精神科の治療では、お薬を使った治療(薬物療法)が大きな役割を果たします。しかし、「この薬は本当に効いているのか?」「副作用が怖い」「ずっと飲み続けなければいけないの?」といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、精神科で処方される主なお薬の種類や、それぞれの役割、そして服薬にあたって注意したいポイントや工夫について丁寧に解説します。現在治療中の方はもちろん、これから薬の服用を始める方や、服薬に不安を抱えている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
精神疾患の治療に使われる薬は非常に多岐にわたりますが、代表的なものとして次の6種類があります。それぞれの目的と主な効果を簡単に見ていきましょう。
抗精神病薬は、幻覚や妄想、興奮状態などの症状を抑えるために用いられる薬です。代表的なものに「リスペリドン」「オランザピン」「クエチアピン」などがあり、近年では副作用の少ない「非定型抗精神病薬」が主流となっています。
緊張や不安、焦燥感が強い方に用いられる薬です。ベンゾジアゼピン系の薬が多く、「アルプラゾラム」「エチゾラム」「ロラゼパム」などがよく知られています。
うつ状態の改善に用いられる薬です。近年は副作用が少なく効果の穏やかな「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」や「SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)」が多く処方されています。
気分の高まり(躁状態)や落ち込み(うつ状態)をコントロールする目的で使用される薬です。代表的なものに「リチウム」「バルプロ酸」「ラモトリギン」などがあります。
本来はてんかんの治療薬ですが、双極性障害などの精神疾患にも効果があることがわかっており、気分安定薬として処方されることもあります。
眠れない、寝つきが悪い、中途覚醒があるといった症状に対処する薬です。「ゾルピデム」「トリアゾラム」などがよく処方されます。長期的な服用には注意が必要です。
精神科の薬は心の不調を和らげる大切な道具ですが、効果を最大限に発揮し、副作用のリスクを抑えるためには、正しい服薬の知識と習慣が必要です。
「調子が良くなったから」「効いていない気がするから」と、医師に相談せず自己判断で服薬をやめてしまう方がいます。しかし、精神疾患は再発率が高く、服薬を中断することで症状が悪化したり再発したりするリスクがあります。
実際、服薬を1日から10日間中断しただけで、入院リスクが約2倍になるという統計もあります。効果が出るまでには時間がかかることも多いため、途中で判断せず、必ず医師と相談してから薬の変更や中止を検討してください。
特に抗不安薬や睡眠薬は「頓服(とんぷく)」として、一時的に不安が強いときや眠れないときに使うことがあります。しかし、必要以上に服用すると薬に「耐性」ができ、効果が薄れていくほか、依存症や離脱症状が出るリスクもあります。
「もう少しだけ多く飲めば楽になるかも」と感じても、自己判断での増量は絶対に避け、必ず医師に指示を仰ぐようにしましょう。
すべての薬には副作用の可能性があります。たとえば、眠気、口の渇き、体重増加、吐き気、だるさなどがよく見られるものです。
副作用というと怖いイメージを持つかもしれませんが、大切なのは「効果とリスクのバランス」を冷静に考えることです。副作用のリスクを恐れすぎて治療を中断してしまえば、本来の目的である症状の改善が遠のいてしまいます。
副作用がつらいと感じたら、無理に我慢せず、必ず医師に相談してください。薬の種類を変えたり、量を調整したりすることで症状が改善することも多くあります。
薬を毎日決まった時間に飲むことは、治療の効果を高めるためにとても重要です。忙しい日々の中でつい忘れてしまいがちな方は、次のような方法を取り入れてみてください。
ご自身に合った方法を見つけ、無理なく続けられる工夫をしていきましょう。

薬物療法は、精神疾患の治療において大切な柱のひとつですが、それだけで完結するものではありません。
医師との対話や、日常生活の見直し、カウンセリングやリハビリなどと併用して治療を行うことで、より良い結果につながります。
また、どうしても不安が消えない場合や、現在の治療方針に納得できない場合には、セカンドオピニオンを求めるという選択肢もあります。安心して治療を受けることは、回復への第一歩です。

精神科の薬にはさまざまな種類があり、それぞれが異なる役割を持っています。お薬を正しく理解し、医師としっかりコミュニケーションを取りながら、無理のない形で治療を続けていくことが何より大切です。
「薬は怖い」「ずっと飲み続けなければいけない」といった不安がある方も、一人で抱え込まず、まずは主治医に相談してみてください。治療の選択肢は一つではありません。自分に合った治療法を一緒に探していきましょう。