近年、発達障害は脳の発達に関連する障害であるという認識が急速に広まっています。自閉スペクトラム(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)など、さまざまな症状が含まれます。今回は、発達障害の種類、その原因、周囲の支援方法、そして支援者が果たすべき役割について説明します。
発達障害は病気ではなく、生まれ持った認知的特性の偏りにより、日常生活において行動やコミュニケーション、学習にさまざまな困難が生じるものです。これらの困難は環境との相互作用で現れるため、適切な支援とはその人に合った環境を整えることです。医療機関での診断や治療は、本人や家族の負担を軽減し、支援を行うための補助手段と捉えられます。

発達障害は、一般に幼少期に現れる脳機能の障害であり、発達障害者支援法第2条に基づいて、自閉スペクトラム、学習障害、注意欠如・多動症などが含まれます。ICD-10ではこれらの障害が「F80」から「F98」に分類され、DSM-5では知的能力障害やコミュニケーション障害、運動障害、チック障害などが該当します。発達障害を持つ人々は、生まれつきの特性が原因で日常生活や社会生活において制約を受けることがあります。発達障害は病気とは異なり、発達の過程における質的・量的な違いや偏りによって生じるもので、行動やコミュニケーションに影響を与えることがありますが、根本的な治療法はまだ存在しません。しかし、適切な支援を受けることで、社会生活上の困難を軽減することは可能です。発達障害は脳の機能障害が原因であり、知的には正常であっても、学校や家庭での適応に困難を抱えることがあります。
自閉スペクトラムの子どもが授業中に離席する場合、その特性に応じた支援が求められます。たとえば、社会性に課題がありルールが理解できない場合には、まず社会的ルールを教えることから始めます。コミュニケーションの問題で授業内容が理解できない場合には、視覚的な優位性を活かして絵を使ったり、視覚的に理解しやすい形で情報を伝えます。また、想像力の問題で授業の終了時刻が分からない場合には、タイムタイマーなどを使用して予測可能な情報を提供します。こうした支援は、エリック・ショプラーの「氷山モデル」に基づいて、本人の潜在的な特性を評価し、支援方針を考慮することが重要です。障害者権利条約の前文に示されているように、障害がある人が困難に直面した際には、支援が必要です。自閉症スペクトラムにおいては、視覚支援や構造化が有効であるとされ、イギリス自閉症協会が推奨する「SPELL」アプローチが有効です。たとえば、集団活動が苦手な場合には個別や小グループでの活動を考慮し、失敗への不安がある場合には、実際の行動を示して安心感を与えます。また、においに敏感な場合には、給食を避けるためにお弁当などの対応が必要です。個々のケースに合わせて特性を評価し、適切な支援に繋げることが重要です。
発達障害の特性は連続体であり、診断のラインにも明確な境界はありません。日常生活で困難や不自由を感じている人は、発達障害の診断を受ける可能性が高まりますが、これらの特性は誰にでも見られるものです。自閉症スペクトラムの特性の強さを示す指標として、SRSスコアが80程度のケースが増えています。また、診断基準に達しない「グレーゾーン」のケースも増えていると考えられます。発達障害の困難さは環境との相互作用によって現れ、診断基準に達しない場合でも、環境との不適合が困難を増大させることがあります。早期に特性に気づき、適切な支援を提供することで、子どもたちの適応状況を改善できる可能性があります。そのため、日常生活に根ざした支援を通じて安定した環境を提供することが重要です。

過去には、発達障害は稀で特別な症状と見なされていましたが、現在では「症状自体は一般的であり、程度の差はあれど誰にでも見られる」という理解が広がっています。「早期から一貫した支援を提供することで、より良い社会参加が期待できる」という考え方も浸透しています。また、個々の症状に大きな個人差があり、支援への反応も異なると認識されており、すべての子どもが適切な環境調整とエビデンスに基づく療育を受けることが望まれています。
医療の役割は限定的であり、重要なのは子どもと家族が生活する地域で支援を受けながら生活できる環境を整えることです。そのため、教育や社会福祉の関係者との緊密な連携が不可欠です。発達障害を診る医師は、医療モデルから生活モデルや相互作用モデルへと移行する必要があります。人々が自らの選択肢を持ち、生活の質(QOL)を向上させるために、本人の能力だけでなく、周囲との関わり方や生活の中での多様な関係性を評価して支援することが重要です。生活モデルへの移行を促進するためには、地域で利用可能なサービスや支援者を含む協議会を組織し、専門機関と連携した取り組みを構築することが求められます。地域に根ざした包括的な支援システムの構築が今後の課題です。
生活モデルでは、個人の障害に対して治療を行うのではなく、人と環境の相互作用によって生じる生活上の課題に焦点を当て、支援を行います。ADL(Activities of Daily Living)の獲得や職業的自立のみを目指すのではなく、自己決定力や地域社会での自立生活能力を高め、QOLを向上させることが目的です。
以上が、発達障害者への支援で重要な考え方についての説明でした。