現代社会において、誰しもが一度は「不安」を感じる場面があるかと思います。しかし、その不安が強く、持続的で、日常生活や仕事にまで支障をきたすような状態であれば、それは「不安障害」と呼ばれる精神疾患の可能性があります。今回は、精神疾患のセルフチェックの一環として、「不安障害の代表的な症状5つ」について詳しくご紹介いたします。
不安障害とは、過剰で持続的な不安や恐怖が主な症状となる精神疾患の総称です。その症状は多様であり、「不安」がどのような場面で現れるか、またその強さや継続時間などによりいくつかのタイプに分類されます。
代表的なタイプには、「社会不安障害」「パニック障害」「全般性不安障害」「強迫性障害」「限局性恐怖症」などがあります。それぞれ症状の出方は異なりますが、共通するメカニズムとして「セロトニン」という脳内物質の不足が関与しているとされており、治療法にも多くの共通点があります。
不安障害の多くにおいて、脳内の神経伝達物質「セロトニン」のバランスの乱れが関係しているとされています。このため、治療には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ薬が用いられることが一般的です。
また、もう一つの基本的な治療法として「脱感作(曝露療法)」があります。これは、不安を感じる場面や状況をあえて避けず、段階的に慣らしていくという方法です。この2つのアプローチは、多くの不安障害に共通して有効とされています。
不安障害とうつ病は、症状や発症メカニズムにおいて重なる部分が多く、併存したり、移行したりすることもあります。どちらもセロトニンの不足が関係しているため、同様の薬物療法が使われることも多いのです。

ここからは、不安障害に共通する代表的な症状を5つに分類し、それぞれの特徴や関連する疾患について詳しく見ていきましょう。
人前で話す、注目を浴びる、他人と接するといった対人場面において、強い不安を感じる症状です。緊張が高まり、手の震えや発汗、心拍数の上昇といった身体症状が現れることもあります。
このような状況を避けることによって、一時的には安心感を得られるかもしれませんが、次第に社会的な孤立を招き、ひきこもりの原因になることもあります。社会不安障害は、対人関係の場面で特に強い不安が現れる点が特徴です。
治療には、SSRIの服用とともに、対人場面に少しずつ慣れていく脱感作が基本的な方法です。
特に予告なく、突然激しい不安や恐怖に襲われる「パニック発作」が繰り返される状態です。発作の際には、動悸、息苦しさ、めまい、吐き気といった身体症状が現れます。
発作が起きる場所には傾向があり、たとえば電車やエレベーターなどの閉鎖的な空間で発症することが多いです。その結果、「また同じような状況で発作が起きるのではないか」という予期不安が加わり、生活範囲を狭めてしまうこともあります。
パニック障害もまた、SSRIの投与と脱感作による治療が中心となります。
「手が汚れているのではないか」「鍵を閉めたか不安だ」といった思考が繰り返し浮かび、それを打ち消すために手を洗ったり、確認行動を何度も行ったりする――このような症状が強迫性障害の特徴です。
このような「強迫観念」と、それに対する「強迫行為」が繰り返されることで、日常生活に大きな支障が生じます。最初は短時間の確認で済んでいた行動も、次第に長時間化し、他人を巻き込むこともあります。
治療には、SSRIに加えて「曝露反応妨害法(ERP)」という脱感作療法が行われますが、症状が慢性化しやすく、治療には時間がかかることがあります。
生活全般において、過度な心配が常に頭から離れず、それが半年以上続く状態です。仕事や家庭、健康、人間関係など、さまざまな事柄に対して「もしかしたらこうなったらどうしよう」といった漠然とした不安が繰り返されます。
このような慢性的な不安によって、本来の力を発揮できず、社会生活や家庭生活にジワジワと影響を及ぼします。全般性不安障害は、表立った激しい発作はないものの、継続的な苦しさが大きな特徴です。
治療にはSSRIの服用に加えて、不安への耐性を高める心理療法が行われます。
特定の対象や状況に対して、極度の恐怖心を抱く状態です。たとえば、高所、雷、動物、注射、飛行機など、恐怖の対象は人によって異なります。
普段の生活に支障がない場合もありますが、日常的にその対象に触れざるを得ない場合は、生活に著しい影響を及ぼすこともあります。
限局性恐怖症の治療では、対象から距離をとる「回避」が選ばれることもありますが、必要に応じて段階的にその対象に慣れる「脱感作(曝露療法)」が用いられることもあります。

不安障害は、強い不安によって日常生活にさまざまな支障をきたす精神疾患です。しかし、その症状や不安の現れ方は人によって異なります。
今回ご紹介した代表的な5つの症状――
――これらを手がかりに、自分の状態を見つめ直してみることは大切です。
治療の基本は、SSRIなどの薬物療法と、不安に少しずつ慣らしていく心理療法(脱感作)を組み合わせることです。もしもご自身や身近な方に思い当たる症状がある場合は、早めに医療機関に相談されることをおすすめします。適切な治療によって、安心した生活を取り戻すことは十分に可能です。