今回、寄せられたご相談はとても率直で、胸に迫るものでした。
「ASDです。嫌われ続けてつらいです。」
このような声に、私は「できる対策はして、あとは胸を張って生きていきましょう」とお伝えしたいと思います。ただ、それだけではあまりにも乱暴に聞こえてしまうかもしれません。ですので、ここでは「なぜASDの方が対人関係でつらさを感じやすいのか」、そして「どう向き合えばいいのか」について丁寧に掘り下げてお話ししたいと思います。

まず前提として、ASD――正式には「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)」とは、主に二つの特徴を持つ発達障害です。
ASDは子どものころに診断されることも多いですが、大人になってから気づいたり診断されたりすることも珍しくありません。いずれの場合も、周囲とうまくいかないことから、「二次障害(うつ病や不安障害など)」が生じやすい傾向にあるのが特徴です。
特に、孤立感や対人ストレスが積み重なると、「自分はダメな人間だ」と感じてしまうこともあり、そこから自己否定感が強くなってしまう場合もあります。

相談者の方が直面している「嫌われ続けるつらさ」には、主に2つの背景が考えられます。
この2つは性質がまったく異なるため、対策の方向性も大きく違います。ひとつずつ見ていきましょう。
もし相手にとって「困ること」「不快に感じること」を無意識にしてしまっている場合、それは「実害」と受け取られます。ここで重要なのは、「悪意があるかどうか」ではなく、「結果として相手が困ったかどうか」だという点です。
たとえば――
これらは「自分では良かれと思っていた」「悪気はなかった」としても、相手には「傷つけられた」「疲れた」と感じられることがあります。とくにASDの方は、自分の行動が相手にどのような影響を与えているかを察しにくいという傾向があります。
対策として大切なこと
このような「無意識の他害性」を減らすには、まず行動分析的な視点が役立ちます。
という視点で、自分の行動の結果を少しずつ振り返ってみましょう。地道ですが、この積み重ねが非常に大切です。
また、今ではAIやインターネットで「こういう場面ではどう振る舞えばよいか」といった情報を調べることもできます。身近な人にアドバイスを求めることが難しい場合は、客観的な基準を学ぶ方法として役立つでしょう。
もう一つのパターンとして、たとえ相手に実害を与えていなくても、「なんとなく変わっている」「空気が読めない」といった印象だけで距離を置かれてしまう場合があります。
これはASDの「社会性の障害」によって、表情や話し方、間の取り方が独特になってしまうことが背景にあります。つまり、「中身ではなく、見え方・印象」で判断されてしまうということです。
この場合のつらさは、非常に根深いものがあります。なぜなら、「何もしていないのに嫌われる」感覚が強くなり、「自分の存在自体が否定されているようだ」と感じてしまうからです。

この場合に必要な姿勢
こうした印象やイメージの問題に対して、すべてを「自分が変わる」ことで対応しようとするのは、正直とても苦しいことです。
ですので、この場合は「できる範囲で誤解を防ぎつつ、あとは自分を信じる」という姿勢が大切になります。
もちろん、清潔感を保つ、丁寧な言葉づかいを意識するなど、一般的に「印象をよくする工夫」は意味があります。しかし、他人の好みに完全に合わせる必要はありません。
「自分はこれでいいんだ」と、自分自身を信じること。それが、誤解されやすい社会の中でも、心を保って生きていくための大切な土台になります。
ASDであることによって、対人関係のストレスが多く、嫌われてしまうことも確かにあります。しかし、それは「あなたという存在が悪い」ということでは決してありません。
ASDは脳の特性であり、向き不向きがはっきりと出るだけです。実際、ASDの方は以下のような強みを持つことも多いです。
これらは、社会にとって必要な才能でもあります。
だからこそ、できる範囲で周囲との摩擦を減らしつつ、胸を張って生きてほしいのです。

冒頭の質問――「ASDです。嫌われ続けてつらい」という言葉には、深い悲しみと孤独、そして「どうしたらいいのか分からない」という切実な思いが込められていたと感じます。
その問いに対する私なりの答えは、こうです。
「できる工夫はする。そして、それでもダメなときは、自分の価値を信じて胸を張る」
完璧に誰からも好かれる人などいません。大切なのは、「嫌われること」を恐れるあまり、自分を否定しないことです。あなたがあなたであることを、どうか忘れないでください。
心からのエールを送ります。