大人のASDの鑑別診断5つ

大人のASDセルフチェック:鑑別すべき5つの疾患

近年、成人期に初めて発見・診断される「ASD(自閉スペクトラム症)」のケースが増えています。一方で、一見ASDのように見えても、実は他の精神疾患だった、ということも少なくありません。
今回は「大人のASDとその特徴」、そして「ASDと鑑別すべき5つの疾患」について、詳しく見ていきます。

大人のASDとその特徴

ASD(自閉スペクトラム症)は、主に「社会性の障害」と「こだわり」を特徴とする、生まれつきの発達障害です。これまでは、幼少期に発見・診断されるケースが主流でしたが、近年では、成人後に診断される例も増えています。

大人のASDでは、薬物治療は基本的に用いず、日常生活スキルの向上や環境調整を通じて、特性をカバーしていくことが主な対応となります。
成人で診断される方は、特性そのものは比較的軽い場合が多いですが、その一方で、うつ病や対人不安、ストレスによる攻撃性など、二次障害を合併しやすい傾向にあります。

大人のASDの主な症状

  • 社会性の障害
    共感性に欠ける発言や、独特な振る舞いによって誤解を招くことがあります。
  • こだわり
    他者に対して独自のルールを押し付けてしまったり、環境の変化に混乱することもあります。
  • 二次障害
    うつ病や対人恐怖、ストレスからくる精神的な不調が現れる場合があります。

発見されるきっかけ

大人のASDが診断される場面としては、以下が挙げられます。

  • 職場や家庭での不適応の反復
  • 配偶者などからの加害性の指摘(カサンドラ症候群の発症など)
  • 長年にわたる慢性的な生きづらさ

また、成人後は経験の蓄積により、症状が典型的でなくなっていることもあり、他の精神疾患との鑑別が難しい場合もあります。


大人のASDと鑑別が必要な5つの疾患

次に、大人のASDと症状が似ており、鑑別が必要とされる主な5つの疾患についてご紹介します。

1. 社会不安障害

社会不安障害は、人前や対人場面で強い不安を感じる精神疾患です。
幼少期から存在する場合と、特定の出来事をきっかけに発症する場合があります。

  • 共通点
    • 人と関わることを避ける
    • 緊張時に対人コミュニケーションが困難になる
  • 違い
    • 社会不安障害は10代以降に発症することが多い
    • 抗うつ薬(SSRI)などで症状が改善しやすい
    • ASDに比べ、症状の幅が狭い(こだわりや発言の独特さは少ない)

2. ADHD(注意欠陥・多動性障害)

ADHDは、不注意・多動・衝動性を主な特徴とする発達障害です。
ASDとの重複(合併)も珍しくありません。

  • 共通点
    • 幼少期から持続する特性
    • 感覚過敏や過集中など、一部の症状が重なる
  • 違い
    • ADHD単独では対人関係のトラブルは比較的少ない
    • ストレスに対する反応の範囲が広い
    • ミスの原因が、ASDでは複雑な条件下によるのに対し、ADHDでは純粋な不注意による

3. 統合失調症

統合失調症は、脳内のドーパミン異常により、幻覚や妄想が生じる精神疾患です。
特に急性期において、ASDのストレス時の混乱と似た様子を見せることがあります。

  • 共通点
    • 強い混乱時の対人コミュニケーションの困難
    • 妄想とASDの強いこだわりが似る場合がある
  • 違い
    • 統合失調症はある時期から急激に発症する
    • 抗精神病薬により症状が大きく改善する
    • 回復後は「陰性症状」(意欲低下など)が目立つ一方、ASDでは特性自体は持続する

4. 愛着障害

愛着障害は、幼少期における養育者との不適切な関係に起因する対人関係の問題です。

  • 共通点
    • 感情のやり取りの困難
    • 表情の乏しさ
    • 感情調整の困難
  • 違い
    • 愛着障害は、環境の安定によって症状が改善することがある
    • ASDでは、環境を整えても基本的な特性は大きく変わらない
    • 病歴や養育環境の詳細な聴取が診断に重要

5. 強迫性障害(OCD)

強迫性障害は、「強迫観念」(不合理と自覚しつつも頭に浮かび続ける考え)と、それに基づく「強迫行為」(確認、手洗いなど)が特徴の疾患です。

  • 共通点
    • こだわりの強さ
    • 他者を巻き込む行動
    • 変化への適応困難
  • 違い
    • 強迫性障害は、10代以降に症状が急激に悪化する傾向がある
    • 強迫観念は突然侵入する思考として現れるが、ASDのこだわりは生来的に持続している
    • 普段の対人関係において、ASDは広範囲に困難を持つが、強迫性障害では強迫症状以外では円滑な場合が多い

まとめ

今回は、「大人のASDの鑑別診断5つ」について、詳しく見てきました。
大人のASDは、近年、社会的な認知度の向上に伴い診断される機会が増えています。しかしながら、実際には他の精神疾患である場合もあり、慎重な鑑別が求められます。

ポイントとして押さえておきたい主な疾患は、以下の5つです。

  • 社会不安障害
  • ADHD(注意欠陥・多動性障害)
  • 統合失調症
  • 愛着障害
  • 強迫性障害

正確な診断には、病歴の詳細な聴取、症状の性質の分析、心理検査など、多角的なアプローチが重要となります。
「ASDかもしれない」と感じた方は、自己判断で悩み続けず、専門機関での相談を検討することをおすすめします。