今回は、知的障害のある方が働く環境や、直面しやすい困りごと、またその対処法や就労支援について解説していきます。
知的障害とは何か
知的障害とは、18歳までの発達期において知的発達に遅れが生じ、結果として仕事や日常生活に適応する能力に制限がある状態を指します。この障害は中枢神経系の様々な問題が原因となり、その程度や影響は個人差があります。知的障害のある方が安心して長く働くためには、その人のスキルや状態に合った仕事内容や職場環境が非常に重要です。
知的障害の分類と特徴
知的障害の分類
知的障害の診断には、IQの数値だけでなく、社会生活を営むための能力である「適応機能」も考慮されます。適応機能には、食事の準備や金銭管理、人間関係の構築、集団のルールを守る能力などが含まれます。
軽度: 基本的な日常生活は自分で行えることが多いが、言語発達や計算、文章の読み書きが苦手なことがあります。
中度: サポートがあれば、一部の日常生活や家事を部分的に行うことが可能ですが、言語や運動能力の発達に遅れが見られます。
重度: 日常生活の多くにサポートが必要で、言語や運動能力の発達が遅れています。
最重度: 常に他人のサポートが必要で、コミュニケーションも限られた手段(例えば身振りや絵カードなど)を使って行います。
知的障害のある人の働き方
企業の取り組みと障害者雇用促進法
現在、多くの企業が知的障害や他の障害を持つ人々を「貴重な労働力」として認識し、積極的に雇用しています。これを支えているのが、障害者雇用促進法です。2022年の時点で、民間企業における障害者の雇用率は2.3%となっており、知的障害のある人の雇用者数も年々増加しています。

知的障害のある人の適性に合った仕事
知的障害のある方が長く働くためには、仕事内容や職場環境がその人のスキルや状態に合っていることが重要です。
軽作業や事務作業: 判断要素が少なく、単純で反復的な作業に適しています。
例えば、工場での組み立て作業や簡単なデータ入力などがこれに該当します。
サポートが必要な場合: 作業を効率的に進めるために、作業の開始と終了時間を明確にする予定表の掲示や、声掛けなどのサポートが有効です。
知的障害のある人が直面しやすい困りごとと対処法
計画的に行動することが難しい
知的障害のある方は、時間や数量の概念を理解するのが難しく、スケジュールを組むことが苦手です。このため、予め作業の開始時間と終了時間を示す予定表を作成し、職場に掲示することで、作業をスムーズに進めることができます。
抽象的な指示やニュアンスが難しい
暗黙のルールや抽象的な表現が理解しにくいため、具体的な言葉を使って指示を出すことが必要です。例えば、マニュアルや写真、絵を使って仕事の手順を視覚的に示すことで、理解を助けることができます。
仕事のミスマッチ
好きな仕事が必ずしも得意な仕事とは限りません。仕事を選ぶ際には、実際にその仕事を体験し、自分に合っているかを確認することが重要です。企業実習などに参加して、適性を見極めると良いでしょう。また、入社後は障害について周囲の理解を得るために、障害に関する情報を共有し、合理的な配慮やサポートを受けることが大切です。
マナーやルールが分からない
社会人としてのルールやマナーを習得するためには、専門の指導や研修が役立ちます。集団のルールを守ることや、職場の暗黙のルールを理解するために、支援スタッフと協力して会社内のルールを考えることも有効です。
就労支援と職業訓練
就労支援の重要性
知的障害のある方が自分に合った仕事を見つけ、長期間働き続けるためには、適切なサポートが必要です。就労支援や職業訓練を活用することで、知的障害のある方々が自分のスキルや興味に合った仕事を見つけることができます。
就労支援機関の役割
全国には、知的障害のある方を支援する様々な機関があります。

ハローワーク: 障害者向けの職業紹介や職業指導、求人情報の提供を行っています。
地域障害者職業センター: 専門的な職業リハビリテーションサービスを提供し、職業評価や準備訓練などを通じて、職場適応を支援しています。
障害者職業・生活支援センター: 就職先の探し方や職場での問題解決、生活支援や福祉制度の利用方法など、幅広いサポートを提供しています。
知的障害のある方が安心して長く働くためには、周囲の理解とサポートが不可欠です。適切な仕事内容や職場環境を選び、自分に合った働き方を見つけることが、社会での長期的な活躍に繋がります。また、一人で困難に対処することが難しい場合には、就労支援機関やセンターのサポートを積極的に活用することが重要です。
知的障害のある方の就労支援は、本人の生活の質を向上させるだけでなく、社会全体にとっても大きな価値を持つ取り組みです。