知的障害や発達障害の診断から制度の利用の流れ

発達障害者支援法で示された定義は、発達障害への理解を深め適切な支援を受けるために重要です。この法律では、
自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)などが、発達障害の代表的な例として挙げられています。
これらは、脳機能の障害であり、通常は低年齢でその症状が現れます。発達障害は一つの障害ではなく、いくつかの障害の総称であり、それぞれの障害は異なりますが、併存することも珍しくありません。

発達障害の診断には、WHOの国際疾病分類(ICD)や、米国精神医学会のDSM-5という診断基準が使用され、これらによって診断名が異なることもあります。ICD-11では「神経発達症群」として、知的発達症や自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)などが含まれ、
DSM-5でも同様に「神経発達症群」として分類されています。ただし、年齢や環境の変化によって症状が変わることがあるため、診断結果も変わり得るという点で、診断名は絶対的ではないと考えることが重要です。

発達障害のある人が適切な支援を受けるためには、制度の仕組みを理解しておくことが役立ちます。障害者総合支援法は、地域社会での共生を目指し、障害者福祉サービスを提供する基盤を築いています。発達障害者支援法は、発達障害者に特化した支援を規定し、児童福祉法18歳未満の子どもたちへの支援を提供しています。これらの制度を活用することで、障害年金障害者手帳介護保険などの福祉サービスや給付を受けることが可能です。

障害者手帳画像

これらの法律や制度を理解することで、発達障害のある人々が必要な支援を受けられない場合にも、適切な対処法を見つけやすくなります。重要なのは、本人が実際に必要な支援を確実に得られるよう、制度の概要や仕組みを把握し、適切な訓練や福祉サービスにアクセスできる環境を整えることです。

発達障害のある方が受けられる支援は、個々の状況や居住地によって異なります。発達障害の診断を受けたとしても、同じ診断を持つ人々が同じ支援を受けられるわけではなく、個々のニーズや困りごとに応じた支援が必要です。療育や福祉サービスは自動的に提供されるわけではなく、本人や家族が自分や子どものニーズを把握し、適切なサービスを選択する必要があります。具体的な福祉サービスや手続きについては、自治体ごとに異なるため、まずは自治体に相談して詳細を確認することが大切です。自治体から提供されるパンフレットや冊子、相談窓口での情報提供が役立つでしょう。また、制度は年度ごとに変更されることがあるため、最新情報を常にチェックするように心がけましょう。

発達障害のある方が障害福祉サービスを受けたい場合、まずは市区町村の窓口で申請を行います。障害者総合支援法の支援の中で、自立支援給付全国の自治体で提供されており、サービスの内容はほぼ共通しています。

障害福祉サービスは、「介護給付」と「訓練等給付」に分かれており、介護給付を受けるためには「障害支援区分」の認定が必要です。この認定は、障害の種類や程度、介護者の有無、住居の状況、サービス等利用計画案などを基に決定されます。発達障害のある方の場合、知的障害が併存している場合は知的障害者として、知的障害がない場合は精神障害者として扱われることが多いです。

一方、地域生活支援事業については、各自治体が独自にサービスを提供しているため、内容や対象者が地域によって異なる場合があります。例えば、移住先の自治体では、同じサービスが必ずしも利用できるとは限りません。このため、居住地の変更を検討する際には、利用可能な福祉サービスについて事前に確認しておくことが重要です。

発達障害者支援センターは、発達障害を持つ人々とその家族に対して総合的な支援を提供する専門機関です。このセンターは、発達障害に関連する様々な悩みや困難に対応し、地域社会と連携して支援体制を整えています。以下に、発達障害者支援センターの主な役割と相談内容、また診断や支援に関する重要な情報をまとめます。

発達障害者支援センターの役割

相談支援
本人や家族、学校・職場などからの相談に対応し、医療、教育、保健、労働、福祉サービスなどの関係機関への紹介を行います。例えば、うまく会話ができない、日常生活がうまくいかない、仕事が続かないなどの相談が多いです。家族からも、子どもの発達の遅れやかんしゃく、ひきこもりなどの相談が寄せられます。

