する
対処法
- 自分の言動を振り返り、パターン化する
- 相手とルールや役割を具体的に話し合う
- 距離を取る必要がある場合は専門家の介入を検討する
4. 子育てがうまくいかない
子育てにおけるマルチタスクや臨機応変な対応が苦手で、育児そのものに大きな負担を感じることがあります。また、子どもへの対応でイライラしたり落ち込んだりしやすくなります。
背景となる特性
- マルチタスクが苦手(ADHD、ASD)
- 非言語コミュニケーションの理解困難(ASD)
- 感情のコントロールが難しい(ADHD)
対処法
- 育児スケジュールを明確化し、視覚化する
- 自分自身のストレス発散方法を確保する
- こども家庭支援センターなどに相談する
5. 発達障害の情報に触れたとき
SNSや書籍などで発達障害についての情報を知り、「自分にも当てはまるのでは」と感じる人は多くいます。これは気づきの第一歩であり、重要な機会となります。
よくある例
- 生きづらさが長年続いている
- 周囲の人との関係がいつもうまくいかない
- 自分だけ社会のルールが理解できないように感じる
対処法
- 精神科・心療内科を受診し、客観的な診断を受ける
- 診断がついた場合は、それに応じた支援や治療を受ける
- グレーゾーンでも、自分の特性に合った生活の工夫を取り入れる
まとめ:気づきは対処の第一歩
「大人の発達障害」は、社会に出てからのさまざまな場面で気づかれることが少なくありません。
以下のような場面に心当たりがある方は、自分の特性を丁寧に見つめ直すことが大切です。
- 家での生活が回らない
- 仕事で何度も同じミスをする
- 結婚生活におけるすれ違いが多い
- 子育てがつらく、イライラしてしまう
- 発達障害に関する情報が自分に当てはまると感じる
気づいたらまずは、「自分を責めないこと」。そして、できることから少しずつ生活の工夫を取り入れ、必要に応じて専門機関への相談も検討しましょう。自分の特性を知り、理解することは、より良い人生への第一歩です。