日々の生活の中で、私たちはさまざまな「不安」を抱えて生きています。将来への心配、人間関係、仕事の悩みなど、不安の原因は多岐にわたります。今回の記事では、特に「不安を感じやすい精神疾患」に焦点を当て、代表的な5つの疾患について詳しく解説します。不安に悩んでいる方にとって、ご自身の心の状態を見つめ直すきっかけになれば幸いです。
「不安」とは、未来に起こりうる出来事への心配や、確実ではない状況への警戒感によって引き起こされる、緊張した落ち着かない心理状態です。生理的には、交感神経が優位になり、心拍数が上がったり、筋肉が緊張したりといった反応が起こります。

古代から現代まで、不安にはプラスの側面とマイナスの側面がありました。たとえば、危険を察知して身を守るための警戒心や、油断を防ぎ準備を怠らないよう促す動機づけなど、不安は生存に役立つ感情でもありました。かつては外敵に襲われる可能性が常に存在するような環境において、その場の判断や即時の行動が求められる場面では、不安が大きな助けになっていたのです。
しかし、現代社会では状況が異なります。長期的かつ慢性的なストレスの中で、不安が常に続く状態が問題視されています。組織の中で冷静かつ計画的に動くことが求められる現代では、不安によって判断力や集中力が低下したり、緊張が持続して心身が疲弊することも少なくありません。その結果、不眠や感情の不安定さを引き起こすケースも多く見られます。
不安を軽減するためには、日常生活の中でいくつかの工夫が役立ちます。

ではここからは、不安が特に強く現れやすい代表的な5つの精神疾患について解説していきます。
不安障害は、過度な不安や緊張が長期間続き、日常生活に支障をきたす精神疾患の総称です。細かく分類すると以下のような種類があります。

治療には抗うつ薬(SSRI)や認知行動療法、脱感作などが用いられます。不安が不安を呼ぶ「悪循環」を断つことも重要な視点です。

うつ病は「気分の落ち込み」だけでなく、「不安感」も頻繁に伴うことがあります。特に不安が目立つタイプのうつ病では、気分の落ち込みに加えて焦燥感や心配が強く現れ、適切な休養が取りづらくなることもあります。
うつ病と不安障害は、脳内のセロトニン不足という共通のメカニズムを持っており、しばしば併発します。また、どちらか一方からもう一方へと移行するケースも珍しくありません。
治療は休養を基本とし、薬物療法(抗うつ薬、必要に応じて抗不安薬)や心理療法が柱となります。認知の歪みや緊張の癖を見直すアプローチも有効です。

境界性パーソナリティ障害は、感情のコントロールが難しくなる人格障害の一種で、不安がその根底にあることが多くあります。特に「見捨てられ不安」や「空虚感」に対して敏感に反応し、強い感情の浮き沈みが見られます。
不安が高まる場面では、衝動的な行動や他者とのトラブルが起きやすくなるため、対人関係に深刻な影響を及ぼすこともあります。
治療の中心は、薬物ではなく「感情調節のスキル」の習得です。心理教育や対人関係療法、自分自身の軸を育てるサポートなどが用いられます。
統合失調症は、幻覚や妄想などの症状(陽性症状)が現れる精神疾患です。発症や急性期には、脳内のドーパミンの過剰作用により覚醒状態が高まり、不安や緊張が強まります。
幻聴や被害妄想、興奮や混乱といった症状は、不安への過敏な反応として表出することがあります。

急性期の治療では、抗精神病薬と十分な休養が不可欠です。症状が重い場合には、入院による安静や環境調整が必要になることもあります。
認知症は、記憶や思考力の低下を中心とする脳の疾患ですが、精神的・行動的な「周辺症状」が問題となることも多く、その背景に「不安」が存在するケースがあります。
たとえば、「物盗られ妄想」「不穏・徘徊」「興奮」などは、環境の変化や記憶の混乱に伴う不安から引き起こされると考えられています。
治療と対策は、状態に応じたケアの導入や、生活パターンの安定化が中心です。介護サービスの活用も不安軽減につながります。

不安が強すぎると、私たちの生活や仕事、人間関係に深刻な影響を及ぼします。今回ご紹介した精神疾患5つは、不安が症状として現れやすい代表例ですが、いずれも適切な治療と理解により、コントロールが可能です。

これらの疾患における不安を和らげるためには、専門的な治療と並行して、日常的なストレスマネジメントや脱感作といったセルフケアの視点も欠かせません。不安を「敵」とせず、うまく付き合っていくことが、より健やかな心の状態を保つ鍵となります。