発達支援
発達支援は、本人と家族、周囲の人々への療育や支援を目的としています。医療機関や児童相談所、知的障害者更生相談所などと連携し、発達検査や療育を提供します。

就労支援
就労支援では、地域障害者職業センターやハローワークなどと連携し、職場や学校への訪問、助言、支援を行います。また、必要に応じて就労先を見つけるための情報提供も行われます。

普及啓発・研修
福祉、医療、保健、教育、労働などの関係機関向けに講演会や研修を実施し、発達障害への理解を深めるための普及啓発活動を行っています。これにより、地域全体での支援体制を強化します。

発達障害者支援センターの支援の特徴
地域の拠点として、発達障害に関する専門知識や情報提供を行います。
乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層を対象とし、診断を受けていない人でも相談が可能です。
家族や関係機関への支援も提供し、コミュニケーションや行動面の困難に対処します。

診断の意義と手続き
診断を受けることの主な目的は、適切な支援にアクセスできる道を開くことです。障害者手帳の取得や福祉サービスの利用、手当の受給には診断書が必要となる場合があります。診断を受けることで、適切な療育や支援が提供され、生活の質を向上させることができます。

医療機関での診断
発達障害の診断は、精神科や児童精神科、小児科の発達外来などで行われます。ただし、全ての医療機関が適切な診断を提供できるわけではないため、診断可能な専門医のいる施設を選ぶことが重要です。予約から受診までに数か月を要することが多いため、早めに対応することが求められます。

診断は特性に応じた適切な支援を受けるための手掛かりですが、必ずしも全ての福祉サービスが診断書を必要とするわけではありません。診断書が無くても利用できる福祉サービスもあり、保健センターや支援センターでの相談も選択肢の一つです。

発達障害者支援センターを活用することで、適切な支援を受けるための情報やサポートを得られます。また、診断を受けることで支援の道が広がることを理解し、必要なサポートを適切に受けられるよう努めることが大切です。各地域によって提供されるサービスが異なるため、詳細は地域の支援センターや公式サイトで確認することをお勧めします。

発達障害の診断や支援に関する手続きや対応は、適切な方法で行わないと、症状が悪化したり、二次障害が生じることがあります。以下に、医療機関での受診の流れや、適切な対応の重要性、療育手帳などに関する情報をまとめます。

医療機関の受診・診断の流れ

予約
発達障害の診断ができる精神科医や小児科医を探して予約を取ります。専門的な診断を行える医療機関は限られているため、事前に確認することが重要です。

問診・診察・観察
子どもの場合、言葉の発達や行動の特徴を観察し保育園での様子や成育歴を聞き取ります。
大人の場合は、日常生活や職場での困りごと、成育歴に関する聞き取りが行われます。母子手帳や小学校の通知表、ビデオ記録などがあると診察がスムーズになります。

検査
発達の度合いや知能指数を調べる発達検査や、脳波検査などが行われ、脳の器質的な異常を調べることもあります。

診断
診察や検査結果に基づき、総合的に判断されます。診断には複数回の診察が必要な場合もあります。

無理解・不適切な対応が症状に与える影響
発達障害を持つ人々の行動は、周囲から否定的に受け取られることが多く、無理解や不適切な対応が続くと、症状が悪化するリスクがあります。学校や職場での叱責が続くと、本人のストレスが増大し、心身に不調をきたすことがあります。また、無理解からいじめを受けるケースもあり、自己評価が低下することでうつ病や不安障害などの「二次障害」が発生することがあります。

二次障害とそのリスク
発達障害に対する不適切な対応は、子どもの場合、反抗挑戦性障害や暴力、非行、ひきこもりなどの行動を引き起こすことがあります。また、自閉症スペクトラムではこだわりが強まりパニックが増えることがあり、ADHDでは不注意や衝動性が顕著になることがあります。こうした特性に合わせた支援や環境づくりが、二次障害の予防や改善に重要な役割を果たします。

療育手帳と精神障害者保健福祉手帳
発達障害の方が利用できる手帳には、「精神障害者保健福祉手帳」や「療育手帳」があります。これらの手帳を取得することで、福祉サービスや支援を受けやすくなりますが、手帳の種類や取得基準は地域によって異なるため、注意が必要です。

精神障害者保健福祉手帳:精神疾患によって日常生活に支障がある人が対象で、障害の程度に応じて1級から3級までの等級が与えられます。

療育手帳:知的障害を伴う発達障害の方が対象で、自治体によって運用されるため、地域ごとに認定基準や取得条件が異なります。通常、知能指数が70~75程度が基準とされ、等級によって支援内容が異なります。

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複数の障害がある場合は、複数の手帳を取得することができますが、それぞれの基準を満たす必要があります。特に療育手帳は地域ごとの基準が異なるため、事前に調査して申請手続きを進めることが重要です。

発達障害の診断や支援は、専門的な知識と適切な対応が必要です。医療機関での診断は、適切な支援への道を開くために重要なステップであり、その後の福祉サービスの利用や手当の受給にも繋がります。一方で、無理解や不適切な対応が続くと、二次障害を引き起こすリスクが高まり、本人や家族に大きな負担がかかるため、周囲の理解と協力が不可欠です。

発達障害を持つ方々が利用できる「障害者手帳」は、公的な証明書として、さまざまな支援を受けるために役立つものです。しかし、手帳を取得するかどうかは、本人や家族の意思に委ねられており慎重に判断する必要があります。以下に、手帳の取得と福祉手当について詳しく説明します。

障害者手帳の利点と取得の流れ

障害者手帳の利点
証明書としての役割:障害者手帳は、発達障害のある方が支援を受けやすくするだけでなく、緊急時に身元確認の手段としても役立ち、親や家族に安心感を与えます。
経済的支援:交通機関の料金割引や税金の控除、レジャー施設の優待など、経済的な支援も受けられます。
教育・就労支援:特別支援教育や障害者雇用の選択肢が広がり、より適した環境で学び、働く機会が提供されます。

ただし、手帳の取得は強制ではなく、手帳を持つことに抵抗感がある場合は、利点と欠点を慎重に検討することが大切です。特に子どもの場合、手帳がなくても児童福祉法に基づく福祉サービスを利用できることがあります。さらに、症状が軽減した際には手帳を返納したり、更新しない選択肢もあります。

「精神障害者保健福祉手帳」の申請
「精神障害者保健福祉手帳」は、精神疾患がある方を対象に日常生活の支援を受けるための手帳です。取得の流れは以下の通りです。

市区町村の窓口で相談:障害福祉課や保健センターなど、自治体によって窓口が異なりますので、事前にホームページなどで確認しましょう。

必要書類の準備:申請には主治医による診断書が必要です。ただし、障害年金を受給している場合は、証書の写しを提出することで診断書の代わりにすることができます。

申請と審査:初めて精神科を受診してから6か月が経過していない場合は申請ができません。申請後、審査が行われ、手帳の交付までに1~3か月程度かかります。

「療育手帳」の申請
「療育手帳」は、知的障害を伴う発達障害の方が対象で、主に知的障害の程度に応じて交付されます。取得の流れは次の通りです。

市区町村の窓口または児童相談所で相談:まずは相談して必要書類を確認します。

18歳未満の場合:児童相談所での面接、知能検査、聞き取りに基づいて判定が行われます。

18歳以上の場合:知的障害者更生相談所で判定が行われ、手帳が交付されます。

なお、これらの手帳を取得しても自動的に支援が提供されるわけではないため、福祉サービスの冊子などを入手し、適したサービスを選んで申請する必要があります。

福祉手当制度
発達障害のある方やその家族には、経済的支援が提供されており、以下の手当を受けることができます。

特別児童扶養手当:障害のある子どもを育てる親に支給される手当で、20歳まで支給されます。所得制限があり、一定の収入を超えると支給対象外となります。

障害児福祉手当:特別な支援を必要とする障害児に支給される手当です。

特別障害者手当(20歳以上):精神や身体に重度の障害があり、常に特別な介護を必要とする方が対象です。

これらの手当は、申請しないと支給されないため、市区町村の窓口で確認し、申請手続きを行うことが重要です。

障害者手帳の取得は、本人や家族にとって大切な判断です。手帳の利点を活用して、必要な支援を受けることで生活の質を向上させることができますが、その一方で手帳を取得するかどうかは本人や家族の意思に委ねられています。手帳を持つことで広がる支援や経済的サポートをしっかりと理解し、適切な選択をすることが大切です。

発達障害を持つ子どもやその家族に対する支援は、教育費の補助から親のサポートまで幅広く提供されています。以下に、これらの具体的な支援制度とその利用方法をまとめます。

教育費の補助: 特別支援教育就学奨励費制度
特別支援教育就学奨励費制度は、障害のある子どもが教育を受ける際の経済的負担を軽減するための補助制度です。対象となるのは特別支援学校や特別支援学級に通う子どもだけでなく、通常学級や私立学校に通う子どもも含まれます。補助対象となる費用は、通学費、給食費、教科書費、学用品費、修学旅行費、ランドセルや制服(入学前に購入したものも対象)など多岐に渡ります。

地域ごとに認定基準や補助率が異なるため、詳細については各自治体の担当窓口に確認が必要です。また、領収書をしっかりと保管することが、補助申請の際に重要です。

保護者のための「レスパイト」サービス
発達障害のある子どもを育てる保護者には、日々のケアからくるストレスや疲労を軽減するための支援も提供されています。特に「日中一時支援事業」は、家族が一時的に子どもを預けて休息を取るためのサービスで、レスパイトやタイムケアといった形で利用できます。

レスパイト:買い物やリフレッシュなどの時間を確保するために、一時的に子どもを預かってくれるサービス。

タイムケア:仕事中に子どもを預かってくれるサービス。

これにより、保護者が心身のリフレッシュを図り、家族の生活全体が支えられる環境が整います。サービスの内容は自治体によって異なるため、事前に確認することが必要です。

親のサポート: ペアレント・メンターペアレント・トレーニング

厚生労働省の発達障害支援施策では、保護者への支援も重視されています。発達障害の子どもを育てる際、以下の支援が提供されています。

ペアレント・メンター制度発達障害の子どもを育てた経験を持つ保護者が、新たに診断を受けた保護者の相談に乗る仕組みです。専門家には聞きづらいことも気軽に相談でき、実体験に基づいた助言を受けることができます。

ペアレント・トレーニング保護者が子どもとの良好な関係を築くためのスキルを学ぶプログラムです。ほめ方や指示の仕方を学び、子どもの望ましい行動を促進し、不適切な行動を減らすための具体的な方法が学べます。親が適切な対応を取ることで、家庭内の問題解決に繋がります。

情報の収集と当事者団体
発達障害に特化した支援団体や親の会も、保護者にとって重要なサポート源です。発達障害者支援センターや保健センターを通じて、学習障害、ADHD、自閉症スペクトラムなどに特化した団体の情報を収集できます。これらの団体は、親同士の交流や情報交換の場を提供しており、地域全体での支援ネットワークが形成されています。

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発達障害のある子どもとその家族には、多様な支援制度が提供されています。教育費の補助、保護者への休息支援、ペアレント・メンターやペアレント・トレーニングなど、利用できる制度を活用することで、家族全体の負担を軽減し、より良い生活環境を築くことができます。これらの支援制度を有効活用し、地域の支援ネットワークを活かしていくことが大切です。